[O-0670] 機能的片麻痺起居動作評価表(FAHR)の開発と信頼性及び妥当性の検証
Keywords:評価表, 信頼性, 妥当性
【はじめに,目的】
寝返り,起き上がり,そして起立といった起居動作は,座位や立位での活動や移動への変換過程として必要不可欠な動作である。この起居動作を含む諸動作の遂行能力を評価するものとして,Rivermead Mobility Index(RMI)やFunctional Moter Scale(FMS)などがあり,その信頼性や妥当性が報告されている。我々は,寝返り,起き上がり,起立動作時の各関節・部位の運動機能を評価する評価表(Functional Assessment for Hemiplegic Rising and Transfer Motions:FAHR)を開発した。本研究の目的は,FAHRの信頼性及び妥当性を検証することである。
【方法】
1.FAHRの信頼性の検証
検者は経験年数1年目~10年目までの15名の理学療法士とした。検査対象は,2名の脳卒中片麻痺(片麻痺)者であった(屋内歩行修正自立レベルと屋外歩行修正自立レベル,ともに寝返り・起き上がり・起立は自立)。FAHRの構成は,26項目31点満点である。内訳は,非麻痺側方向への寝返り動作が6項目8点,起き上がり動作(非麻痺側下側臥位から端座位)が8項目8点,起立動作が12項目15点である。各項目は健常動作の特徴を基に,動作遂行時の各関節・部位の運動方向を観察し,2~3段階の基準で判断する。検者は10分程度でFAHRの説明を受け,検査対象者2名の片麻痺者の動画を見ながら,各動作5分間でFAHRにチェックした。統計学的処理は,FAHRの内的整合性はCronbachのα係数にて検証した。検者間信頼性はFAHR総得点については級内相関係数(ICC(2,1))にて,寝返り・起き上がり・起立各点数及び各26項目はkendallの一致係数(W係数)にて検証した。
2.FAHRの妥当性の検証
対象は片麻痺者25名(麻痺側:左10名・右15名,年齢:50歳代~80歳代,平均罹患期間35.7±59.1ヶ月)であった。麻痺側上下肢運動機能はBrunnstrom recovery stage(Br-stage)にて,体幹機能はTrunk control test(TCT)にて採点した。また,寝返り・起き上がり・起立それぞれの自立度を9段階の指標で1点(困難)~9点(自立)にて採点した。そして,基本動作の遂行能力をRMI日本語版にて採点した。統計学的処理は,罹患期間,Br-stage,TCT及び各動作の自立度の合計点,そしてRMI日本語版とFAHR総得点との関連性について,Spearman順位相関係数を用いて解析した。なお,それぞれの項目の評価及び採点は片麻痺者の担当理学療法士が行った。
【結果】
1.FAHRの信頼性の検証
Cronbachのα係数は0.71,FAHR総得点のICC(2,1)は0.96であった。寝返り・起き上がり・起立各点数のW係数はそれぞれ0.93・0.92・0.96(全てp<0.01)であった。各26項目のW係数では,12項目は1(完全一致),その他の12項目は0.27~0.93で,1%及び5%未満で有意差が認められた。起き上がり動作1項目と起立動作の1項目,計2項目は有意差がなかった。
2.FAHRの妥当性の検証
FAHR総得点との相関係数は,上肢Br-stageは0.75,下肢Br-stageは0.71,TCTは0.61,動作自立度は0.63,RMI日本語版は0.59であり,それぞれ1%未満の危険率で相関関係が認められた。
【考察】
FAHRのCronbachのα係数は0.71で,各項目間の一貫性は,概ね良好であった。FAHR総得点のICC(2,1)は0.96,各動作点数のW係数は0.9以上で,極めて良好な検者間信頼性であった。各26項目の検者間信頼性は,12項目において完全一致であった。ただ,起き上がり動作と起立動作の2項目については有意差が認められず,項目の再考が必要である。妥当性の検証に関しては,臨床で一般的に行われているBr-stageだけでなく,動作自立度,そして信頼性及び妥当性が確認されているTCTとRMI日本語版についても相関があった。RMI日本語版そしてFMSは基本動作の遂行能力を評価する。これに対しFAHRは,これまでの評価表にない動作遂行時の各関節・部位の運動方向を観察し点数化する。FAHRが麻痺側上下肢運動機能及び体幹機能と相関があることは予測されたが,動作自立度そしてRMI日本語版にも相関が認められた。動作は各関節・部位の運動によって行われており,FAHRが動作自立度及びRMI日本語版と相関があったことから,FAHRの起居動作評価表としての妥当性は良好であることが示された。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法において,具体的な介入方略を得るには,動作観察が必要となる。ただ,動作観察する際の着目点は理学療法士間で異なるとの指摘もある。FAHRは,信頼性・妥当性とも良好であることが示されたので,理学療法士間で同じ視点で起居動作を観察するための評価表として期待が出来る。
寝返り,起き上がり,そして起立といった起居動作は,座位や立位での活動や移動への変換過程として必要不可欠な動作である。この起居動作を含む諸動作の遂行能力を評価するものとして,Rivermead Mobility Index(RMI)やFunctional Moter Scale(FMS)などがあり,その信頼性や妥当性が報告されている。我々は,寝返り,起き上がり,起立動作時の各関節・部位の運動機能を評価する評価表(Functional Assessment for Hemiplegic Rising and Transfer Motions:FAHR)を開発した。本研究の目的は,FAHRの信頼性及び妥当性を検証することである。
【方法】
1.FAHRの信頼性の検証
検者は経験年数1年目~10年目までの15名の理学療法士とした。検査対象は,2名の脳卒中片麻痺(片麻痺)者であった(屋内歩行修正自立レベルと屋外歩行修正自立レベル,ともに寝返り・起き上がり・起立は自立)。FAHRの構成は,26項目31点満点である。内訳は,非麻痺側方向への寝返り動作が6項目8点,起き上がり動作(非麻痺側下側臥位から端座位)が8項目8点,起立動作が12項目15点である。各項目は健常動作の特徴を基に,動作遂行時の各関節・部位の運動方向を観察し,2~3段階の基準で判断する。検者は10分程度でFAHRの説明を受け,検査対象者2名の片麻痺者の動画を見ながら,各動作5分間でFAHRにチェックした。統計学的処理は,FAHRの内的整合性はCronbachのα係数にて検証した。検者間信頼性はFAHR総得点については級内相関係数(ICC(2,1))にて,寝返り・起き上がり・起立各点数及び各26項目はkendallの一致係数(W係数)にて検証した。
2.FAHRの妥当性の検証
対象は片麻痺者25名(麻痺側:左10名・右15名,年齢:50歳代~80歳代,平均罹患期間35.7±59.1ヶ月)であった。麻痺側上下肢運動機能はBrunnstrom recovery stage(Br-stage)にて,体幹機能はTrunk control test(TCT)にて採点した。また,寝返り・起き上がり・起立それぞれの自立度を9段階の指標で1点(困難)~9点(自立)にて採点した。そして,基本動作の遂行能力をRMI日本語版にて採点した。統計学的処理は,罹患期間,Br-stage,TCT及び各動作の自立度の合計点,そしてRMI日本語版とFAHR総得点との関連性について,Spearman順位相関係数を用いて解析した。なお,それぞれの項目の評価及び採点は片麻痺者の担当理学療法士が行った。
【結果】
1.FAHRの信頼性の検証
Cronbachのα係数は0.71,FAHR総得点のICC(2,1)は0.96であった。寝返り・起き上がり・起立各点数のW係数はそれぞれ0.93・0.92・0.96(全てp<0.01)であった。各26項目のW係数では,12項目は1(完全一致),その他の12項目は0.27~0.93で,1%及び5%未満で有意差が認められた。起き上がり動作1項目と起立動作の1項目,計2項目は有意差がなかった。
2.FAHRの妥当性の検証
FAHR総得点との相関係数は,上肢Br-stageは0.75,下肢Br-stageは0.71,TCTは0.61,動作自立度は0.63,RMI日本語版は0.59であり,それぞれ1%未満の危険率で相関関係が認められた。
【考察】
FAHRのCronbachのα係数は0.71で,各項目間の一貫性は,概ね良好であった。FAHR総得点のICC(2,1)は0.96,各動作点数のW係数は0.9以上で,極めて良好な検者間信頼性であった。各26項目の検者間信頼性は,12項目において完全一致であった。ただ,起き上がり動作と起立動作の2項目については有意差が認められず,項目の再考が必要である。妥当性の検証に関しては,臨床で一般的に行われているBr-stageだけでなく,動作自立度,そして信頼性及び妥当性が確認されているTCTとRMI日本語版についても相関があった。RMI日本語版そしてFMSは基本動作の遂行能力を評価する。これに対しFAHRは,これまでの評価表にない動作遂行時の各関節・部位の運動方向を観察し点数化する。FAHRが麻痺側上下肢運動機能及び体幹機能と相関があることは予測されたが,動作自立度そしてRMI日本語版にも相関が認められた。動作は各関節・部位の運動によって行われており,FAHRが動作自立度及びRMI日本語版と相関があったことから,FAHRの起居動作評価表としての妥当性は良好であることが示された。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法において,具体的な介入方略を得るには,動作観察が必要となる。ただ,動作観察する際の着目点は理学療法士間で異なるとの指摘もある。FAHRは,信頼性・妥当性とも良好であることが示されたので,理学療法士間で同じ視点で起居動作を観察するための評価表として期待が出来る。