[O-0644] ストレッチポールエクササイズによる即時効果の検証
ベーシックセブンと基本姿勢保持の比較
Keywords:ストレッチポール, ベーシックセブン, 基本姿勢保持
【はじめに,目的】
身体のリアライメントおよびリラクゼーション効果のエクササイズに日本コアコンディショニング協会(JCCA)により推奨されているストレッチポールを用いたベーシックセブンエクササイズ(Basic Seven Exercise,BSE)がある。BSEについて先行研究では脊柱起立筋の筋硬度の低下,胸椎可動性,重心動揺に対する効果が報告されている。しかし臨床場面では,認知機能面や身体機能面などの要因で対象者がBSEを完遂することが困難な場合が多い。そこで本研究はBSE実施群とストレッチポール上で基本姿勢を保持する群(Maintain the Basic Position,MBP)を比較することで臨床上BSE完遂が困難な者に対してのストレッチポールエクササイズ適応を判断する材料とすることを目的とした。
【方法】
対象はストレッチポール使用経験のない健常成人22名とした。対象者を11名ずつ実施順にBSE群とMBP群とに振り分け,各エクササイズ前後でのFFD,体幹回旋可動域(ROM),円背指数,左右体重比を測定しその変化をみた。FFDおよびROMの測定は関節可動域測定法に基づき同一測定者が実施した。ROMについては両側を測定しエクササイズ前で可動域の低かった側をデータとして採用した。円背指数は両上肢下垂の座位で2m先の鏡の自身と視線を合わせた状態を測定肢位とし,自在曲線定規を用いC7~L4棘突起までの背部の彎曲をなぞりその形状を紙上にトレースした。紙上にトレースした彎曲C7とL4を結ぶ直線をL(cm),直線Lから彎曲の頂点までの距離をH(cm)とし,Milneらの式を用いその割合を円背指数(H/L×100)として算出した。左右体重比はwii-fitを使用して測定し,左右比50%:50%からの左右変位数の絶対値をデータとして採用した。各エクササイズ方法についてBSEはJCCA既定の手順で行い10分間を目安に完遂した。MBPはストレッチポール上で10分間の基本姿勢保持とした。分析は統計学的処理としてエクササイズ前後で対応のあるt検定(有意水準5%未満)を実施した。また,効果量をG-POWERを用いて検出した。効果量はCohenの報告「小=0.2,中=0.5,大=0.8」を基準に判定した。
【結果】
FFDにおける変化量の平均値はBSE群:-1.34 cm (p値:0.0456) ,MBP群:-1.96 cm(p値: 0.0069) 。効果量はBSE群:0.09 ,MBP群:0.22 であった。ROMにおける変化量の平均値はBSE群:9.09度°(p値:0.0004) ,MBP群:10.9度°(p値:0.00005) 。効果量はBSE群:0.9 ,MBP:1.19 であった。円背指数における変化量の平均値はBSE群:-0.81(p値:0.0833), MBP群:0.03(p値 :0.9624) 。効果量はBSE群:0.46 ,MBP群:0.01 であった。左右体重比における変化量の平均値はBSE群:-0.38(p値:0.3897), MBP群:-0.66(p値:0.2424) 。効果量はBSE群:0.25(小) ,MBP群:0.43 であった。
【考察】
今回,BSEとMBPの即時効果をFFDとROM,円背指数,左右体重比の4項目で比較した。その結果,両群ともFFDとROMにおいて即時効果を認めた。また,FFD,ROM,左右体重比の3項目においてMBP群で効果量が大きかった。平沼らによるとMBPの効果として胸椎伸展と胸郭挙上,前胸部リラクゼーション,仙腸関節リアライメント,股関節後方のリラクゼーションなどが報告されている。本研究の対象者はストレッチポール使用経験がなく不慣れなうえ,さらにBSEではストレッチポール上で四肢,体幹の動きを伴うためより不安定な状態になる。しかしMBPはストレッチポール上での基本姿勢保持であるため脱力が容易でありリラクゼーション効果がより得られたことが考えられる。円背指数の測定は座位で行うため抗重力位で体幹を長軸方向に起こす働き(体幹軸のElongation)が必要である。飯田らや布施らの報告ではストレッチポール上背臥位での上肢運動や体幹回旋負荷により腹横筋厚の優位な増加が確認されている。腹横筋は横隔膜や多裂筋,骨盤底筋群とともに一つのユニットとして腹圧を高める働きがあり,体幹軸のElongationにおいて重要である。今回のBSE,MBPでは腹横筋などのインナーユニットの賦活が不十分であったため優位な変化を認めなかったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
BSEよりも簡便なMBPでリラクゼーション効果が得られた今回の結果より,臨床上BSE完遂が困難な対象者に対してもストレッチポールが有効に利用できることが考えられる。しかしながら本研究における可動域測定はFFDおよび体幹回旋の2項目のみで全身的なリラクゼーション効果は不明であるため今後の研究課題となる。
身体のリアライメントおよびリラクゼーション効果のエクササイズに日本コアコンディショニング協会(JCCA)により推奨されているストレッチポールを用いたベーシックセブンエクササイズ(Basic Seven Exercise,BSE)がある。BSEについて先行研究では脊柱起立筋の筋硬度の低下,胸椎可動性,重心動揺に対する効果が報告されている。しかし臨床場面では,認知機能面や身体機能面などの要因で対象者がBSEを完遂することが困難な場合が多い。そこで本研究はBSE実施群とストレッチポール上で基本姿勢を保持する群(Maintain the Basic Position,MBP)を比較することで臨床上BSE完遂が困難な者に対してのストレッチポールエクササイズ適応を判断する材料とすることを目的とした。
【方法】
対象はストレッチポール使用経験のない健常成人22名とした。対象者を11名ずつ実施順にBSE群とMBP群とに振り分け,各エクササイズ前後でのFFD,体幹回旋可動域(ROM),円背指数,左右体重比を測定しその変化をみた。FFDおよびROMの測定は関節可動域測定法に基づき同一測定者が実施した。ROMについては両側を測定しエクササイズ前で可動域の低かった側をデータとして採用した。円背指数は両上肢下垂の座位で2m先の鏡の自身と視線を合わせた状態を測定肢位とし,自在曲線定規を用いC7~L4棘突起までの背部の彎曲をなぞりその形状を紙上にトレースした。紙上にトレースした彎曲C7とL4を結ぶ直線をL(cm),直線Lから彎曲の頂点までの距離をH(cm)とし,Milneらの式を用いその割合を円背指数(H/L×100)として算出した。左右体重比はwii-fitを使用して測定し,左右比50%:50%からの左右変位数の絶対値をデータとして採用した。各エクササイズ方法についてBSEはJCCA既定の手順で行い10分間を目安に完遂した。MBPはストレッチポール上で10分間の基本姿勢保持とした。分析は統計学的処理としてエクササイズ前後で対応のあるt検定(有意水準5%未満)を実施した。また,効果量をG-POWERを用いて検出した。効果量はCohenの報告「小=0.2,中=0.5,大=0.8」を基準に判定した。
【結果】
FFDにおける変化量の平均値はBSE群:-
【考察】
今回,BSEとMBPの即時効果をFFDとROM,円背指数,左右体重比の4項目で比較した。その結果,両群ともFFDとROMにおいて即時効果を認めた。また,FFD,ROM,左右体重比の3項目においてMBP群で効果量が大きかった。平沼らによるとMBPの効果として胸椎伸展と胸郭挙上,前胸部リラクゼーション,仙腸関節リアライメント,股関節後方のリラクゼーションなどが報告されている。本研究の対象者はストレッチポール使用経験がなく不慣れなうえ,さらにBSEではストレッチポール上で四肢,体幹の動きを伴うためより不安定な状態になる。しかしMBPはストレッチポール上での基本姿勢保持であるため脱力が容易でありリラクゼーション効果がより得られたことが考えられる。円背指数の測定は座位で行うため抗重力位で体幹を長軸方向に起こす働き(体幹軸のElongation)が必要である。飯田らや布施らの報告ではストレッチポール上背臥位での上肢運動や体幹回旋負荷により腹横筋厚の優位な増加が確認されている。腹横筋は横隔膜や多裂筋,骨盤底筋群とともに一つのユニットとして腹圧を高める働きがあり,体幹軸のElongationにおいて重要である。今回のBSE,MBPでは腹横筋などのインナーユニットの賦活が不十分であったため優位な変化を認めなかったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
BSEよりも簡便なMBPでリラクゼーション効果が得られた今回の結果より,臨床上BSE完遂が困難な対象者に対してもストレッチポールが有効に利用できることが考えられる。しかしながら本研究における可動域測定はFFDおよび体幹回旋の2項目のみで全身的なリラクゼーション効果は不明であるため今後の研究課題となる。