[O-0653] 肺炎患者が心不全を合併することで理学療法介入にどのような影響を与えるのか
キーワード:ICU, 肺炎, 心不全
【はじめに,目的】
高齢者の肺炎の死亡率は20%~40%といわれている。高齢者は肺炎にかかりやすく,心不全などの合併症を呈し重症化しやすい。そして,その治療において理学療法介入が難渋し,死亡もしくはADLの低下する症例も少なくない。そこで集中治療室(以下ICU)での肺炎患者に対する理学療法介入の中で,肺炎患者が心不全を合併した場合,理学療法の介入効果にどれほどの影響を与えるのか,特に死亡率,理学療法中のリスク,入院時の重症度,ICUの在日数,在院日数,入退院時のADLに対し後方視的に調査した。
【方法】
ICUで早期理学療法介入を行った肺炎患者65名(81.3±7.4歳,男48名,女17名)に対し,肺炎のみの群(Pneumonia群:以下P群)と肺炎により心不全を合併した群(Pneumonia with Heart failure:以下PH群)に分け比較検討した。死亡率,理学療法中のリスクについてはその割合を調査した。重症度の評価はAPACHEIIscoreを使用した。ADLの評価はFIMを用いた。入院前のFIMと退院時のFIMを評価した。生存者のみ,退院時には入院前のFIMの点数から退院時のFIMの点数を減じたものをFIM変化量として評価,比較した。2群間の背景および評価項目の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。それぞれp<0.05を有意とした。
【結果】
P群は44名(81.05±7.5歳,男36名,女8名),PH群は21名(81.9±7.4歳,男12名,女9名)であった。死亡率はP群で15.9%,PH群で23.8%であった。肺炎後人工呼吸器管理になった割合はP群で22.7%,PH群で42.8%であり,理学療法中の不整脈・血圧低下などのリスクの発生はP群で11.3%,PH群で71.4%であった。入院時の重症度はP群で14.5±4.0,PH群は21.8±4.6であり統計学的に有意な差がみられた。ICUの在日数と在院日数においても有意差がみられ。PH群で期間が延長していた。入院前のFIMはP群で81.3±10.3,PH群で80.9±7.5であり,有意差は見られなかった。生存者のみの比較であるが,退院時のADL変化量はP群で27.3±25.4,PH群で31.9±26.5であり,こちらも有意差は見られなかった。
【考察】
肺炎患者が心不全を合併した場合,死亡率,人工呼吸器管理,理学療法中のリスクが増加するため,より全身的なリスク管理に基づく理学療法の必要性がある。心不全を合併する肺炎患者はその背景に入院時の重症度も高いことがみられた。入院時のFIMの比較について有意差は無く,退院時のFIMの変化量についてもP群とPH群の比較において有意差は無かった。これは,PH群は在院期間が長期にわたるため,理学療法実施期間も長く,それがADL能力の回復に影響を与えたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
肺炎患者が心不全を合併した場合,通常の肺炎と比較し理学療法中のリスクが増加し,ICU管理期間,在院期間が長期にわたるため,そこに留意した理学療法の展開が重要であると考える。超高齢化社会を迎え肺炎患者に対しても呼吸器だけでなく循環器の知識も持ち,理学療法に臨む時代が到来したと考える。
高齢者の肺炎の死亡率は20%~40%といわれている。高齢者は肺炎にかかりやすく,心不全などの合併症を呈し重症化しやすい。そして,その治療において理学療法介入が難渋し,死亡もしくはADLの低下する症例も少なくない。そこで集中治療室(以下ICU)での肺炎患者に対する理学療法介入の中で,肺炎患者が心不全を合併した場合,理学療法の介入効果にどれほどの影響を与えるのか,特に死亡率,理学療法中のリスク,入院時の重症度,ICUの在日数,在院日数,入退院時のADLに対し後方視的に調査した。
【方法】
ICUで早期理学療法介入を行った肺炎患者65名(81.3±7.4歳,男48名,女17名)に対し,肺炎のみの群(Pneumonia群:以下P群)と肺炎により心不全を合併した群(Pneumonia with Heart failure:以下PH群)に分け比較検討した。死亡率,理学療法中のリスクについてはその割合を調査した。重症度の評価はAPACHEIIscoreを使用した。ADLの評価はFIMを用いた。入院前のFIMと退院時のFIMを評価した。生存者のみ,退院時には入院前のFIMの点数から退院時のFIMの点数を減じたものをFIM変化量として評価,比較した。2群間の背景および評価項目の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。それぞれp<0.05を有意とした。
【結果】
P群は44名(81.05±7.5歳,男36名,女8名),PH群は21名(81.9±7.4歳,男12名,女9名)であった。死亡率はP群で15.9%,PH群で23.8%であった。肺炎後人工呼吸器管理になった割合はP群で22.7%,PH群で42.8%であり,理学療法中の不整脈・血圧低下などのリスクの発生はP群で11.3%,PH群で71.4%であった。入院時の重症度はP群で14.5±4.0,PH群は21.8±4.6であり統計学的に有意な差がみられた。ICUの在日数と在院日数においても有意差がみられ。PH群で期間が延長していた。入院前のFIMはP群で81.3±10.3,PH群で80.9±7.5であり,有意差は見られなかった。生存者のみの比較であるが,退院時のADL変化量はP群で27.3±25.4,PH群で31.9±26.5であり,こちらも有意差は見られなかった。
【考察】
肺炎患者が心不全を合併した場合,死亡率,人工呼吸器管理,理学療法中のリスクが増加するため,より全身的なリスク管理に基づく理学療法の必要性がある。心不全を合併する肺炎患者はその背景に入院時の重症度も高いことがみられた。入院時のFIMの比較について有意差は無く,退院時のFIMの変化量についてもP群とPH群の比較において有意差は無かった。これは,PH群は在院期間が長期にわたるため,理学療法実施期間も長く,それがADL能力の回復に影響を与えたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
肺炎患者が心不全を合併した場合,通常の肺炎と比較し理学療法中のリスクが増加し,ICU管理期間,在院期間が長期にわたるため,そこに留意した理学療法の展開が重要であると考える。超高齢化社会を迎え肺炎患者に対しても呼吸器だけでなく循環器の知識も持ち,理学療法に臨む時代が到来したと考える。