第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述89

臨床教育

Sun. Jun 7, 2015 8:30 AM - 9:30 AM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:平野孝行(名古屋学院大学 リハビリテーション学部理学療法学科)

[O-0666] 理学療法分野専攻学生に対する段階的IPEプログラムの教育効果

下井俊典1, 福島道子2, 小町祐子2, 加藤尚子3, 小嶋章吾3, 齋藤智恵4 (1.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科, 2.国際医療福祉大学保健医療学部, 3.国際医療福祉大学医療福祉学部, 4.国際医療福祉大学総合教育センター語学教育部)

Keywords:多職種間教育, 段階的IPEプログラム, 教育効果

【はじめに,目的】
国際医療福祉大学(大田原キャンパス)は3学部8学科(理学療法,看護,作業療法,言語聴覚,放射線・情報科学,視機能療法,薬,医療福祉・マネジメント)を要した,医療福祉の総合大学である。同大学では現在,2年次から4年次まで3年間の多職種間教育(Inter-Professional Education;IPE)プログラムを展開している。うち4年次のIPEプログラムである「関連職種連携実習」ではキャンパス内全8学科9分野の学生がチームを形成し,3つのステップからなる「段階的プログラム」となっている。最初のステップは,模擬患者へのケアプランを作成する3週間の学内演習(事前演習)である。その後2つ目のステップとして,実際に医療現場で直接対象患者に接してケアプランを作成する1週間の臨床実習(本実習)に展開する。本実習後,実習内容を省察(リフレクション)し,ケアプラン内容を再考し多くの他学生に向けて発表する実習報告会が最後のステップである。本研究の目的はこの「関連職種連携実習」の各ステップが,理学療法分野専攻学生の他分野学生との協同学習,自・他職種理解,多職種連携の理解に及ぼす教育効果を明らかにすることである。
【方法】
同実習の教育効果の評価には,複数の先行研究で使用されている“Readiness for Interprofessional Learning Scale(RIPLS)”と“Interdisciplinary Education Perception Scale(IEPS)”とを用いた。まず両評価尺度を邦訳し,日本語版評価尺度を作成した。その後平成25年度に同実習履修者164名(理学療法学科所属学生18名を含む)を対象として,事前実習前,本実習前,本実習直後,実習報告会直後の4回について両日本語版評価尺度を用いて評価した。統計学的検討方法は,反復測定一元配置分散分析ならびにFriedman検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
同実習履修者164名中全4回の評価結果が得られた者がRIPLS,IEPSそれぞれ95名,98名であったため,今回の解析はこれらのデータを対象とした。RIPLSについては事前演習前に比べて事前演習直後・本実習直後・実習報告会後で有意に高値となった(p<0.05)。学科別では全9分野中理学療法学科を含む8分野で最終的に有意差を認めた(p<0.05)。対してIEPSは実習前に比べて事前演習直後・本実習直後・実習報告会後で有意に高値となったとともに,本実習直後・実習報告会後は事前演習直後と比べても有意に高値となった(p<0.05)。学科別では,9分野中理学療法学科を含む4分野のみで最終的な有意差を認めたものの,他の5分野では有意差が認められなかった。
【考察】
RIPLSもIEPSもIPEの教育効果に関する評価尺度であるが,前者が他分野の学生との協同学習に関する設問であることから,学生全体としては,他分野の学生と一緒に学ぶことの重要性に関しては事前演習で学修される部分が大きいことが推察される。対して後者は自職種と自・多職種間のIPC(Interprofessional Collaboration;多職種間協業)についての設問であることから,自・他職種間のIPCについては事前演習で学修され,さらに本実習でその学修が促進されたことを示唆している。しかし分野別の検討では,理学療法学科所属の学生はいずれの評価尺度についても実習報告会で学習効果が認められた。この理由として,実習後のリフレクションの効果や,いずれの評価尺度についてもレディネスの状態が良好なため実習前のスコアが高値で実習によりスコアが上昇しにくいことも考えられたが,その他の分野も含めて分野別スコアのばらつきが大きく,学修レベルの検討に関しては分野別よりも学生別の方が適切であることが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
近年,理学療法士の養成課程においても,自職種だけでなく多職種の役割を理解し,それらによるのIPCを実践できる専門職としての教育プログラムはもはや当然なものとなってきている。具体的なプログラム内容として,今回提案する「段階的プログラム」の教育効果が明らかとなった。しかし,プログラムによる教育効果の検討については分野別よりも学生の多様性を考慮すべきであると考えられる。