第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述87

ICU・その他

Sun. Jun 7, 2015 8:30 AM - 9:30 AM 第9会場 (ガラス棟 G409)

座長:瀬崎学(新潟県立新発田病院 リハビリテーション科)

[O-0652] 生体侵襲による入院患者に対する急性期の理学療法

自覚的強度を用いた運動療法

佐野弘毅1,2, 大城昌平3, 佐藤慎2 (1.聖隷浜松病院, 2.聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科, 3.聖隷クリストファー大学大学院)

Keywords:生体侵襲, 自覚的強度, 身体活動

【はじめに,目的】急性期では生体侵襲による異化や低栄養の進行に伴う持久力や筋力の低下が問題となり,理学療法は侵襲による炎症反応や栄養状態の推移を把握した上で安全な運動負荷を行う必要がある。本報告は,感染症患者の急性期理学療法において,侵襲重症度と栄養状態,身体活動強度の推移を検討し,自覚強度を急性期運動療法の指標とすることの意義を検討した。
【方法】60~80歳代の患者10症例(急性肺炎8名,急性腸炎1名,急性化膿性胆管炎1名)を対象とした。運動療法は,「快適強度」と「ややきつい強度」の2種類の歩行運動を行った(「快適だと感じる範囲の速さで歩いて下さい。」「ややきついと感じる範囲の速さで歩いて下さい。」と指示)。歩行速度(m/min),運動時間,運動時のバイタルサイン(血圧,脈拍,Borg scale,呼吸回数,SpO2等)を測定した。また,侵襲重症度の指標としてCRP値,栄養スクリーニングとして入院時アルブミン値,エネルギー摂取率の推移を調査した。栄養アセスメント及び身体機能評価として,体重(BMI),下肢周径,Short Physical Performance Battery Test(SPPB)を測定し,理学療法介入初期と最終で比較を行った。

【結果】運動療法時のバイタルサインにおいて,アンダーソン・土肥の運動療法中止基準に相当する所見はみられなかった。歩行速度・時間ともに10症例とも改善がみられた。侵襲重症度としてCRP値は,初期で6症例で高度上昇,4症例で中等度上昇を示したが,最終で10症例とも低下がみられた。栄養スクリーニングとして,10症例とも入院時アルブミン値は3.8g/dl以下であった。エネルギー摂取率は,初期で10症例とも80%以下であったが,最終では10症例とも90%以上に改善した。栄養アセスメントおよび身体機能について,体重は10症例とも減少したが,下肢周径は維持されていた。SPPB testでは10症例とも改善がみられた。
【考察】自覚強度を指標とした急性期運動療法は,安全かつ継続して実施可能であると共に,生体侵襲による炎症や栄養状態の悪化がみられないと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】生体侵襲を有する患者に対する急性期の理学療法では,自覚強度を聴取しながら運動強度を推定することが有用であろうと考えられた。