[O-0621] 糖尿病と肥満症を伴う人工膝関節置換術後患者の身体活動量
―活動量計を用いた調査―
キーワード:人工膝関節置換術, 身体活動量, 生活習慣病
【はじめに,目的】
人工膝関節置換術は,膝の痛みの改善や身体機能および身体活動量の向上に有効であるといわれている。身体活動量に関する調査では,簡便で精度が良好な身体活動量計を用いることが推奨されている。人工膝関節置換術後(knee joint replacement;KJR)患者を対象とした身体活動量計による調査では,術前と比較して術後3ヶ月および6ヶ月での1日あたりの歩数が増加すると報告されている。
一般的に,身体活動量の低下は,肥満や糖尿病といった生活習慣病を引き起こすことが指摘されている。膝OA患者は,疼痛によって身体活動量が低下することにより,肥満を助長する,あるいは糖尿病を引き起こすリスクが高い。また,KJR患者の15%は肥満であり,そのうちの30%が糖尿病などの生活習慣病を有すること,術後2年間の追跡調査において体重が増加することが報告されている。
しかしながら,肥満や糖尿病を有するKJR患者の身体活動量においては十分に把握されていないのが現状である。
本研究の目的はKJR患者に対して身体活動量計を用いて身体活動量を測定し,糖尿病,肥満,運動習慣の程度で身体活動量に差があるかを調査することである。
【方法】
対象は当院にて初回人工膝関節全置換術(TKA)または単顆置換術(UKA)を受けた者,片側または両側術後の者,術後2ヶ月を経過している者とした。除外基準は,重篤な心疾患または中枢神経疾患を有する者,膝関節以外の骨・関節の手術既往を有する者,認知障害を有する者とした。
測定項目は,(1)活動量計を用いた身体活動量(1日の歩数,活動時間),(2)日本語版Physical Activity Scale for the Elderly(PASE),(3)日本語版High-Activity Arthroplasty Score(JHAAS),(4)運動行動変容に対する自己効力感(Exercise Self-efficacy:ESE)に関するアンケート,(5)運動習慣の有無,(6)BMI,(7)膝ROM,(8)等尺性膝伸展筋力とした。
測定方法は,当院で行っている理学療法外来の定期評価時に身長および体重を測定し,活動量計(株式会社タニタ カロリズムエキスパートAM-140)と質問用紙を手渡した。活動量計は,起床から就寝時まで装着し,通常の日常生活を送るように指導した。装着期間は一週間とし,期間終了後,活動量計と回答したアンケートを郵送させた。統計解析は,記述統計的解析を行い,各項目間の相関分析を行った。
【結果】
対象は,93名となった。対象者の基本属性は,男性18名,女性75名,TKA65名,UKA28名,片側39名,両側54名,年齢[平均値±標準偏差(範囲)]73.0±6.4(54.0-86.0)歳,BMI26.3±3.4(19.2-35.6)kg/m2,術後経過期間464.7±376.5(69.0-1496.0)日であった。併存症を有する者の割合は,心疾患9.7%,糖尿病32.3%,高血圧62.4%であった。BMIは,歩数(r=-0.30),併存症の罹患数(r=0.35),活動時間(r=-0.26)と相関が認められた。糖尿病を有するKJR患者は,糖尿病でないKJR患者よりもBMIは高値を示した。糖尿病を有するKJR患者はESE,筋力,JHAASにおいて低値を示し,活動時間も少なかった。BMIの分類の違いによる平均歩数は,標準4119.8±2138.8(1133-10448)歩,肥満I度3978.0±3015.9(180-10976)歩,肥満II度1976.7±2082.1(307-8077)歩であり,BMIが高いほど歩数が少なかった。
【考察】
今回,人工膝関節置換術後患者に対して身体活動量計を用いて身体活動量を測定し,糖尿病,肥満の程度で身体活動量に差があるかを調査した。本研究では,糖尿病やBMIは,歩数や活動時間に関連していることが示された。先行研究において,糖尿病あるいは肥満がKJR患者の人工膝関節の再置換の原因となることや死亡率を高めることが報告されており,本調査の結果からも,運動を定着させるための指導が必要である。術後はROMや身体機能のみならず,糖尿病や肥満に対する治療も続けなければならないことを示している。肥満や生活習慣病の予防においても身体活動量を増やすことが手段の一つであり,術後のより長く自立した生活を送るためにも身体活動量の増加に向けた介入が必要である。今後はKJR患者に対し,身体活動量の増加を目的とした介入研究をしたい。
【理学療法学研究としての意義】
糖尿病,肥満を有する人工膝関節置換術後患者の身体活動量を調査することにより,運動習慣を定着させ,継続した運動指導および運動療法を必要とする集団を明らかにすることができた。
人工膝関節置換術は,膝の痛みの改善や身体機能および身体活動量の向上に有効であるといわれている。身体活動量に関する調査では,簡便で精度が良好な身体活動量計を用いることが推奨されている。人工膝関節置換術後(knee joint replacement;KJR)患者を対象とした身体活動量計による調査では,術前と比較して術後3ヶ月および6ヶ月での1日あたりの歩数が増加すると報告されている。
一般的に,身体活動量の低下は,肥満や糖尿病といった生活習慣病を引き起こすことが指摘されている。膝OA患者は,疼痛によって身体活動量が低下することにより,肥満を助長する,あるいは糖尿病を引き起こすリスクが高い。また,KJR患者の15%は肥満であり,そのうちの30%が糖尿病などの生活習慣病を有すること,術後2年間の追跡調査において体重が増加することが報告されている。
しかしながら,肥満や糖尿病を有するKJR患者の身体活動量においては十分に把握されていないのが現状である。
本研究の目的はKJR患者に対して身体活動量計を用いて身体活動量を測定し,糖尿病,肥満,運動習慣の程度で身体活動量に差があるかを調査することである。
【方法】
対象は当院にて初回人工膝関節全置換術(TKA)または単顆置換術(UKA)を受けた者,片側または両側術後の者,術後2ヶ月を経過している者とした。除外基準は,重篤な心疾患または中枢神経疾患を有する者,膝関節以外の骨・関節の手術既往を有する者,認知障害を有する者とした。
測定項目は,(1)活動量計を用いた身体活動量(1日の歩数,活動時間),(2)日本語版Physical Activity Scale for the Elderly(PASE),(3)日本語版High-Activity Arthroplasty Score(JHAAS),(4)運動行動変容に対する自己効力感(Exercise Self-efficacy:ESE)に関するアンケート,(5)運動習慣の有無,(6)BMI,(7)膝ROM,(8)等尺性膝伸展筋力とした。
測定方法は,当院で行っている理学療法外来の定期評価時に身長および体重を測定し,活動量計(株式会社タニタ カロリズムエキスパートAM-140)と質問用紙を手渡した。活動量計は,起床から就寝時まで装着し,通常の日常生活を送るように指導した。装着期間は一週間とし,期間終了後,活動量計と回答したアンケートを郵送させた。統計解析は,記述統計的解析を行い,各項目間の相関分析を行った。
【結果】
対象は,93名となった。対象者の基本属性は,男性18名,女性75名,TKA65名,UKA28名,片側39名,両側54名,年齢[平均値±標準偏差(範囲)]73.0±6.4(54.0-86.0)歳,BMI26.3±3.4(19.2-35.6)kg/m2,術後経過期間464.7±376.5(69.0-1496.0)日であった。併存症を有する者の割合は,心疾患9.7%,糖尿病32.3%,高血圧62.4%であった。BMIは,歩数(r=-0.30),併存症の罹患数(r=0.35),活動時間(r=-0.26)と相関が認められた。糖尿病を有するKJR患者は,糖尿病でないKJR患者よりもBMIは高値を示した。糖尿病を有するKJR患者はESE,筋力,JHAASにおいて低値を示し,活動時間も少なかった。BMIの分類の違いによる平均歩数は,標準4119.8±2138.8(1133-10448)歩,肥満I度3978.0±3015.9(180-10976)歩,肥満II度1976.7±2082.1(307-8077)歩であり,BMIが高いほど歩数が少なかった。
【考察】
今回,人工膝関節置換術後患者に対して身体活動量計を用いて身体活動量を測定し,糖尿病,肥満の程度で身体活動量に差があるかを調査した。本研究では,糖尿病やBMIは,歩数や活動時間に関連していることが示された。先行研究において,糖尿病あるいは肥満がKJR患者の人工膝関節の再置換の原因となることや死亡率を高めることが報告されており,本調査の結果からも,運動を定着させるための指導が必要である。術後はROMや身体機能のみならず,糖尿病や肥満に対する治療も続けなければならないことを示している。肥満や生活習慣病の予防においても身体活動量を増やすことが手段の一つであり,術後のより長く自立した生活を送るためにも身体活動量の増加に向けた介入が必要である。今後はKJR患者に対し,身体活動量の増加を目的とした介入研究をしたい。
【理学療法学研究としての意義】
糖尿病,肥満を有する人工膝関節置換術後患者の身体活動量を調査することにより,運動習慣を定着させ,継続した運動指導および運動療法を必要とする集団を明らかにすることができた。