[O-0671] 入院中の回復期脳卒中患者における3軸加速度計付活動量計で測定した日中の活動量と理学療法中の活動量の関係
キーワード:回復期, 脳卒中, 身体活動量
【はじめに,目的】
脳卒中入院患者において,理学療法(PT)や作業療法といったリハビリテーション(リハ)とともに院内生活全体の活動量を高めることは,リハの効果を加速させ,効率的・効果的に生活機能改善を図るために重要であることが知られている。しかし,脳卒中入院患者の身体活動量を定量的に評価する方法の検証は不十分であり,その実態に関する報告は乏しく,リハでの活動量が日中全体の活動量へどのように反映されるかについては十分に検証されていない。本研究では3軸加速度計付き活動量計を用いて脳卒中入院患者の身体活動量を調査し,測定の信頼性を検討するとともに,日中の身体活動量と理学療法(PT)中の身体活動量との関連について検証することを目的とした。
【方法】
回復期リハ病棟入院後1か月の初発脳卒中患者19人(平均年齢68±12歳)を対象に,3軸加速度計付き活動量計(OMRON社製HJA-350IT)を用いて,日中7時から19時までの12時間/日におけるMetabolic equivalents(METs)を連続14日間,60秒ごとに測定した。活動量計の装着部位は対象者の腰部とし,1.0-1.5METs(sedentary behavior(SB)),1.6-2.9METs(light-intensity physical activity(LIPA)),3.0METs以上(moderate-to-vigorous-intensity physical activity(MVPA))の3つの活動強度の活動実施時間を測定した。得られたデータをもとにから,7時から19時までの日中12時間における各活動強度の合計時間(日中SB,日中LIPA,日中MVPA)および,PT実施中の各活動強度の合計時間(PT-SB,PT-LIPA,PT-MVPA)を14日分算出した。
【結果】
日中SB,日中LIPA,日中MVPA,PT-SB,PT-LIPA,PT-MVPAの測定開始後7日間の測定値の級内相関係数(ICC)を算出した結果,各指標でICC(1,1)=0.466~0.798(1,7)=0.859~0.965と,ICC(1,7)で高い値を示した。また,各指標における測定開始後1~7日(1週目)と測定開始後8~14日(2週目)の各平均値のICCは,ICC(1,1)=0.842~0.955,ICC(1,2)=0.914~0.977と高かった。日中の身体活動量について一元配置分散分析および多重比較検定(Bonferroni法)にて活動強度別で比較した結果,日中SB(351.8±70.6分),日中LIPA(118.49±53.5分),日中MVPA(9.3±11.8分)の順で有意に高かった。また,PT実施中の身体活動量を活動強度で比べた結果,PT-MVPA(5.6±10.4分)がPT-SB(36.6±17.1分)またはPT-LIPA(26.3±15.9分)と比べて有意に低かった。日中およびPT実施中の各活動強度別時間の関係についてPearson相関係数を算出した結果,PT-SBと日中MVPAとの間に中等度の負の相関(r=-0.634),日中MVPAとPT-MVPAとの間に高い正の相関(r=0.959)が認められた。
【考察】
1週間における各測定値の再現性はICC(1,1)では不十分であり,ICC(1,7)では臨床的に有用とされる高い値を示し,連続した2週間での再現性が高かった。脳卒中入院患者の身体活動量を3軸加速度計付き活動量計にて測定し,個人の活動量の代表値となる中心傾向を評価するためには,1日のみではなく7日間連続測定した測定値の平均を代表値として用いることが有用であると考えられた。また,座位保持程度の活動強度である日中SBは日中12時間の約50%以上を占め,一方で3METs以上の活動強度である日中MVPAは日中12時間の2%程度であったことから,脳卒中入院患者における日中の院内活動が非常に低強度であることが示唆された。さらに,日中MVPAとPT-SB,日中MVPAとPT-MVPAとの間に正の相関が認められたことから,PT実施中の活動強度が,日中の高強度活動量の多寡に反映されていると推察された。
【理学療法学研究としての意義】
3軸加速度計付き活動量計を用いて回復期脳卒中入院患者の院内生活での身体活動量の中心傾向を精度よく記述する方法を提示するとともに,日中の高強度活動量の多寡にPT実施中の活動強度の高低が反映されている可能性を示唆した。
脳卒中入院患者において,理学療法(PT)や作業療法といったリハビリテーション(リハ)とともに院内生活全体の活動量を高めることは,リハの効果を加速させ,効率的・効果的に生活機能改善を図るために重要であることが知られている。しかし,脳卒中入院患者の身体活動量を定量的に評価する方法の検証は不十分であり,その実態に関する報告は乏しく,リハでの活動量が日中全体の活動量へどのように反映されるかについては十分に検証されていない。本研究では3軸加速度計付き活動量計を用いて脳卒中入院患者の身体活動量を調査し,測定の信頼性を検討するとともに,日中の身体活動量と理学療法(PT)中の身体活動量との関連について検証することを目的とした。
【方法】
回復期リハ病棟入院後1か月の初発脳卒中患者19人(平均年齢68±12歳)を対象に,3軸加速度計付き活動量計(OMRON社製HJA-350IT)を用いて,日中7時から19時までの12時間/日におけるMetabolic equivalents(METs)を連続14日間,60秒ごとに測定した。活動量計の装着部位は対象者の腰部とし,1.0-1.5METs(sedentary behavior(SB)),1.6-2.9METs(light-intensity physical activity(LIPA)),3.0METs以上(moderate-to-vigorous-intensity physical activity(MVPA))の3つの活動強度の活動実施時間を測定した。得られたデータをもとにから,7時から19時までの日中12時間における各活動強度の合計時間(日中SB,日中LIPA,日中MVPA)および,PT実施中の各活動強度の合計時間(PT-SB,PT-LIPA,PT-MVPA)を14日分算出した。
【結果】
日中SB,日中LIPA,日中MVPA,PT-SB,PT-LIPA,PT-MVPAの測定開始後7日間の測定値の級内相関係数(ICC)を算出した結果,各指標でICC(1,1)=0.466~0.798(1,7)=0.859~0.965と,ICC(1,7)で高い値を示した。また,各指標における測定開始後1~7日(1週目)と測定開始後8~14日(2週目)の各平均値のICCは,ICC(1,1)=0.842~0.955,ICC(1,2)=0.914~0.977と高かった。日中の身体活動量について一元配置分散分析および多重比較検定(Bonferroni法)にて活動強度別で比較した結果,日中SB(351.8±70.6分),日中LIPA(118.49±53.5分),日中MVPA(9.3±11.8分)の順で有意に高かった。また,PT実施中の身体活動量を活動強度で比べた結果,PT-MVPA(5.6±10.4分)がPT-SB(36.6±17.1分)またはPT-LIPA(26.3±15.9分)と比べて有意に低かった。日中およびPT実施中の各活動強度別時間の関係についてPearson相関係数を算出した結果,PT-SBと日中MVPAとの間に中等度の負の相関(r=-0.634),日中MVPAとPT-MVPAとの間に高い正の相関(r=0.959)が認められた。
【考察】
1週間における各測定値の再現性はICC(1,1)では不十分であり,ICC(1,7)では臨床的に有用とされる高い値を示し,連続した2週間での再現性が高かった。脳卒中入院患者の身体活動量を3軸加速度計付き活動量計にて測定し,個人の活動量の代表値となる中心傾向を評価するためには,1日のみではなく7日間連続測定した測定値の平均を代表値として用いることが有用であると考えられた。また,座位保持程度の活動強度である日中SBは日中12時間の約50%以上を占め,一方で3METs以上の活動強度である日中MVPAは日中12時間の2%程度であったことから,脳卒中入院患者における日中の院内活動が非常に低強度であることが示唆された。さらに,日中MVPAとPT-SB,日中MVPAとPT-MVPAとの間に正の相関が認められたことから,PT実施中の活動強度が,日中の高強度活動量の多寡に反映されていると推察された。
【理学療法学研究としての意義】
3軸加速度計付き活動量計を用いて回復期脳卒中入院患者の院内生活での身体活動量の中心傾向を精度よく記述する方法を提示するとともに,日中の高強度活動量の多寡にPT実施中の活動強度の高低が反映されている可能性を示唆した。