第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述90

脳損傷理学療法13

Sun. Jun 7, 2015 8:30 AM - 9:30 AM 第12会場 (ガラス棟 G701)

座長:潮見泰藏(杏林大学 保健学部理学療法学科)

[O-0672] 脳卒中片麻痺患者における麻痺側膝伸展筋力の経時的変化

石野洋祐, 武田祐貴, 石川啓太, 土門遼次, 釘本充, 杉山俊一 (特定医療法人柏葉脳神経外科病院)

Keywords:脳卒中, 麻痺側膝伸展筋力, 経時的変化

【はじめに,目的】
脳卒中患者の麻痺側膝伸展筋力は,最大歩行速度を決定する重要な因子であり,理学療法により改善することが知られている。一般に,脳卒中の機能回復は発症早期ほど回復が良好であり,時間の経過とともに緩徐なものとなることが知られている。しかしながら,これらの報告は動作能力やADL能力を回復の指標としたものが多く,麻痺側膝伸展筋力の経時的変化についての報告はみられない。本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者における麻痺側膝伸展筋力の経時的変化を測定し,発症からプラトーに到達する時期を特定することである。
【方法】
対象は当院入院中の初発脳卒中片麻痺患者とした。取り込み基準は予測されるリスクを軽減する為に,急性期を脱した発症3週以内に筋力測定が可能であった症例とした。
筋力の測定はハンドヘルドダイナモメーター(μTasF-100,アニマ社)を使用し,山崎らの方法で麻痺側の膝伸展筋力を2回測定したうち,最大値を採択した。得られた測定値と体重から膝伸展筋力体重比(kgf/Wt×100)を算出した。測定は,初回の測定より2週間隔で5週時,7週時,9週時の計4回実施した。除外基準は,再発や両側性の麻痺を有している症例,重篤な骨関節疾患,高次脳機能障害や認知症により指示に従えない症例とした。統計学的分析は,反復測定による一元配置分散分析を用い,post hoc testとしてTukey法を用いた。解析はIBM SPSS Statisticsを用い,5%を有意水準とした。
【結果】
対象は39名(脳出血14名,脳梗塞25名,男性23名,女性16名,平均年齢66.1±13.0歳)で,発症から初回測定までの日数は平均14.4±5.4日,測定時の下肢Brunnstrom recovery stageはIII 9名,IV16名,V10名,VI4名,mFIMは平均44.3±14.4点であった。麻痺側膝伸展筋力体重比の各々の平均値は3週時13.6±9.7%,5週時22.4±12.9%,7週時26.7±14.1%,9週時29.1±14.3%であった。麻痺側膝伸展筋力体重比は3週時から5週時までは有意に増加(P=0.02)し,5週時以降に有意差は認められなかった(5-7週時P=0.46,7-9週時P=0.84)。
【考察】
結果から,麻痺側膝伸展筋力は発症から5週時までにプラトーに到達することが示唆された。Duncanらは中等度の脳卒中においてFugl-Meyer Assessmentを指標とした下肢機能の回復は3ヶ月程度持続するとしており,本研究の結果と比較すると麻痺側筋力の増加は下肢機能の中でもより早期にプラトーに到達する可能性がある。即ち,本研究の結果は,麻痺側下肢筋力への介入期間や理学療法プログラム立案の一助となり得る。今後は,運動麻痺の重症度による細分化や運動負荷量との関連について明らかにする必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺患者の麻痺側膝伸展筋力が,発症から5週時までにプラトーへ到達することが明らかとなった。本研究の結果は,麻痺側下肢筋力への介入期間や理学療法プログラム立案への一助となり得る。