[O-0634] 等尺性運動負荷が降圧治療中高血圧患者と健常者の自律神経・循環応答に及ぼす影響
Keywords:高血圧, 自律神経, 循環応答
【はじめに,目的】高血圧症は動脈硬化を進展させ,生命予後危険因子のとして需要である。高血圧患者に対する運動療法は,高血圧治療ガイドラインにおいても非薬物療法の一つとして明記されている。しかし,健常者と高血圧患者の運動負荷時の自律神経や循環応答の差異についての報告は少ない。本研究では健常者を対照とし,高血圧患者にハンドグリップ負荷を行い,瞳孔機能計を用いて非侵襲的に自律神経機能と血圧変動について明らかにすることを目的とする。
【方法】対象は,高血圧や糖尿病と指摘されたことのない安静時正常血圧の健常者群10例(NT群,平均年齢64.5±9.2歳)と高血圧群20例(HT群,平均年齢67.8±12.1歳)。HT群は降圧剤としてカルシウム拮抗薬アムロジピンを服用している。等尺性運動として,ハンドグリップ負荷はあらかじめ最大握力を測定し,その70%負荷で1分間JAMAR油圧式クラッシュ力計を把持して実施した。測定は15分間の安静後とハンドグリップ負荷直後に血圧,脈拍,瞳孔機能(イリスコーダーデュアルC10641;浜松ホトニクス)と加速度脈派計(Artetto C;株式会社ユメディカ)からLF/HFを計測した。
【結果】両群間において身長,体重,BMIでHT群の方が有意差に高値を示した。安静時の収縮期血圧はNT群113.96±14.7(平均±SD)mmHg,HT群133.3±11.2mmHgとHT群で有意に高かった。負荷後はNT群130.9±22.4mmHg(p<0.01),HT群144.6±12.9mmHg(p<0.01)で,両群とも有意に上昇した。安静時の脈拍はNT群70.4±6.9bpm,HT群67.6±9. 4bpm,負荷後はNT群74.0±7.3bpm,HT群72.7±10.0bpm(p<0.01)とNT群で変化しなかったがHT群で有意な上昇を示した。縮瞳速度は安静時NT群3.4±0.9mm/s,HT群3.5±1.2mm/s,負荷後NT群3.4±1.1mm/s,HT群4.6±1.9mm/s(p<0.01)とNT群では変化しなかったが,HT群では有意に増加した。散瞳速度は安静時NT群2.2±1.1mm/s,HT群1.8±0.7mm/s,負荷後NT群2.2±1.1mm/s,HT群2.7±1.0mm/s(p<0.01)とNT群では変化なく,HT群で有意に上昇した。LF/HFは安静時NT群2.62±0.68,HT群2.22±0.61,負荷後NT群2.38±0.54,HT群4.94±1.31(p<0.01)とNT群では変化を示さなかったが,HT群では有意に亢進していた。
【考察】ハンドグリップ負荷によりNT群では血圧のみ上昇を認めた。一方HT群では血圧の他に脈拍や副交感神経の指標となる縮瞳速度,交感神経の指標となる散瞳速度とLF/HFの亢進を認めた。血圧上昇は等尺性筋収縮により末梢血管抵抗が上昇したことが原因と考える。HT群での脈拍上昇は,アムロジピンの副作用である反射性頻脈が一因と考える。アムロジピンは血中半減期が長く持続的な降圧が可能であるが今回の結果ではNT群とHT群間で自律神経指標に差異を認めた。本研究から,高血圧症患者では降圧剤を服用していても,自律神経機能の動きが大きく,特に交感神経が亢進しやすい状況にあることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】高血圧患者に対する等尺性運動は,一時的な血圧上昇に留まらず健常者と異なる自律神経応答を示すため,理学療法プログラム立案時に高血圧症の既往歴確認はリスク管理に直結することが改めてわかった。また,非侵襲的に自律神経測定ができる電子瞳孔計は,理学療法場面の様々な負荷時の交感神経の動きを理解したり,薬物服用中のハイリスク症例の治療に際して循環応答予測に有用であることも明らかとなった。
【方法】対象は,高血圧や糖尿病と指摘されたことのない安静時正常血圧の健常者群10例(NT群,平均年齢64.5±9.2歳)と高血圧群20例(HT群,平均年齢67.8±12.1歳)。HT群は降圧剤としてカルシウム拮抗薬アムロジピンを服用している。等尺性運動として,ハンドグリップ負荷はあらかじめ最大握力を測定し,その70%負荷で1分間JAMAR油圧式クラッシュ力計を把持して実施した。測定は15分間の安静後とハンドグリップ負荷直後に血圧,脈拍,瞳孔機能(イリスコーダーデュアルC10641;浜松ホトニクス)と加速度脈派計(Artetto C;株式会社ユメディカ)からLF/HFを計測した。
【結果】両群間において身長,体重,BMIでHT群の方が有意差に高値を示した。安静時の収縮期血圧はNT群113.96±14.7(平均±SD)mmHg,HT群133.3±11.2mmHgとHT群で有意に高かった。負荷後はNT群130.9±22.4mmHg(p<0.01),HT群144.6±12.9mmHg(p<0.01)で,両群とも有意に上昇した。安静時の脈拍はNT群70.4±6.9bpm,HT群67.6±9. 4bpm,負荷後はNT群74.0±7.3bpm,HT群72.7±10.0bpm(p<0.01)とNT群で変化しなかったがHT群で有意な上昇を示した。縮瞳速度は安静時NT群3.4±0.9mm/s,HT群3.5±1.2mm/s,負荷後NT群3.4±1.1mm/s,HT群4.6±1.9mm/s(p<0.01)とNT群では変化しなかったが,HT群では有意に増加した。散瞳速度は安静時NT群2.2±1.1mm/s,HT群1.8±0.7mm/s,負荷後NT群2.2±1.1mm/s,HT群2.7±1.0mm/s(p<0.01)とNT群では変化なく,HT群で有意に上昇した。LF/HFは安静時NT群2.62±0.68,HT群2.22±0.61,負荷後NT群2.38±0.54,HT群4.94±1.31(p<0.01)とNT群では変化を示さなかったが,HT群では有意に亢進していた。
【考察】ハンドグリップ負荷によりNT群では血圧のみ上昇を認めた。一方HT群では血圧の他に脈拍や副交感神経の指標となる縮瞳速度,交感神経の指標となる散瞳速度とLF/HFの亢進を認めた。血圧上昇は等尺性筋収縮により末梢血管抵抗が上昇したことが原因と考える。HT群での脈拍上昇は,アムロジピンの副作用である反射性頻脈が一因と考える。アムロジピンは血中半減期が長く持続的な降圧が可能であるが今回の結果ではNT群とHT群間で自律神経指標に差異を認めた。本研究から,高血圧症患者では降圧剤を服用していても,自律神経機能の動きが大きく,特に交感神経が亢進しやすい状況にあることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】高血圧患者に対する等尺性運動は,一時的な血圧上昇に留まらず健常者と異なる自律神経応答を示すため,理学療法プログラム立案時に高血圧症の既往歴確認はリスク管理に直結することが改めてわかった。また,非侵襲的に自律神経測定ができる電子瞳孔計は,理学療法場面の様々な負荷時の交感神経の動きを理解したり,薬物服用中のハイリスク症例の治療に際して循環応答予測に有用であることも明らかとなった。