[O-0615] 回復期リハビリテーション病棟における車いすレンタルシステムが病棟ADLに与える影響
入院時FIMとFIM効率からの考察
Keywords:車いす, レンタル, FIM
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション病棟ではADLにおいて車いすを必要としている患者は多い。しかし,当院では患者各々に適した車いすを備品として所有していないのが現状である。そこで,当院では病棟ADL向上を目標の一つとして福祉用具レンタル会社と契約し,費用は当院負担で患者に合ったモジュラー型車いすなどをレンタルするシステムを導入した。本システムは2013年12月より開始されたもので,車いすをレンタルする患者の選定は各担当セラピストの評価と患者目標により決定している。システム導入後半年が経過し,車いすをレンタルする患者が増加してきた。今後,車いすをレンタルする必要の有無や必要なくなり回収する時期などを検討していく必要があると感じている。そこで今回,車いすをレンタルした患者のADLの状況を明らかにしていくことを目的に,入院時FIMと回収時のFIMを比較検討したので若干の考察を加えて報告する。
【方法】
本システムを導入した2013年12月~2014年6月に当院に入院し,車いすをレンタルした患者47名のうちすでに車いすを回収した20名を対象とした。対象者の属性は,男性7名・女性13名,平均年齢(標準偏差):78.7(7.6)歳,疾患の内訳は,脳血管障害15名,下肢骨盤帯の骨折3名,脊髄損傷1名,廃用症候群1名であった。また,入院日,対象者の車いすレンタル開始日と回収日,入院時FIM,車いすレンタル回収直近のFIMをカルテより後方視的に調査した。入院から車いすレンタル処方までの日数の平均(範囲)は,23.4(3~87)日,車いすが処方されてから回収するまでの日数の平均(範囲)は,65.3(13~149)日であった。車いすをレンタルして処方することによって病棟ADLにどのような影響を及ぼしているか,またレンタルしている日数の差によってADLにどのような影響が出ているか検討するため,対象者の入院時FIMと回収時のFIMからFIM効率を算出し,その関連性をSpearmanの相関係数にて検討した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
全対象者の入院時FIMの平均(標準偏差)は45.3(23.0),入院時に車いすを使用していたがレンタルせずに当院所有の一般的な車いすを処方した患者の入院時FIMの平均(標準偏差)は67.5(25.4)であり,車いすをレンタルした患者は病棟ADLが著しく低い者が多かった。回収時FIMの平均(標準偏差)は63.5(33.6)であり,対応のあるt検定の結果,入院時に比べ有意にFIMの点数は向上した。車いすレンタル期間のFIM利得の平均(標準偏差)は18.2(17.2),FIM効率は0.56(0.90)となった。Spearmanの相関係数の結果,入院時FIMとFIM効率の間に有意な相関を認めた(r=0.645)。入院時FIMと入院から処方までの日数,入院から処方までの日数と車いすを使用している期間には有意な相関は認めなかった。
【考察】
当院での車いす処方は,セラピストの評価と患者各々に設定した目標により決定している。患者各々の短期目標には,車いすでの食事動作自立など具体的なADLを目標にする患者から機能面の向上を掲げるに留まる患者もいるのが現状である。今回の調査結果より,車いすをレンタルした患者において入院時FIMが高い者はFIM効率も高いことが示唆された。これは,入院時FIMが高値で車いすをレンタルするケースは,早急に病棟ADLを向上させたかったケースが多く,入院時FIMが低値で車いすをレンタルするケースは,まず筋緊張の調整や座位姿勢の改善といった機能面の向上が目標で,その後ゆっくりとADLが向上したため,レンタル期間が長くなる傾向にあったと思われる。今後,車いすをレンタルする必要のある患者に対して,患者各々が適した時期に処方され必要な期間レンタルできるよう,ADL評価・機能評価を十分に行い,病棟看護師を含めたチームで患者の目標を設定していく必要があると考えている。
【理学療法学研究としての意義】
回復期リハビリテーション病棟に入院する患者は,自宅退院するためには病棟ADLを向上させる必要がある。患者に適した車いすのレンタルはその一助になると考える。車いすレンタルをした患者の病棟ADLの傾向を詳細に把握することで,今後,車いすをレンタルする患者の選定,回収時期の検討が容易になり,より患者に合わせたサービスを提供できるようになると考える。
回復期リハビリテーション病棟ではADLにおいて車いすを必要としている患者は多い。しかし,当院では患者各々に適した車いすを備品として所有していないのが現状である。そこで,当院では病棟ADL向上を目標の一つとして福祉用具レンタル会社と契約し,費用は当院負担で患者に合ったモジュラー型車いすなどをレンタルするシステムを導入した。本システムは2013年12月より開始されたもので,車いすをレンタルする患者の選定は各担当セラピストの評価と患者目標により決定している。システム導入後半年が経過し,車いすをレンタルする患者が増加してきた。今後,車いすをレンタルする必要の有無や必要なくなり回収する時期などを検討していく必要があると感じている。そこで今回,車いすをレンタルした患者のADLの状況を明らかにしていくことを目的に,入院時FIMと回収時のFIMを比較検討したので若干の考察を加えて報告する。
【方法】
本システムを導入した2013年12月~2014年6月に当院に入院し,車いすをレンタルした患者47名のうちすでに車いすを回収した20名を対象とした。対象者の属性は,男性7名・女性13名,平均年齢(標準偏差):78.7(7.6)歳,疾患の内訳は,脳血管障害15名,下肢骨盤帯の骨折3名,脊髄損傷1名,廃用症候群1名であった。また,入院日,対象者の車いすレンタル開始日と回収日,入院時FIM,車いすレンタル回収直近のFIMをカルテより後方視的に調査した。入院から車いすレンタル処方までの日数の平均(範囲)は,23.4(3~87)日,車いすが処方されてから回収するまでの日数の平均(範囲)は,65.3(13~149)日であった。車いすをレンタルして処方することによって病棟ADLにどのような影響を及ぼしているか,またレンタルしている日数の差によってADLにどのような影響が出ているか検討するため,対象者の入院時FIMと回収時のFIMからFIM効率を算出し,その関連性をSpearmanの相関係数にて検討した。なお,有意水準は5%とした。
【結果】
全対象者の入院時FIMの平均(標準偏差)は45.3(23.0),入院時に車いすを使用していたがレンタルせずに当院所有の一般的な車いすを処方した患者の入院時FIMの平均(標準偏差)は67.5(25.4)であり,車いすをレンタルした患者は病棟ADLが著しく低い者が多かった。回収時FIMの平均(標準偏差)は63.5(33.6)であり,対応のあるt検定の結果,入院時に比べ有意にFIMの点数は向上した。車いすレンタル期間のFIM利得の平均(標準偏差)は18.2(17.2),FIM効率は0.56(0.90)となった。Spearmanの相関係数の結果,入院時FIMとFIM効率の間に有意な相関を認めた(r=0.645)。入院時FIMと入院から処方までの日数,入院から処方までの日数と車いすを使用している期間には有意な相関は認めなかった。
【考察】
当院での車いす処方は,セラピストの評価と患者各々に設定した目標により決定している。患者各々の短期目標には,車いすでの食事動作自立など具体的なADLを目標にする患者から機能面の向上を掲げるに留まる患者もいるのが現状である。今回の調査結果より,車いすをレンタルした患者において入院時FIMが高い者はFIM効率も高いことが示唆された。これは,入院時FIMが高値で車いすをレンタルするケースは,早急に病棟ADLを向上させたかったケースが多く,入院時FIMが低値で車いすをレンタルするケースは,まず筋緊張の調整や座位姿勢の改善といった機能面の向上が目標で,その後ゆっくりとADLが向上したため,レンタル期間が長くなる傾向にあったと思われる。今後,車いすをレンタルする必要のある患者に対して,患者各々が適した時期に処方され必要な期間レンタルできるよう,ADL評価・機能評価を十分に行い,病棟看護師を含めたチームで患者の目標を設定していく必要があると考えている。
【理学療法学研究としての意義】
回復期リハビリテーション病棟に入院する患者は,自宅退院するためには病棟ADLを向上させる必要がある。患者に適した車いすのレンタルはその一助になると考える。車いすレンタルをした患者の病棟ADLの傾向を詳細に把握することで,今後,車いすをレンタルする患者の選定,回収時期の検討が容易になり,より患者に合わせたサービスを提供できるようになると考える。