[O-0633] 心不全増悪による再入院予測因子としての最高酸素摂取量と6分間歩行距離との比較
キーワード:慢性心不全, 6分間歩行, 最高酸素摂取量
【はじめに,目的】心肺運動負荷試験(CPET)で求められる最高酸素摂取量(Peak VO2)と6分間歩行試験(6MWT)における6分間歩行距離(6MWD)は,慢性心不全患者の生命予後や心不全増悪による再入院リスクを評価する指標として広く用いられている。しかし,心不全増悪による再入院の予測因子としてPeak VO2と6MWDとを比較した報告はないため,2つの因子による再入院予測精度の比較,検討することを目的とした。
【方法】症候限界性にCPETおよび6MWTを行い,退院後経過観察可能であった慢性心不全患者25名(平均年齢65.6±10.0歳,男性17名)を対象とした。除外基準は,認知症(改訂長谷川式簡易知能評価スケール<20),6MWD<100 m,慢性閉塞性肺疾患を合併する症例,入院中あるいは退院後に心臓外科手術を受けた症例,中枢神経疾患や骨関節疾患による運動制限がある症例とした。ベースライン時の評価項目として,年齢,性別,BMI,左室駆出率,BNP,推算糸球体濾過量,アルブミン濃度,CRP,握力,等尺性膝伸展筋力,下腿周囲長を調査した。全例を自宅退院後に心不全増悪により再入院した再入院群と再入院せず自宅生活を継続した非再入院群に群わけした。CPETは自転車エルゴメーターを使用し,Peak VO2などの各種呼気ガス指標を測定した。なお,CPETと6MWTは別日に行った。Peak VO2と6MWDの再入院予測精度は受信者動作特性(ROC)解析により各因子の曲線下面積(AUC)および感度,特異度を算出した。統計解析は,ベースライン時の各因子の2群間の比較に対応のないt検定またはMann-Whitney U検定,カイ二乗検定を用いた。Peak VO2と6MWDとの相関をPearsonの相関係数を用いて検討し,2つのROC曲線のAUCの比較にはDeLong検定を行った。また,心不全増悪による再入院の独立予測因子は,多変量Cox回帰モデルを用いて分析した。統計学的有意水準は5%未満とした。統計ソフトウェアにはEZR(ver. 1.11)を用いた。
【結果】2年間の追跡期間中,7名(28%)が心不全増悪により再入院となった。再入院群,非再入院群のPeak VO2の平均値はそれぞれ11.5±3.0 ml/kg/min,15.5±2.3 ml/kg/min,6MWDの平均値は327.4m±72.5m,406.6±62.4mであった。Peak VO2と6MWDとの間には有意な正の相関関係が認められた(r=0.75;P<0.001)。ROC解析の結果,心不全増悪による再入院予測のためのPeak VO2の最適なカットオフ値は13.03(感度0.857,特異度0.833;AUC 0.881),6MWDのカットオフ値は384.0(感度0.857,特異度0.667;AUC 0.794)となり2つのAUCに有意差はみられなかった(P=0.44)。また,2群間のベースライン時の比較でP<0.15であったBMI,6MWD,握力,膝伸展筋力,Peak VO2,VE/VCO2 slopeを独立変数としてCox比例ハザード多変量解析を行った結果,6MWD(ハザード比1.89;95%CI 1.12-3.21;P=0.018)およびVE/VCO2 slope(ハザード比44.38;95%CI 1.58-124.9;P=0.026)が独立した予測因子として抽出された。一方,Peak VO2は有意な独立因子とならなかった(P=0.16)。
【考察】先行研究ではPeak VO2および6MWDが独立した心不全患者の予後または再入院予測因子であることが報告されている。本研究では,Peak VO2と6MWDのROC解析の結果からともに強力な再入院予測因子であることが示唆されたが,Cox比例ハザード多変量解析により6MWDが独立した再入院予測因子であることが示された。これより6MWDは,心不全増悪による再入院予測因子としてPeak VO2よりも予測能が高い可能性が示唆された。ただし,症例数が少ないため今後さらなる検討が必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】心不全患者は年々増加し続けており,再入院率が高いことが問題となっている。6MWTは,非常に簡便かつ安価に行うことができ,心肺運動負荷試験を行えない施設においても実施可能である。6MWDは,慢性心不全患者の再入院リスクの層別化に有効である可能性が示唆された。
【方法】症候限界性にCPETおよび6MWTを行い,退院後経過観察可能であった慢性心不全患者25名(平均年齢65.6±10.0歳,男性17名)を対象とした。除外基準は,認知症(改訂長谷川式簡易知能評価スケール<20),6MWD<100 m,慢性閉塞性肺疾患を合併する症例,入院中あるいは退院後に心臓外科手術を受けた症例,中枢神経疾患や骨関節疾患による運動制限がある症例とした。ベースライン時の評価項目として,年齢,性別,BMI,左室駆出率,BNP,推算糸球体濾過量,アルブミン濃度,CRP,握力,等尺性膝伸展筋力,下腿周囲長を調査した。全例を自宅退院後に心不全増悪により再入院した再入院群と再入院せず自宅生活を継続した非再入院群に群わけした。CPETは自転車エルゴメーターを使用し,Peak VO2などの各種呼気ガス指標を測定した。なお,CPETと6MWTは別日に行った。Peak VO2と6MWDの再入院予測精度は受信者動作特性(ROC)解析により各因子の曲線下面積(AUC)および感度,特異度を算出した。統計解析は,ベースライン時の各因子の2群間の比較に対応のないt検定またはMann-Whitney U検定,カイ二乗検定を用いた。Peak VO2と6MWDとの相関をPearsonの相関係数を用いて検討し,2つのROC曲線のAUCの比較にはDeLong検定を行った。また,心不全増悪による再入院の独立予測因子は,多変量Cox回帰モデルを用いて分析した。統計学的有意水準は5%未満とした。統計ソフトウェアにはEZR(ver. 1.11)を用いた。
【結果】2年間の追跡期間中,7名(28%)が心不全増悪により再入院となった。再入院群,非再入院群のPeak VO2の平均値はそれぞれ11.5±3.0 ml/kg/min,15.5±2.3 ml/kg/min,6MWDの平均値は327.4m±72.5m,406.6±62.4mであった。Peak VO2と6MWDとの間には有意な正の相関関係が認められた(r=0.75;P<0.001)。ROC解析の結果,心不全増悪による再入院予測のためのPeak VO2の最適なカットオフ値は13.03(感度0.857,特異度0.833;AUC 0.881),6MWDのカットオフ値は384.0(感度0.857,特異度0.667;AUC 0.794)となり2つのAUCに有意差はみられなかった(P=0.44)。また,2群間のベースライン時の比較でP<0.15であったBMI,6MWD,握力,膝伸展筋力,Peak VO2,VE/VCO2 slopeを独立変数としてCox比例ハザード多変量解析を行った結果,6MWD(ハザード比1.89;95%CI 1.12-3.21;P=0.018)およびVE/VCO2 slope(ハザード比44.38;95%CI 1.58-124.9;P=0.026)が独立した予測因子として抽出された。一方,Peak VO2は有意な独立因子とならなかった(P=0.16)。
【考察】先行研究ではPeak VO2および6MWDが独立した心不全患者の予後または再入院予測因子であることが報告されている。本研究では,Peak VO2と6MWDのROC解析の結果からともに強力な再入院予測因子であることが示唆されたが,Cox比例ハザード多変量解析により6MWDが独立した再入院予測因子であることが示された。これより6MWDは,心不全増悪による再入院予測因子としてPeak VO2よりも予測能が高い可能性が示唆された。ただし,症例数が少ないため今後さらなる検討が必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】心不全患者は年々増加し続けており,再入院率が高いことが問題となっている。6MWTは,非常に簡便かつ安価に行うことができ,心肺運動負荷試験を行えない施設においても実施可能である。6MWDは,慢性心不全患者の再入院リスクの層別化に有効である可能性が示唆された。