[O-0632] 心臓血管外科手術前後の筋断面積と身体機能の変化について
Keywords:心臓血管外科手術, 筋断面積, 身体機能
【はじめに,目的】心臓血管外科手術後患者は廃用症候群など種々の合併症を予防するために手術後早期より理学療法を行うが,順調な症例であっても退院時に身体機能の低下をきたすことは少なくない。この身体機能の低下には手術侵襲や不動による異化亢進が関与することが報告されている。しかし手術前後の筋量が身体機能と比較してどの程度低下しているかは不明である。そこで本研究は上腕二頭筋と大腿直筋の筋断面積(CSA)を超音波検査装置を使用して測定し,心臓血管外科手術前後のCSAと身体機能の変化を検討した。
【方法】対象は当院にて2013年11月から2014年6月の間に待機的に心臓血管外科手術をうけた患者53例の内,本研究に同意を得た23例(年齢70±9歳,男性13例,術式:CABG5例/弁手術10例/大血管手術2例/複合手術5例/その他1例)である。術前より重度の脳血管障害や筋骨格系障害を有する患者を除外した。
CSAの測定は超音波検査装置(Vivid i;GE healthcare,Norway)を使用し10.0MHzの深触子を用いた。測定部位は上腕二頭筋と大腿直筋であり,それぞれ肩峰から肘窩線中央を結んだ線の上から2/3の位置,上前腸骨棘から膝蓋骨上縁を結んだ線の上から3/5の位置を測定した。CSAは左右の平均を測定値として使用した。身体機能はshort physical performance battery(SPPB),握力,膝関節伸展筋力,歩行速度を測定した。測定時期は手術前と手術後14日前後に実施し,比較検討を行った。
対象患者の理学療法は日本循環器学会による『心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』に準じて行った。
統計学的手法として,身体機能,CSAの手術前後の比較に対応のあるt検定を行った。また上腕二頭筋と大腿直筋の筋断面積の減少の関連をpeasonの相関係数を用いて検討した。統計学的解析はJMP8.0を用いて,有意水準5%未満とした。
【結果】上腕二頭筋CSAは手術前608±244mm2→手術後547±175mm2(p<0.05),大腿直筋CSAは手術前522±144mm2→手術後462±120mm2(p<0.05)であり,両筋のCSAが有意に減少していた。身体機能はSPPB術前11.4±0.9→術後11.5±1.0点,通常歩行速度術前1.04±0.20m/sec→術後0.97±0.19m/sec,最高歩行速度術前1.48±0.31m/sec→術後1.40±0.36m/sec,膝伸展筋力は術前40.0±8.2%BW→術後40.8±12.2%BWと手術前後で有意な変化は認めなかった。握力が手術前26.6±9.1kg→手術後23.9±7.9kgと有意に低下を認めた(p<0.05)。また上腕二頭筋CSAと大腿直筋CSAの間に有意な相関関係は認めなかった。
【考察】心臓血管外科手術後患者は手術前後において身体機能は維持されたが,上腕二頭筋や大腿直筋のCSAは減少を認めた。身体機能の低下に著明な変化はないため筋断面積の減少が患者にどの程度問題となるかは不明であるが,心臓血管外科手術の影響により全身の筋量が減少している可能性が考えられた。また上腕二頭筋と大腿直筋のCSA減少に相関を認めなかったことは,症例によりCSA減少の部位や程度が異なるということである。これは心臓血管外科手術後のCSA減少に関わる因子が手術侵襲や不動による異化亢進など様々であることが関与している可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】心臓血管手術後のリハビリテーション進行や心臓血管手術前後の身体機能変化の報告は多くあり周知されている。本研究の結果である心臓血管手術前後における筋断面積減少がどのような問題を生じるかは不明であるが,筋力や運動耐容能と生命予後の関連などの先行研究から考えると,筋断面積減少をいかに予防していくかは理学療法にとって重要な課題と考えられ,本研究の結果は心臓血管外科手術後患者に対する理学療法介入の礎になると考える。
【方法】対象は当院にて2013年11月から2014年6月の間に待機的に心臓血管外科手術をうけた患者53例の内,本研究に同意を得た23例(年齢70±9歳,男性13例,術式:CABG5例/弁手術10例/大血管手術2例/複合手術5例/その他1例)である。術前より重度の脳血管障害や筋骨格系障害を有する患者を除外した。
CSAの測定は超音波検査装置(Vivid i;GE healthcare,Norway)を使用し10.0MHzの深触子を用いた。測定部位は上腕二頭筋と大腿直筋であり,それぞれ肩峰から肘窩線中央を結んだ線の上から2/3の位置,上前腸骨棘から膝蓋骨上縁を結んだ線の上から3/5の位置を測定した。CSAは左右の平均を測定値として使用した。身体機能はshort physical performance battery(SPPB),握力,膝関節伸展筋力,歩行速度を測定した。測定時期は手術前と手術後14日前後に実施し,比較検討を行った。
対象患者の理学療法は日本循環器学会による『心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』に準じて行った。
統計学的手法として,身体機能,CSAの手術前後の比較に対応のあるt検定を行った。また上腕二頭筋と大腿直筋の筋断面積の減少の関連をpeasonの相関係数を用いて検討した。統計学的解析はJMP8.0を用いて,有意水準5%未満とした。
【結果】上腕二頭筋CSAは手術前608±244mm2→手術後547±175mm2(p<0.05),大腿直筋CSAは手術前522±144mm2→手術後462±120mm2(p<0.05)であり,両筋のCSAが有意に減少していた。身体機能はSPPB術前11.4±0.9→術後11.5±1.0点,通常歩行速度術前1.04±0.20m/sec→術後0.97±0.19m/sec,最高歩行速度術前1.48±0.31m/sec→術後1.40±0.36m/sec,膝伸展筋力は術前40.0±8.2%BW→術後40.8±12.2%BWと手術前後で有意な変化は認めなかった。握力が手術前26.6±9.1kg→手術後23.9±7.9kgと有意に低下を認めた(p<0.05)。また上腕二頭筋CSAと大腿直筋CSAの間に有意な相関関係は認めなかった。
【考察】心臓血管外科手術後患者は手術前後において身体機能は維持されたが,上腕二頭筋や大腿直筋のCSAは減少を認めた。身体機能の低下に著明な変化はないため筋断面積の減少が患者にどの程度問題となるかは不明であるが,心臓血管外科手術の影響により全身の筋量が減少している可能性が考えられた。また上腕二頭筋と大腿直筋のCSA減少に相関を認めなかったことは,症例によりCSA減少の部位や程度が異なるということである。これは心臓血管外科手術後のCSA減少に関わる因子が手術侵襲や不動による異化亢進など様々であることが関与している可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】心臓血管手術後のリハビリテーション進行や心臓血管手術前後の身体機能変化の報告は多くあり周知されている。本研究の結果である心臓血管手術前後における筋断面積減少がどのような問題を生じるかは不明であるが,筋力や運動耐容能と生命予後の関連などの先行研究から考えると,筋断面積減少をいかに予防していくかは理学療法にとって重要な課題と考えられ,本研究の結果は心臓血管外科手術後患者に対する理学療法介入の礎になると考える。