[O-0601] 軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中の身体活動量と身体活動セルフ・エフィカシーとの関係
Keywords:脳梗塞, 急性期, 身体活動セルフ・エフィカシー
【はじめに,目的】
歩行が自立しているような軽症脳梗塞患者における身体活動量(Physical Activity:PA)の減少は,身体機能低下を招くだけでなく疾患の再発リスクを増加する可能性が指摘されている。このPAの低下は脳梗塞発症に伴う入院を契機に生じることは容易に想像がつくが,軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中のPAについてはこれまで報告されていない。また,近年は糖尿病患者や冠動脈疾患患者におけるPAと身体活動セルフ・エフィカシー(Self-Efficacy for Physical Activity;SEPA)との関連が報告されているが,急性期脳梗塞患者を対象とした報告はほとんどない。本研究の目的は,軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中のPAを測定し,身体機能やSEPAとの関係について検討することである。
【方法】
対象は2014年7月から10月の間に伊丹恒生脳神経外科病院へ救急搬送され入院理学療法が処方された非心原性脳梗塞患者のうち,病前より歩行が自立しており,発症後1週間以内に院内歩行自立となったものとした。除外基準は,脳梗塞の症状以外で明らかに身体活動を阻害する因子を有する例,認知機能低下に伴って身体活動量の測定協力が困難な例,研究参加に同意を得られない例とした。PAの測定は安静度として院内移動が許可され本人の同意が得られた日から1週間,各対象者に睡眠活動量計Fitbit One(Fitbit社製)を装着して行った。また,PA測定開始日に身体機能評価(Time Up & Go Test(TUG),等尺性膝伸展筋力),SEPA評価(岡ら(2002))を行った。理学療法・作業療法は各対象者の心身機能もしくは活動能力の改善を図ることを目的に,筋力トレーニング,全身持久力トレーニング,屋外歩行練習を中心に実施した。各療法実施者は療法実施時にPA測定機器の装着状況のみ確認し,各対象者に対して特別な指示は行わなかった。解析は理学療法もしくは作業療法を実施した連続4日間を対象とし,各日ともにPAはリハビリテーション実施時間中のPA(リハ時PA),リハビリテーション非実施時間中のPA(非リハ時PA)に分けた値も算出し,各PAについて4日間の平均値を算出した。得られたPAは平成24年度国民健康・栄養調査における各年代・性別におけるPAと比較した。また,PAおよび非リハ時PAと身体機能・SEPA(SEPA下肢項目及びSEPA上肢項目)との関係についてスピアマンの順位相関係数を算出した。統計学的検定はSPSS ver. 20を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象となったのは非心原性脳梗塞患者連続13例(全例ラクナ梗塞,男性8例,女性5例,平均年齢66.5±6.9歳),NIHSSは1.3±1.0であった。4日間の平均PAは3784±1611歩,リハ時PAは1588±904歩,非リハ時PAは2196±1199歩であった。各年代・性別の全国平均PAと対象者のPAを比較すると,全例全国平均値を下回っていた(全国平均PAの57%)。PA及び非リハ時PAとTUG,膝関節伸展筋力,SEPAとの相関関係をみると,PAはSEPA下肢項目のみ有意な正の相関を認めた(r=0.74,p=0.004)。また,非リハ時PAについては,SEPA下肢項目(r=0.80,p=0.001),SEPA上肢項目(r=0.59,p=0.03),年齢(r=-0.59,p=0.03)と有意な相関を認めたが,身体機能(TUG,等尺性膝伸展筋力)については有意な相関は認められなかった。
【考察】
本研究結果より,歩行が自立している軽症脳梗塞患者の急性期病院入院中PAは低下しており,リハビリテーションの介入がなければさらに低下する可能性が示唆された。また,PAおよび非リハ時PAと共に身体機能との関係はなく,強い相関がみられたのはSEPA下肢項目のみであった。このことからも,たとえ身体機能が高くても歩行や階段昇降といった移動に関する自己効力の低い急性期脳卒中患者では入院中の身体活動量は低下しやすいと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果は急性期軽症脳梗塞患者に対して身体活動量に着目した理学療法を実施する上での基礎的データになる。
歩行が自立しているような軽症脳梗塞患者における身体活動量(Physical Activity:PA)の減少は,身体機能低下を招くだけでなく疾患の再発リスクを増加する可能性が指摘されている。このPAの低下は脳梗塞発症に伴う入院を契機に生じることは容易に想像がつくが,軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中のPAについてはこれまで報告されていない。また,近年は糖尿病患者や冠動脈疾患患者におけるPAと身体活動セルフ・エフィカシー(Self-Efficacy for Physical Activity;SEPA)との関連が報告されているが,急性期脳梗塞患者を対象とした報告はほとんどない。本研究の目的は,軽症脳梗塞患者における急性期病院入院中のPAを測定し,身体機能やSEPAとの関係について検討することである。
【方法】
対象は2014年7月から10月の間に伊丹恒生脳神経外科病院へ救急搬送され入院理学療法が処方された非心原性脳梗塞患者のうち,病前より歩行が自立しており,発症後1週間以内に院内歩行自立となったものとした。除外基準は,脳梗塞の症状以外で明らかに身体活動を阻害する因子を有する例,認知機能低下に伴って身体活動量の測定協力が困難な例,研究参加に同意を得られない例とした。PAの測定は安静度として院内移動が許可され本人の同意が得られた日から1週間,各対象者に睡眠活動量計Fitbit One(Fitbit社製)を装着して行った。また,PA測定開始日に身体機能評価(Time Up & Go Test(TUG),等尺性膝伸展筋力),SEPA評価(岡ら(2002))を行った。理学療法・作業療法は各対象者の心身機能もしくは活動能力の改善を図ることを目的に,筋力トレーニング,全身持久力トレーニング,屋外歩行練習を中心に実施した。各療法実施者は療法実施時にPA測定機器の装着状況のみ確認し,各対象者に対して特別な指示は行わなかった。解析は理学療法もしくは作業療法を実施した連続4日間を対象とし,各日ともにPAはリハビリテーション実施時間中のPA(リハ時PA),リハビリテーション非実施時間中のPA(非リハ時PA)に分けた値も算出し,各PAについて4日間の平均値を算出した。得られたPAは平成24年度国民健康・栄養調査における各年代・性別におけるPAと比較した。また,PAおよび非リハ時PAと身体機能・SEPA(SEPA下肢項目及びSEPA上肢項目)との関係についてスピアマンの順位相関係数を算出した。統計学的検定はSPSS ver. 20を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象となったのは非心原性脳梗塞患者連続13例(全例ラクナ梗塞,男性8例,女性5例,平均年齢66.5±6.9歳),NIHSSは1.3±1.0であった。4日間の平均PAは3784±1611歩,リハ時PAは1588±904歩,非リハ時PAは2196±1199歩であった。各年代・性別の全国平均PAと対象者のPAを比較すると,全例全国平均値を下回っていた(全国平均PAの57%)。PA及び非リハ時PAとTUG,膝関節伸展筋力,SEPAとの相関関係をみると,PAはSEPA下肢項目のみ有意な正の相関を認めた(r=0.74,p=0.004)。また,非リハ時PAについては,SEPA下肢項目(r=0.80,p=0.001),SEPA上肢項目(r=0.59,p=0.03),年齢(r=-0.59,p=0.03)と有意な相関を認めたが,身体機能(TUG,等尺性膝伸展筋力)については有意な相関は認められなかった。
【考察】
本研究結果より,歩行が自立している軽症脳梗塞患者の急性期病院入院中PAは低下しており,リハビリテーションの介入がなければさらに低下する可能性が示唆された。また,PAおよび非リハ時PAと共に身体機能との関係はなく,強い相関がみられたのはSEPA下肢項目のみであった。このことからも,たとえ身体機能が高くても歩行や階段昇降といった移動に関する自己効力の低い急性期脳卒中患者では入院中の身体活動量は低下しやすいと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果は急性期軽症脳梗塞患者に対して身体活動量に着目した理学療法を実施する上での基礎的データになる。