第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述89

臨床教育

Sun. Jun 7, 2015 8:30 AM - 9:30 AM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:平野孝行(名古屋学院大学 リハビリテーション学部理学療法学科)

[O-0669] 理学療法士・作業療法士による青年海外協力隊活動に関する調査報告

知脇希 (帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科)

Keywords:青年海外協力隊, 理学療法士, 作業療法士

【はじめに,目的】
理学療法士の国際協力では,青年海外協力隊の活動が多く報告されている。しかし,網羅的に調査を実施したものは,平成10年に日本理学療法士協会が実施した「理学療法士青年海外協力隊アンケート調査報告書」以来見当たらない。このため,理学療法士(以下PT)・作業療法士(以下OT)青年海外協力隊(以下協力隊)として派遣され帰国した隊員へWEB調査を実施した。国際協力機構のボランティア事業の目的は,「開発途上国の経済・社会の発展,復興への寄与」「友好親善,相互理解の深化」「ボランティア経験の社会還元」である。本研究では,この指標に添った主観的評価の結果と,派遣中と派遣後の活動について報告を行う。
【方法】
協力隊経験者2名にインタビューを実施し,質問紙調査票を作成した。調査はWEB調査とした。平成26年1月31日現在帰国している協力隊経験者は639名(PT373名,OT266名)であった。国際協力機構青年海外協力隊事務局に協力を仰ぎ,事務局から調査依頼と調査実施のURLを記載したEメールを送信した。事務局にEメールアドレスを登録している者は269名(PT144名,OT125名)であったが11名は送信できず,258名に送信した。加えて,協力隊経験者全員に送付されている季刊広報媒体「協力隊かわら版」と,PT・OTを中心とした協力隊経験者の会「JOCVリハビリテーションネットワーク」メーリングリストでの調査協力の呼びかけを行った。筆者に連絡を頂いた17名へは,調査実施のURLを個別に送信した。WEB調査期間は平成26年3月3日から3月30日とした。
【結果】
平成26年1月31日現在までの協力隊派遣で最も派遣人数が多いのは,国別ではマレーシア(PT29名,OT40名),地域別ではアジア地域(PT128名,OT118名)であった。
回答者は111名(帰国者を母数とした場合回答率17.3%,調査URL送付を母数とした場合40.4%)であった。
回答者の属性をみると,職種はPT59名(53.2%),OT52名(46.8%),性別は,男性37.8%,女性62.2%,派遣時年齢平均値は28.0歳,現在の年齢平均値は35.5歳であった。派遣時の経験年数平均値は5.2年,現在は12.2年であった。隊次は,平成21年度が最も多かった(18名)。
活動先を見ると,配属先は病院27.0%,経営母体は公立65.8%,配属先の従業員数は1~29人51.4%が最も多かった。PTは病院,OTは小児施設の派遣が最も多く,配属先が病院又は福祉施設であった者の1日当たり担当患者数平均は8.1(最小値1,最大値25,中央値6)人であった。技術移転に関する設問をみると,カウンターパートがいた者は89.5%,勉強会を開催した者は79.3%,研修会に参加した者は70.3%であった。友好親善に関する設問をみると,派遣中任国の友人宅を訪問した者は97.3%,協力隊員と協力してイベントを開催した者は68.5%であった。社会還元に関する設問をみると,帰国後も任国への支援を行っている者は18.9%であった。協力隊参加後に災害ボランティアに参加した者は37.8%,その他のボランティア活動に参加したものは25.2%であった。
主観的評価は5段階で尋ねた。各設問で「あてはまる」「ややあてはまる」を合わせた割合は,「任国のリハビリテーションの発展に寄与した」41.4%,「任国の障害者の生活改善に寄与した」48.6%,「任国と日本の友好親善に貢献した」81.0%,「任国と日本の相互理解を深めた」82.9%,「ボランティア経験を社会へ還元している」54.0%であった。
【考察】
協力隊事業の対象年齢は20歳から39歳までであるが,派遣時の年齢平均は28歳,経験年数は5年と若くして参加するものが多いようだ。派遣先は,公立の小規模施設が多かった。
技術移転の機会として期待できる勉強会を開催している者が多いが,主観的評価をみると,友好親善や相互理解は約8割が貢献したと考えているものの,「任国のリハビリテーションの発展に寄与した」の肯定的回答は約4割と低く,技術移転が困難であったことが推察される。これは,PT・OTの活動の場が病院や小児施設が中心であること,また任国からの要請を受け草の根レベルで活動していることが関係していると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
PT・OTの協力隊活動は,事例報告や国別分析が多い。本研究は総合的に分析を行った点に,意義があると考える。