第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述89

臨床教育

Sun. Jun 7, 2015 8:30 AM - 9:30 AM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:平野孝行(名古屋学院大学 リハビリテーション学部理学療法学科)

[O-0664] 専門職連携に必要な行動特性

―「他職種と協働するための実践力」と「連携を促進する実践力」との関係―

塩澤和人 (日本リハビリテーション専門学校)

Keywords:専門職連携, 行動特性, 病院勤務

【はじめに,目的】
医療分野における専門職による連携は重要である。連携に必要な実践力として,①他職種と協働するための基本となる力,②連携を促進しチームを動かす力があることが示されている(大塚:2011)。臨床では「他職種の尊重と自らの専門性を発揮すること」が重要であり,これは①他職種と協働するための基本となる力であると考える。より良いチーム医療サービスを提供するために連携に必要な行動特性の検討が必要である。
そこで本研究では,課題別に「他職種と協働するための基本的な実践力」と「連携を促進しチームを動かす実践力」との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,療養病床,回復期リハビリテーション病棟,認知症病棟を有するA病院の保健医療福祉関連の専門職191名とした。対象者には自記式質問紙による専門職連携に関する調査を実施した。調査では連携可能と思わる4つの課題(患者のゴール(目標)設定,退院支援,褥瘡予防,転倒・転落予防)を設定し,課題毎に連携内容(①職種個別(カンファレンス以外)の情報交換(収集・伝達),②カンファレンスでの意見交換,③カンファレンス等でのコーディネート(調整),④チームの目標・計画の共有,⑤明確な役割分担,⑥協働作業の共有化,⑦チーム活動のリフレクション(振り返り))について必要性が高いと思うものから順番(1~7)をつけさせた。また,課題全体を通じた調査として専門職連携実践力自己評価票(大塚:2011)を使用し連携に必要な行動特性を調査した。本評価票は専門職連携に関する実践力について8要素37項目で構成され,回答は「4:している,3:時々している,2:あまりしていない,1:していない」の4件法とした。
分析方法について,「他職種と協働するための基本的な実践力(以下,基本的実践力)」と「連携を促進しチームを動かす実践力(以下,応用的実践力)」の関係を明らかにするために,必要性が高いと思うものから順番をつけた6つの行動内容を基本的実践力群と応用的実践力群の2群に分類,2群における課題毎の中央値を比較した(Wilcoxonの符号付き順位検定)。有意水準は5%とした。また,協働するための実践力を検討するために,専門職連携実践力自己評価票のうち,パートナーシップ(5項目)とコミュニケーション(10項目)の4件法の割合を算出した。
【結果】
調査票の配布数191名に対し,回収数は135件(回収数70.7%)であった。「基本的実践力」と「応用的実践力」の比較では,4課題とも「基本的実践力」の方が「応用的実践力」より有意に低い得点(必要性が高い)を示した(p<0.05)。
専門職連携実践力自己評価票のパートナーシップ(5項目)について,回答者の8割超の者が他の専門職に対して『対等な仲間として尊重する』,『立場や状況を考慮して行動する』,『立場や状況を知ろうとする』行為を実施していたが,『自分の立場や状況を伝える』,『役割分担する』行為は7割前後であった。同評価票のコミュニケーション(10項目)について,回答者の8~9割の者が患者の情報を『聞く』,『伝える』,『相談し合う』というコミュニケーション行動をとっていたが,『アセスメントのやり取り』や『変化に関する話し合い』は6割,『交渉』,『議論』,『納得できるまで話し合う』は5割超にとどまった。
【考察】
連携に必要な行動について,4課題とも「基本的実践力」の方が「応用的実践力」より有意に低い得点(必要性が高い)を示した。このことより,連携に必要な行動特性は,課題の種類に関係なく“連携を促進しチームを動かす力”よりも“他職種と協働するための基本的な力”すなわち「他の専門職を尊重しながら,自らの専門性を発揮すること」がより必要性が高いことが示された。
実際の行動について,8割超と多くの回答者が他者を尊重し,理解しようと努めていたが,自分を知ってもらう行為や役割分担は7割前後であった。また,患者の情報を伝える,聞く,相談する行為は8~9割の回答者が行っていたが,アセスメントのやり取りや交渉および議論するという行為は5~6割であることが明らかとなった。このことより,他者の尊重については概ね実施されていたが,自らの専門性を発揮することや交換した情報を深めることは十分でなく,これらの強化が必要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士を含む保健医療福祉の専門職が他職種と連携していく上で,必要性の高い行動内容が示されたことに意義がある。