[O-0675] 在宅脳卒中片麻痺患者における質問紙による身体活動量評価方法の検討
~Life Space AssessmentとInternational Physical Activity Questionnaire
の比較~
キーワード:脳卒中, 身体活動量, 質問紙
【はじめに,目的】
平成25年度の国民生活基礎調査によると,要介護の原因疾患の第一位は脳血管疾患となっており,脳血管疾患後遺症の患者に対する身体機能及び日常生活動作能力の獲得・維持・向上は,理学療法士にとって重要な課題である。在宅脳卒中片麻痺患者における,身体機能及び日常生活動作能力の維持・向上のためには,日々の生活における身体活動量が重要であると報告されている。このため,日々の身体活動量の適切な評価と,評価に基づいた理学療法介入が必要である。身体活動量を簡便に評価する質問紙として,Life Space Assessment(以下,LSA)がある。LSAは,身体活動量を生活空間の広がりとして捉えて評価する質問紙であり,在宅脳卒中片麻痺患者にも広く用いられている。一方,WHOのワーキンググループは,身体活動量を簡便に評価するための国際的な質問紙として,International Physical Activity Questionnaire(以下,IPAQ)を開発した。IPAQは,身体活動量を消費カロリーとして算出できる点が特徴である。LSAとIPAQは,どちらも身体活動量を簡便に評価可能な質問紙であるが,その質問内容が大きく異なるため,在宅脳卒中片麻痺患者における妥当性には相違があると考えられる。また,LSAとIPAQの関連性に関する検討はこれまでになされていない。よって,本研究の目的は,LSA及びIPAQの妥当性を加速度計によって測定された身体活動量との比較から検討することと,二つの質問紙の関連性を明らかにすることである。
【方法】
対象者は,当院外来リハビリテーションに通う脳卒中片麻痺患者の内,杖や装具の使用は問わず歩行が自立しており,本研究に同意が得られた13名とした(63.3±8.3歳:発症からの期間82.7±66.0ヶ月:男性9名,女性4名:脳梗塞4名,脳出血8名,くも膜下出血1名:下肢Br.Stage III-2名,IV-8名,V-3名)。なお,MMSE23点以下の者,記憶障害を有する者,重篤な合併症を有する者は除外した。対象者には,ライフコーダGS(スズケン社製。以下,LC)を一週間貸し出し,就寝時と入浴時以外は常に装着するように依頼した。また,対象者には,LC回収時に簡単な質問紙を実施することのみを事前に伝えた。その後,LC回収時にIPAQ及びLSAの解答を面接にて得た。なお,本研究では患者負担を考慮し,IPAQは短縮版を使用した。LCに記録されたデータの内,貸し出し日と回収日を除く6日間のデータより,一日の平均消費カロリー(LC消費カロリー)と一日の平均歩数を算出した。IPAQ日本語版から得られた解答より,マニュアルに従い一日の平均消費カロリーを算出した(IPAQ消費カロリー)。また,LSAも合計得点を算出した(LSAスコア)。統計学的な解析は,妥当性の検討を目的に,IPAQ消費カロリー及びLSAスコアと,LC消費カロリーに関して各々でPearsonの相関係数を算出した。また,IPAQ消費カロリー及びLSAスコアと,平均歩数に関しても各々でPearsonの相関係数を算出した。さらに,LSAスコアとIPAQ消費カロリーに関しても,Pearsonの相関係数を算出した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
LC消費カロリーとIPAQ消費カロリーの間には,r=0.583(p<0.05)の中等度の有意な相関が認められた。また,LC消費カロリーとLSAスコアの間にも,r=0.579(p<0.05)の中等度の有意な相関が認められた。さらに,歩数とIPAQ消費カロリーの間にも,r=0.687(p<0.05)の中等度の有意な相関が認められた。一方,歩数とLSAスコアの間には,有意な相関が認められなかった。さらに,LSAスコアとIPAQ消費カロリーの間にも,有意な相関は認められなかった。
【考察】
本研究の結果より,歩行が自立しており,認知・記憶能力に障害がない在宅脳卒中片麻痺患者においては,IPAQとLSA共に同程度の妥当性がある可能性が示された。一方,歩数との有意な相関は,IPAQ消費カロリーのみに認められたことから,身体活動量の中でも歩行量に関する評価には,LSAと比較してIPAQの方が適している可能性が示唆された。また,LSAスコアとIPAQ消費カロリーに相関が見られなかったことから,二つの質問紙は身体活動量の異なる側面を評価している可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
在宅脳卒中片麻痺患者における身体活動量を簡便に評価する方法の適切な選択と使用は,退院後の身体機能・ADL能力の維持を目的とする理学療法介入のために,重要な課題である。その点で,本研究は理学療法研究として大変意義深いと言える。
平成25年度の国民生活基礎調査によると,要介護の原因疾患の第一位は脳血管疾患となっており,脳血管疾患後遺症の患者に対する身体機能及び日常生活動作能力の獲得・維持・向上は,理学療法士にとって重要な課題である。在宅脳卒中片麻痺患者における,身体機能及び日常生活動作能力の維持・向上のためには,日々の生活における身体活動量が重要であると報告されている。このため,日々の身体活動量の適切な評価と,評価に基づいた理学療法介入が必要である。身体活動量を簡便に評価する質問紙として,Life Space Assessment(以下,LSA)がある。LSAは,身体活動量を生活空間の広がりとして捉えて評価する質問紙であり,在宅脳卒中片麻痺患者にも広く用いられている。一方,WHOのワーキンググループは,身体活動量を簡便に評価するための国際的な質問紙として,International Physical Activity Questionnaire(以下,IPAQ)を開発した。IPAQは,身体活動量を消費カロリーとして算出できる点が特徴である。LSAとIPAQは,どちらも身体活動量を簡便に評価可能な質問紙であるが,その質問内容が大きく異なるため,在宅脳卒中片麻痺患者における妥当性には相違があると考えられる。また,LSAとIPAQの関連性に関する検討はこれまでになされていない。よって,本研究の目的は,LSA及びIPAQの妥当性を加速度計によって測定された身体活動量との比較から検討することと,二つの質問紙の関連性を明らかにすることである。
【方法】
対象者は,当院外来リハビリテーションに通う脳卒中片麻痺患者の内,杖や装具の使用は問わず歩行が自立しており,本研究に同意が得られた13名とした(63.3±8.3歳:発症からの期間82.7±66.0ヶ月:男性9名,女性4名:脳梗塞4名,脳出血8名,くも膜下出血1名:下肢Br.Stage III-2名,IV-8名,V-3名)。なお,MMSE23点以下の者,記憶障害を有する者,重篤な合併症を有する者は除外した。対象者には,ライフコーダGS(スズケン社製。以下,LC)を一週間貸し出し,就寝時と入浴時以外は常に装着するように依頼した。また,対象者には,LC回収時に簡単な質問紙を実施することのみを事前に伝えた。その後,LC回収時にIPAQ及びLSAの解答を面接にて得た。なお,本研究では患者負担を考慮し,IPAQは短縮版を使用した。LCに記録されたデータの内,貸し出し日と回収日を除く6日間のデータより,一日の平均消費カロリー(LC消費カロリー)と一日の平均歩数を算出した。IPAQ日本語版から得られた解答より,マニュアルに従い一日の平均消費カロリーを算出した(IPAQ消費カロリー)。また,LSAも合計得点を算出した(LSAスコア)。統計学的な解析は,妥当性の検討を目的に,IPAQ消費カロリー及びLSAスコアと,LC消費カロリーに関して各々でPearsonの相関係数を算出した。また,IPAQ消費カロリー及びLSAスコアと,平均歩数に関しても各々でPearsonの相関係数を算出した。さらに,LSAスコアとIPAQ消費カロリーに関しても,Pearsonの相関係数を算出した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
LC消費カロリーとIPAQ消費カロリーの間には,r=0.583(p<0.05)の中等度の有意な相関が認められた。また,LC消費カロリーとLSAスコアの間にも,r=0.579(p<0.05)の中等度の有意な相関が認められた。さらに,歩数とIPAQ消費カロリーの間にも,r=0.687(p<0.05)の中等度の有意な相関が認められた。一方,歩数とLSAスコアの間には,有意な相関が認められなかった。さらに,LSAスコアとIPAQ消費カロリーの間にも,有意な相関は認められなかった。
【考察】
本研究の結果より,歩行が自立しており,認知・記憶能力に障害がない在宅脳卒中片麻痺患者においては,IPAQとLSA共に同程度の妥当性がある可能性が示された。一方,歩数との有意な相関は,IPAQ消費カロリーのみに認められたことから,身体活動量の中でも歩行量に関する評価には,LSAと比較してIPAQの方が適している可能性が示唆された。また,LSAスコアとIPAQ消費カロリーに相関が見られなかったことから,二つの質問紙は身体活動量の異なる側面を評価している可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
在宅脳卒中片麻痺患者における身体活動量を簡便に評価する方法の適切な選択と使用は,退院後の身体機能・ADL能力の維持を目的とする理学療法介入のために,重要な課題である。その点で,本研究は理学療法研究として大変意義深いと言える。