第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述77

脳損傷理学療法10

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 6:30 PM 第9会場 (ガラス棟 G409)

座長:石田利江(順天堂大学医学部附属練馬病院 リハビリテーション科)

[O-0582] 急性期病院における再発性脳卒中患者の臨床的特徴

鎌田将星, 尾谷寛隆, 碇山泰匡, 上原敏志 (国立循環器病研究センター)

Keywords:急性期, 脳卒中, 再発

【はじめに,目的】脳卒中の再発は神経症候が重複することが多く,それゆえに障害像がさらに複雑化するため,急性期病院での予後予測をしばしば困難にする。したがって,脳卒中再発早期よりその障害像を正確に把握し,予後予測をすることは,急性期リハビリテーション(以下,リハ)を行ううえで重要である。しかしながら,脳卒中患者を対象とした調査は,初発性脳卒中患者を対象としたものが大部分を占めており,再発性脳卒中患者に関する調査は少ないのが現状である。そこで,急性期病院における再発性脳卒中患者の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした調査を行い,若干の知見を得たので報告する。
【方法】2013年4月1日から2014年3月31日までの期間に脳内科から依頼のあった急性発症の脳梗塞および脳出血患者777例のうち,再発例181例を対象とした。方法は,対象者の年齢,性別,病型(脳梗塞,脳出血),危険因子(高血圧,心疾患,脂質異常症,糖尿病,腎臓病),入院からリハ開始までの期間,入院期間,入院時及び退院時のNational Institute of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),入院時及び退院時のFunctional Independence Measure(以下,FIM),FIM利得(退院時FIM-入院時FIM),退院時modified Rankin Scale(以下,mRS),転帰先(自宅,転院,施設,死亡)を後方視的に調査した。なお,再発については,過去に脳卒中の既往のあるものを再発例とした。
【結果】急性発症脳卒中のうち再発例の占める割合は23.2%であった。年齢は75.5±10.3歳,性別は男性109例(60.2%)であった。病型は脳梗塞142例(78.5%),脳出血39例(21.5%)であった。危険因子は高血圧159例(87.8%),心疾患60例(33.1%),脂質異常症26例(14.4%),糖尿病18例(9.9%),腎臓病10例(5.5%)であった。入院からリハ開始までの期間は2.1±2.2日,入院期間は23.7±13.4日であった。入院時NIHSSの中央値[四分位範囲]は5[2-12]点であり,退院時NIHSSは3[1-8]点であった。入院時FIMの中央値[四分位範囲]は60[28-85]点であり,退院時FIMは75[43-110]点,FIM利得の中央値[四分位範囲]は8[0-23]点であった。退院時mRSは0が5例(2.8%),1が32例(17.7%),2が22例(12.1%),3が24例(13.3%),4が65例(35.9%),5が32例(17.7%),6が1例(0.6%)であった。転帰先は自宅61例(33.7%),転院108例(59.7%),施設11例(6.0%),死亡1例(0.6%)であった。
【考察】本研究では,急性発症脳卒中における再発性脳卒中患者の占める割合は23.2%であり,平均年齢は75.5歳であった。また,性別では男性の割合が高く,脳梗塞の割合が多かった。これらの結果は秋田県脳卒中発症登録事業における鈴木らの報告と近似していた。危険因子は高血圧が87.8%と圧倒的に多く,続いて心疾患,脂質異常症,糖尿病の順であった。このことは再発性脳卒中の理学療法実施において,高血圧をはじめとする危険因子の管理の重要性が改めて示された。また,NIHSSおよびFIMともに入院時に比し,退院時では改善していたことより,再発例に対しても理学療法介入の効用が認められた。しかしながら,退院時mRSはgrade4~5の中等度以上の介助を要する症例が多く,転帰先は転院例が約6割を占め,次いで自宅例が約3割にとどまったことより,再発例では重症化する傾向にあることが明らかになった。したがって,急性期病院における再発性脳卒中患者に対しては,機能改善,介助量軽減,環境調整を含む包括的な介入が必要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】今回の研究は,再発性脳卒中患者の臨床的特徴を明らかにしたことにより,再発性脳卒中患者への理学療法介入の際の予後予測およびリスク管理の面での一指針となり得る。