第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

参加型症例研究ディスカッション 口述10

脳卒中理学療法と装具

2015年6月7日(日) 08:30 〜 09:30 第4会場 (ホールB7(2))

座長:神沢信行(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部理学療法学科), 萩原章由(横浜市立脳血管医療センター)

[O-0630] 筋活動からみた重度片麻痺症例に対する長下肢装具を使用した歩行練習の効果

福田浩巳1, 西田宗幹1, 林久恵2 (1.医療法人鴻池会秋津鴻池病院, 2.星城大学リハビリテーション学部理学療法専攻)

キーワード:片麻痺, 長下肢装具, 筋電図

【目的】
脳卒中後片麻痺症例に対し長下肢装具(LLB)を使用した歩行練習を行うことで,運動機能の改善が得られること(石神,1986),随意筋力より高い筋活動を促すことができること(大畑ら,2013)が報告されている。しかし,下肢筋の随意収縮がみられない重度片麻痺症例においては,LLBを使用した立位・歩行練習が下肢の機能へ及ぼす影響について詳細な検討が行われていない。そこで今回,重度片麻痺症例に対するLLBを使用した立位・歩行練習の効果について電気生理学的な視点から検証を試み,若干の所見が得られたので報告する。
【症例提示】
60歳代女性,左視床出血を発症し右片麻痺,構音障害を呈した。併存疾患の高血圧は,薬物療法により血圧の管理は適切に行われていた。
【経過と考察】
発症2日目からLLBを使用した歩行練習を開始し,4週目の意識清明,従命可能な状態で理学療法評価および筋電図測定を行った。関節可動域に制限はなく,徒手筋力検査(MMT)では右側上下肢筋の随意収縮は認めず,左側上下肢は4+であった。Modified Ashworth scaleは四肢の関節すべて0であった。筋電図測定は筋電計(キッセイコムテック株式会社製MQ8)を用い,大腿直筋(RF),半膜様筋(SM),腓腹筋内側頭(GC)の活動を記録した。測定条件は,最大等尺性筋力発揮時,LLBを使用した立位時,歩行時とし条件毎に15秒間の記録を抽出した。
最大等尺性筋力発揮時は筋放電を認めなかったが,立位・歩行練習時では筋放電が確認された。筋電図波形は全波整流し積分値を算出し,立位(S)と歩行(G)との比(G/S ratio)を求めた。G/S ratioはRF171%,SM201%,GC174%であった。
随意収縮がみられない時期に,LLBを使用した立位・歩行練習を行うことで下肢の筋活動を認め,さらには歩行練習で筋活動が増強した。同治療を継続して行った結果,発症6週目の右下肢のMMTは大腿四頭筋2,ハムストリングス2-,腓腹筋1まで改善し随意収縮がみられた。