[O-0648] 地域在住要介護および要支援者における生活空間と関連する要因について
Keywords:生活空間, 虚弱, 身体能力
【はじめに】介護保険の通所系サービスにおいて,身体機能やADL・IADLの維持または回復のみならず,ICFにおける活動および参加レベルの視点から,生活空間をいかに安全に拡大できるかを個別ケースで対応していく能力もまた,多職種協働という中での理学療法士の役割として求められてくる。近年,介護予防または介護の分野で,老年症候群の中心概念とされる虚弱やサルコペニア等の重要性が聴かれるようになった。そしてその対象者の生活空間に焦点を当てた研究は散見するが,これらの評価との関係を調査した報告はみられていない。そこで本研究の目的は,地域在住要介護および要支援者の虚弱,サルコペニア,およびそれらの関連項目と生活空間との関係を横断的に調査することである。
【方法】対象は,介護保険の通所リハビリテーションを利用する要介護および要支援者55名(男性20名,女性35名,平均年齢82.2±7.0歳)である。対象の介護認定に関する内訳としては,要支援1:6名,要支援2:7名,要介護1:22名,要介護2:15名,要介護3:1名,要介護4:4名であった。除外基準として,歩行が不可である者もしくは,歩行がADL評価のFIMにて4点未満である者,認知機能低下または心身機能低下等により各測定が困難な者とした。測定項目は,サルコペニアの有無,虚弱の程度,栄養状態,身体能力,生活空間を評価した。サルコペニアは,Sanadaら(2012)により開発された推定式による骨格筋量指標(Skeletal Muscle mass Index;SMI),通常歩行速度,握力を求め,European WorkingGroup on Sarcopenia in Older Peopleによるアルゴリズムに則り判定した(SMIのカットオフ値は男性:6.87Kg/m2,女性:5.46Kg/m2を採用)。虚弱は,Clinical Frailty Scale(CFS),栄養状態の評価はMini Nutirition Assessment Short-Form(MNA-SF),身体能力の評価としてShort Physical Performance Battery(SPPB),そして生活空間については,上記の評価1カ月後にlife-space Assessment(LSA),および屋内生活空間をhome-based life-space assessment(Hb-LSA)を実施し,先行研究およびデータの分布等から,各々のカットオフ値を40点,65点とした高活動群と低活動群に分けた。統計学的検討は,各群間の単変量解析,多重ロジスティック回帰分析を用い,生活空間を従属変数とし,単変量解析にて有意差を認めた項目を独立変数として投入した。なお,統計学的検討には統計ソフトR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】サルコペニアと判定されたのは,25名(男性7名,女性18名)となり,対象者の45%であった。生活空間の平均値はLSA,Hb-LSA各々33.1±13.3,60.0±22.8であった。単変量解析の結果,LSAの高活動群と低活動群では年齢(79.7,83.2,n.s),サルコペニア(3例,22例,p<0.01),CFS(5.1,5.8,p<0.01),MNA-SF(12.3,10.0,p<0.01),SPPB(6.5,3.2,p<0.01)であった。Hb-LSAでは,年齢(81.1,82.8,n.s),サルコペニア(4例,21例,p<0.01),CFS(5.1,5.9,p<0.01),MNA-SF(12.3,9.8,p<0.01),SPPB(6.6,2.8,p<0.01)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,LSAではCFS(オッズ比0.14,95%信頼区間(CI)0.03~0.64)とSPPB(オッズ比1.47,95%CI1.07~2.03),Hb-LSAでもCFS(オッズ比0.11,95%CI0.02~0.59)とSPPB(オッズ比1.91,95%CI1.25~2.92)が有意に関連した。
【考察】本研究の結果より,歩行能力を有した通所リハビリテーション利用者の生活空間には,単変量解析において虚弱,身体能力,サルコペニア,栄養状態に有意差を認めた。また多変量解析において虚弱と身体能力が抽出された。これは疲労・活力の低下,それによる歩行能力低下,活動度低下といった増悪サイクルによるものが考えられる。また虚弱とサルコペニアに関してはその要素として身体能力や栄養状態が密接に関わってくるため,これらを念頭に置いた理学療法の介入が必要である。本研究の限界として,横断的調査であること,対象者数の少なさ,サルコペニア判定の精度,環境や個人因子を含めた検討が挙げられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究により,地域在住要介護および要支援者において,生活空間と虚弱,サルコペニア,栄養状態,身体能力には関連が認められた。これらへの対応は,身体機能やADL等の維持・回復のみならず,地域や社会での参加レベルを見据えた質の高い在宅生活の実現を援助するという点からも,本研究には意義がある。
【方法】対象は,介護保険の通所リハビリテーションを利用する要介護および要支援者55名(男性20名,女性35名,平均年齢82.2±7.0歳)である。対象の介護認定に関する内訳としては,要支援1:6名,要支援2:7名,要介護1:22名,要介護2:15名,要介護3:1名,要介護4:4名であった。除外基準として,歩行が不可である者もしくは,歩行がADL評価のFIMにて4点未満である者,認知機能低下または心身機能低下等により各測定が困難な者とした。測定項目は,サルコペニアの有無,虚弱の程度,栄養状態,身体能力,生活空間を評価した。サルコペニアは,Sanadaら(2012)により開発された推定式による骨格筋量指標(Skeletal Muscle mass Index;SMI),通常歩行速度,握力を求め,European WorkingGroup on Sarcopenia in Older Peopleによるアルゴリズムに則り判定した(SMIのカットオフ値は男性:6.87Kg/m2,女性:5.46Kg/m2を採用)。虚弱は,Clinical Frailty Scale(CFS),栄養状態の評価はMini Nutirition Assessment Short-Form(MNA-SF),身体能力の評価としてShort Physical Performance Battery(SPPB),そして生活空間については,上記の評価1カ月後にlife-space Assessment(LSA),および屋内生活空間をhome-based life-space assessment(Hb-LSA)を実施し,先行研究およびデータの分布等から,各々のカットオフ値を40点,65点とした高活動群と低活動群に分けた。統計学的検討は,各群間の単変量解析,多重ロジスティック回帰分析を用い,生活空間を従属変数とし,単変量解析にて有意差を認めた項目を独立変数として投入した。なお,統計学的検討には統計ソフトR2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】サルコペニアと判定されたのは,25名(男性7名,女性18名)となり,対象者の45%であった。生活空間の平均値はLSA,Hb-LSA各々33.1±13.3,60.0±22.8であった。単変量解析の結果,LSAの高活動群と低活動群では年齢(79.7,83.2,n.s),サルコペニア(3例,22例,p<0.01),CFS(5.1,5.8,p<0.01),MNA-SF(12.3,10.0,p<0.01),SPPB(6.5,3.2,p<0.01)であった。Hb-LSAでは,年齢(81.1,82.8,n.s),サルコペニア(4例,21例,p<0.01),CFS(5.1,5.9,p<0.01),MNA-SF(12.3,9.8,p<0.01),SPPB(6.6,2.8,p<0.01)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,LSAではCFS(オッズ比0.14,95%信頼区間(CI)0.03~0.64)とSPPB(オッズ比1.47,95%CI1.07~2.03),Hb-LSAでもCFS(オッズ比0.11,95%CI0.02~0.59)とSPPB(オッズ比1.91,95%CI1.25~2.92)が有意に関連した。
【考察】本研究の結果より,歩行能力を有した通所リハビリテーション利用者の生活空間には,単変量解析において虚弱,身体能力,サルコペニア,栄養状態に有意差を認めた。また多変量解析において虚弱と身体能力が抽出された。これは疲労・活力の低下,それによる歩行能力低下,活動度低下といった増悪サイクルによるものが考えられる。また虚弱とサルコペニアに関してはその要素として身体能力や栄養状態が密接に関わってくるため,これらを念頭に置いた理学療法の介入が必要である。本研究の限界として,横断的調査であること,対象者数の少なさ,サルコペニア判定の精度,環境や個人因子を含めた検討が挙げられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究により,地域在住要介護および要支援者において,生活空間と虚弱,サルコペニア,栄養状態,身体能力には関連が認められた。これらへの対応は,身体機能やADL等の維持・回復のみならず,地域や社会での参加レベルを見据えた質の高い在宅生活の実現を援助するという点からも,本研究には意義がある。