[O-0606] 急性期脳卒中患者の退院時ADLに初回離床時期の体幹機能は関与するか?
Keywords:脳卒中, ADL, 体幹
【はじめに,目的】
ヒトの姿勢制御には体幹が重要な役割を果たすとされているが,脳卒中後の機能障害は四肢と同様に体幹でも生じている事が多い。また,臨床では急性期からの体幹機能評価の重要性がこれまでに周知されており,急性期脳卒中患者の体幹機能は機能転帰の重要な予測因子であると言われている。近年,急性期病院ではリハビリテーション(リハビリ)の早期介入や在院日数の短縮が推進されているが,脳卒中患者では発症後早期からの離床や予後予測が以前から求められている。先行研究では,急性期脳卒中患者のADLに麻痺側機能や体幹機能が関与する事が報告されており,江連ら(2010)は脳卒中片麻痺者のADLには麻痺側機能よりも体幹機能との関係が強い事を報告している。しかし,脳卒中患者のADLと体幹機能の関連を離床後早期や退院時など評価時期別で検討している報告は少ない。
本研究では,急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに,初回離床時期の体幹機能が関与するかを検討した。
【方法】
2014年5月~9月に発症後3日以内に当院で脳卒中の初回診断となった患者で,急性期病棟である脳神経外科病棟へ入院し,リハビリの処方をされた23例(男性13例,女性10例,平均年齢62.6±11.5歳,脳梗塞11例,脳出血9例,くも膜下出血3例,自宅退院14例,回復期病棟転院9例)が対象である。リハビリ初回介入の平均病日は3.1±2.4病日,平均在院日数は25.0±11.6日であった。評価項目はADLを機能的自立度評価法(FIM),体幹機能を臨床的体幹機能検査(FACT 奥田ら,2006)とした。評価時期は,FIMは当院を退院する最終評価時,FACTは初回離床時期とした。初回離床時期は,著しいバイタルサインの変動なく,30分以上車椅子の乗車可能か起立練習可能レベルとなった翌日以降と定義した。FIMの平均評価病日は23.9±11.3病日,FACTの平均評価病日は8.7±5.7病日であった。FIMは運動FIM,認知FIMに分けて分析した。統計処理は運動FIM,認知FIMとFACTの関係をSpearmanの順位相関係数により求めた。また,運動FIM,認知FIMを従属変数,FACTを独立変数とした各々の単回帰分析を行った。有意水準は5%未満とし,データ解析は後方視的に実施した。
【結果】
運動FIM,認知FIMとFACTの相関係数を算出した結果,運動FIMがrs=0.83(p<0.01),認知FIMがrs=0.69(p<0.01)と相関関係を認めた。また,運動FIMを従属変数とした単回帰分析の結果,単回帰式は運動FIM=2.6206×FACT+34.7352となり,R2=0.69であった。認知FIMを従属変数とした単回帰分析の結果,単回帰式は認知FIM=0.6328×FACT+21.2599となり,R2=0.48であった。
【考察】
今回の検討から,急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに,初回離床時期における体幹機能が関与する事が分かった。Karthikbabu(2011)らは,身体近位部である体幹の制御が四肢の制御に関わると述べている。四肢の制御は目的動作の遂行に必要な要素の一つであり,渕(2007)は,ADLは目的動作で随意運動であるが,背景にある無意識的な姿勢制御により成り立つと述べている。今回の結果は,急性期病棟の退院時ADLを遂行するための四肢目的動作に対して,初回離床時期の姿勢制御に関わる体幹機能が関与した可能性がある事が示唆された。
本研究の限界は,今回は急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに対し,単回帰分析による初回離床時期の体幹機能という一因子でしか検討を出来ておらず,他因子を含めた検討が出来ていないという点である。今後の課題として,更にサンプル数を増やし,多変量解析などで他因子の関与も検討していく必要性がある。
【理学療法学研究としての意義】
結果より,急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに,初回離床時期における体幹機能が関与する事が分かった。
今回の検討は,脳卒中発症後早期からの体幹機能が,急性期からより質の高いリハビリテーションを提供する為の一因子となり得る可能性を示した点で,臨床的意義があると考えられた。
ヒトの姿勢制御には体幹が重要な役割を果たすとされているが,脳卒中後の機能障害は四肢と同様に体幹でも生じている事が多い。また,臨床では急性期からの体幹機能評価の重要性がこれまでに周知されており,急性期脳卒中患者の体幹機能は機能転帰の重要な予測因子であると言われている。近年,急性期病院ではリハビリテーション(リハビリ)の早期介入や在院日数の短縮が推進されているが,脳卒中患者では発症後早期からの離床や予後予測が以前から求められている。先行研究では,急性期脳卒中患者のADLに麻痺側機能や体幹機能が関与する事が報告されており,江連ら(2010)は脳卒中片麻痺者のADLには麻痺側機能よりも体幹機能との関係が強い事を報告している。しかし,脳卒中患者のADLと体幹機能の関連を離床後早期や退院時など評価時期別で検討している報告は少ない。
本研究では,急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに,初回離床時期の体幹機能が関与するかを検討した。
【方法】
2014年5月~9月に発症後3日以内に当院で脳卒中の初回診断となった患者で,急性期病棟である脳神経外科病棟へ入院し,リハビリの処方をされた23例(男性13例,女性10例,平均年齢62.6±11.5歳,脳梗塞11例,脳出血9例,くも膜下出血3例,自宅退院14例,回復期病棟転院9例)が対象である。リハビリ初回介入の平均病日は3.1±2.4病日,平均在院日数は25.0±11.6日であった。評価項目はADLを機能的自立度評価法(FIM),体幹機能を臨床的体幹機能検査(FACT 奥田ら,2006)とした。評価時期は,FIMは当院を退院する最終評価時,FACTは初回離床時期とした。初回離床時期は,著しいバイタルサインの変動なく,30分以上車椅子の乗車可能か起立練習可能レベルとなった翌日以降と定義した。FIMの平均評価病日は23.9±11.3病日,FACTの平均評価病日は8.7±5.7病日であった。FIMは運動FIM,認知FIMに分けて分析した。統計処理は運動FIM,認知FIMとFACTの関係をSpearmanの順位相関係数により求めた。また,運動FIM,認知FIMを従属変数,FACTを独立変数とした各々の単回帰分析を行った。有意水準は5%未満とし,データ解析は後方視的に実施した。
【結果】
運動FIM,認知FIMとFACTの相関係数を算出した結果,運動FIMがrs=0.83(p<0.01),認知FIMがrs=0.69(p<0.01)と相関関係を認めた。また,運動FIMを従属変数とした単回帰分析の結果,単回帰式は運動FIM=2.6206×FACT+34.7352となり,R2=0.69であった。認知FIMを従属変数とした単回帰分析の結果,単回帰式は認知FIM=0.6328×FACT+21.2599となり,R2=0.48であった。
【考察】
今回の検討から,急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに,初回離床時期における体幹機能が関与する事が分かった。Karthikbabu(2011)らは,身体近位部である体幹の制御が四肢の制御に関わると述べている。四肢の制御は目的動作の遂行に必要な要素の一つであり,渕(2007)は,ADLは目的動作で随意運動であるが,背景にある無意識的な姿勢制御により成り立つと述べている。今回の結果は,急性期病棟の退院時ADLを遂行するための四肢目的動作に対して,初回離床時期の姿勢制御に関わる体幹機能が関与した可能性がある事が示唆された。
本研究の限界は,今回は急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに対し,単回帰分析による初回離床時期の体幹機能という一因子でしか検討を出来ておらず,他因子を含めた検討が出来ていないという点である。今後の課題として,更にサンプル数を増やし,多変量解析などで他因子の関与も検討していく必要性がある。
【理学療法学研究としての意義】
結果より,急性期脳卒中患者の急性期病棟の退院時ADLに,初回離床時期における体幹機能が関与する事が分かった。
今回の検討は,脳卒中発症後早期からの体幹機能が,急性期からより質の高いリハビリテーションを提供する為の一因子となり得る可能性を示した点で,臨床的意義があると考えられた。