[O-0588] 新しく開発したハイブリッドトレーニング機器を装着したウォーキング効果の検証
キーワード:高齢者, 電気刺激, ウォーキング
【はじめに,目的】高齢者の要介護・要支援の予防策として運動は重要である。ウォーキングは,日常の運動習慣を獲得し,健康増進を図る目的で,高齢者のみならず幅広い年齢層で取り組まれる運動の一つである。我々は,電気刺激を応用して筋力増強を目的とするハイブリッドトレーニング(以下,HTS)を開発し,運動器疾患の筋萎縮予防や健常高齢者の健康増進等の先行研究にて有効性を明らかにしてきた。今回,HTSをウォーキング中に併用する新しい運動機器(HTSW)を開発した。本研究の目的は,HTSWを長期で使用することで,筋力や運動機能の改善を及ぼすかを明らかにすることである。
【方法】対象者は地域在住高齢者16名で,HTSWを用いたウォーキング群(WH群)8名(男性2名,女性6名,67.4±3.4歳)と通常のウォーキング群(WC群)8名(男性1名,女性7名,67±1.8歳)に分類した。対象者は,ウォーキングを1回30分,週3回,3ヶ月間(計36回)行った。HTSWの原理は,歩行中に左右の大腿前後面に貼付した電極へ交互に電気刺激される。電気刺激のタイミングは,関節運動により筋長が伸ばされる遠心性収縮時であり,例えば遊脚相にあるハムストリングスでは踵接地までの間となる。このように,HTSWは電気刺激収縮と随意収縮を組み合わせた新しい運動法である。評価は介入前後に,変形性膝関節症機能評価尺度(以下,JKOM)を用いた日常生活動作度及び疼痛,Biodexを用いた膝関節屈曲・伸展筋力(角速度60度),InBody720を用いた体成分分析(全身骨格筋量・左右下肢筋量・BMI),10m最大努力歩行時間,6分間歩行テスト,TUG,FRT,閉眼片脚立位時間,ロコモ25,ロコモ度テスト(段差立ち上がりテスト・2ステップテスト)等を行った。統計分析は,各評価項目の介入前後の比較を対応のあるWilcoxon符号付き順位検定を用い,群間比較にWilcoxon順位和検定加を用いた群間比較も行った。解析ソフトにはSAS Ver 9.3を用い,有意水準5%で検定を行った。
【結果】介入前後比較において,WH群で有意な改善が認められた項目は,JKOMの日常生活動作(36%),膝伸展筋力(12%),屈曲筋力(18%),TUG(26%),10m最大努力歩行時間(10%),6分間歩行テスト(12%)の6項目であった。一方WC群では,膝屈曲筋力(15%),TUG(22%),2ステップテスト(9%),10m最大努力歩行時間(15%),6分間歩行テスト(16%)の5項目であった。群間比較では,全項目で有意差は認めなかった。
【考察】本研究の結果,両群において部分的であるが運動機能の改善が認められた。WH群の改善項目数が上回ったが,群間の有意差は認められず,各評価項目との関連性は検討できなかった。WH群において膝伸展・屈曲筋共に有意な改善が認められた理由は,HTSは運動中に主動作筋の随意収縮と拮抗筋の電気刺激収縮の同時収縮により高い筋力が発揮される為だと考えられる。また,一部のWH者に膝痛の改善が認められたが,その理由は踵接地時に同時収縮による筋収縮力が高まったことで,膝関節の安定性が増した為だと考えられる。一方WC群においては,膝痛の増悪した者もおり,HTSの優位性が高かった事が示唆される。加えて,一般に改善が期待されにくい膝屈曲筋力に認められた理由は,ウォーキングにおける股伸展筋と膝伸展筋の相互依存により,膝屈曲筋の効率的な筋出力につながった事,また身体を前上方へ進めることから,推進力の増加に膝屈曲群が寄与した事と考えられる。今回,筋量の増加は認められず筋力が改善したが,これは高齢者で多く見られるニューラルアダプテーションの影響だと推察される。この理由は,高齢者の加齢による筋力低下,特にタイプII線維の萎縮に対し,電気刺激が有効であることも影響したと考えられる。歩行に特異的な項目を始め,全項目で改善傾向が認められたが,活動量の高い高齢者が多かった事で,有意な改善項目数が増えなかった。今後は対象者の運動能力に応じた電気刺激強度や印加のタイミングの検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】新しい運動法の開発と研究は,理学療法の発展に寄与するものである。特に高齢者の健康増進を目的とする運動は,国民に貢献出来る。
【方法】対象者は地域在住高齢者16名で,HTSWを用いたウォーキング群(WH群)8名(男性2名,女性6名,67.4±3.4歳)と通常のウォーキング群(WC群)8名(男性1名,女性7名,67±1.8歳)に分類した。対象者は,ウォーキングを1回30分,週3回,3ヶ月間(計36回)行った。HTSWの原理は,歩行中に左右の大腿前後面に貼付した電極へ交互に電気刺激される。電気刺激のタイミングは,関節運動により筋長が伸ばされる遠心性収縮時であり,例えば遊脚相にあるハムストリングスでは踵接地までの間となる。このように,HTSWは電気刺激収縮と随意収縮を組み合わせた新しい運動法である。評価は介入前後に,変形性膝関節症機能評価尺度(以下,JKOM)を用いた日常生活動作度及び疼痛,Biodexを用いた膝関節屈曲・伸展筋力(角速度60度),InBody720を用いた体成分分析(全身骨格筋量・左右下肢筋量・BMI),10m最大努力歩行時間,6分間歩行テスト,TUG,FRT,閉眼片脚立位時間,ロコモ25,ロコモ度テスト(段差立ち上がりテスト・2ステップテスト)等を行った。統計分析は,各評価項目の介入前後の比較を対応のあるWilcoxon符号付き順位検定を用い,群間比較にWilcoxon順位和検定加を用いた群間比較も行った。解析ソフトにはSAS Ver 9.3を用い,有意水準5%で検定を行った。
【結果】介入前後比較において,WH群で有意な改善が認められた項目は,JKOMの日常生活動作(36%),膝伸展筋力(12%),屈曲筋力(18%),TUG(26%),10m最大努力歩行時間(10%),6分間歩行テスト(12%)の6項目であった。一方WC群では,膝屈曲筋力(15%),TUG(22%),2ステップテスト(9%),10m最大努力歩行時間(15%),6分間歩行テスト(16%)の5項目であった。群間比較では,全項目で有意差は認めなかった。
【考察】本研究の結果,両群において部分的であるが運動機能の改善が認められた。WH群の改善項目数が上回ったが,群間の有意差は認められず,各評価項目との関連性は検討できなかった。WH群において膝伸展・屈曲筋共に有意な改善が認められた理由は,HTSは運動中に主動作筋の随意収縮と拮抗筋の電気刺激収縮の同時収縮により高い筋力が発揮される為だと考えられる。また,一部のWH者に膝痛の改善が認められたが,その理由は踵接地時に同時収縮による筋収縮力が高まったことで,膝関節の安定性が増した為だと考えられる。一方WC群においては,膝痛の増悪した者もおり,HTSの優位性が高かった事が示唆される。加えて,一般に改善が期待されにくい膝屈曲筋力に認められた理由は,ウォーキングにおける股伸展筋と膝伸展筋の相互依存により,膝屈曲筋の効率的な筋出力につながった事,また身体を前上方へ進めることから,推進力の増加に膝屈曲群が寄与した事と考えられる。今回,筋量の増加は認められず筋力が改善したが,これは高齢者で多く見られるニューラルアダプテーションの影響だと推察される。この理由は,高齢者の加齢による筋力低下,特にタイプII線維の萎縮に対し,電気刺激が有効であることも影響したと考えられる。歩行に特異的な項目を始め,全項目で改善傾向が認められたが,活動量の高い高齢者が多かった事で,有意な改善項目数が増えなかった。今後は対象者の運動能力に応じた電気刺激強度や印加のタイミングの検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】新しい運動法の開発と研究は,理学療法の発展に寄与するものである。特に高齢者の健康増進を目的とする運動は,国民に貢献出来る。