第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述81

脳損傷理学療法11

Sat. Jun 6, 2015 6:40 PM - 7:40 PM 第8会場 (ガラス棟 G402)

座長:青木修(四條畷学園大学 リハビリテーション学部)

[O-0604] Stroke Care Unitにおける理学療法実施回数がFIMに与える影響について

村上祐介, 藤井勇佑, 時田春樹 (脳神経センター大田記念病院)

Keywords:Stroke Care Unit, 急性期リハビリテーション, FIM

【はじめに,目的】当院はStroke care unit(以下SCU)を18床有し,年間約1100例の脳卒中患者の受け入れを行っている急性期病院である。リハビリテーション課(以下リハ課)においては,早期のリハ介入およびリハ実施量を増加させる目的で,平成26年6月より,SCU担当理学療法士を3名(内1名はICU兼務)から5名(内2名はICU兼務)へと増員を図り,理学療法(以下PT)が1日2回実施できるような体制をとっている。今回,SCU担当理学療法士の増員および実施回数の増加が入院中のFIMの改善に与える影響について検証した。
【方法】平成25年6月から9月および平成26年6月から9月に脳卒中と診断された入院患者の内,入院時より早期にPTを開始し,かつ,入院期間が2週間以上であった患者を対象とした。理学療法士増員前の平成25年6月から9月に入院した患者を前群,理学療法士増員後の平成26年6月から9月に入院した患者を後群とした。前群の内訳は,脳梗塞が115名,脳出血が29名,くも膜下出血が15名の計159名(男87名,女72名),平均年齢は74.4±12.1歳であり,PT開始時のFIM中央値は44.0点であった。後群の内訳は,脳梗塞が79名,脳出血が20名,くも膜下出血は19名の計118名(男63名,女55名),平均年齢は72.1±12.8歳であり,PT開始時のFIM中央値は42.5点であった。なお,ベースラインとして2群間に有意な差はなかった。調査項目は,PT開始までの期間,1日当たりのPT実施単位数,FIM利得とした。FIM利得は1週間後FIM-開始時FIMをFIM利得A,2週間後FIM-開始時FIMをFIM利得B,2週間後FIM-1週間後FIMをFIM利得Cとした。これらの項目を電子カルテより後方視的に調査した。
【結果】PT開始までの期間は,前群が1.4±1.8日,後群が1.3±1.5日で有意な差は認めなかったが,1日当たりのPT実施単位数は前群が2.1±0.5単位,後群が2.7±0.7単位であり,後群の単位が有意に多かった。FIM利得においては,FIM利得Bでは,前群が19.0±27.9点,後群が26.0±25.1点,FIM利得Cでは,前群が7.8±12.9点,後群が11.6±14.9点であり,後群が有意に改善した。また,FIM利得Aでは,明らかな有意差はみられなかったが,前群が11.1±25.9点,後群が14.5±20.9点であり,後群が改善傾向であった。
【考察】当院のSCU滞在日数は平均5.8日である。FIM利得は,PT実施回数を増加したSCU内滞在中の開始日から1週間よりも,一般病床に転室後の1週間から2週間の方が改善を示した。これは,SCU内のPT実施量の増加が,廃用性萎縮予防・麻痺側機能や体幹機能の向上等の基礎的な能力の向上に寄与し,一般病床転室後により高い難易度の課題を行うことができるようになったためと考える。
【理学療法学研究としての意義】今回,SCU内のPT実施回数の増加がFIMに与える影響について検証した。早期より多くのPTを実施することによりADLの早期向上さらには,早期自宅復帰につながると考える。SCU内での急性期リハを充実させるためには,人的資源の投入や人的教育が必須である。そのため,脳卒中急性期領域におけるリハの必要性や効果を示していく必要があり,本研究がその有用性を示すエビデンスの一つになると考える。