[O-0689] 血流制限下での運動時における筋疲労と低強度身体活動量との関連性
Keywords:血流制限, 筋疲労, 低強度身体活動量
【はじめに,目的】
日常生活は3METs以下の低強度活動で占められており(綾部ら,2008),低強度活動増加による身体への有益な効果についても報告されている。低強度運動は強度特性から血流制限の影響が顕著に現れることが報告されており(Yasuda et al,2009),導管機能及び拍動緩衝機能を担う動脈の機能は重要であると考えられる。本研究では,血流制限下での低強度運動時の筋疲労と低強度身体活動量との関連性を明らかにすることを目的とし,健常成人を対象に,血流制限下での筋疲労が低い者ほど低強度身体活動量の積算時間が長いと仮説を立案し検証した。
【方法】
心血管系に既往がなく足関節に運動障害のない健常成人男性27名を対象とした。筋疲労課題としてベッド上背臥位にて右足関節底屈運動を実施。負荷強度は最大随意筋力(以下MVC)の30%とし,0.5秒収縮,0.5秒弛緩の速度で5分間実施した。血流制限条件として運動中は大腿部を圧迫用カフにて安静時上腕収縮期血圧の1.6倍に加圧した。運動前後に乳酸値及びBIODEXを用いてMVCを測定し,MVC低下率を筋疲労として定義した。身体活動量の測定にはActive style pro HJA-350IT(オムロン社製)を使用し,入浴,就寝時以外1週間の連続測定を実施した。低強度を「3METs以下」と定義し,積算時間は最短を10秒とし算出した。統計学的解析は,課題前後の各項目の比較に対応のあるt検定,MVC低下率により2群に分け低強度身体活動量積値の比較に対応のないt検定を用いた。また,MVC低下率と低強度身体活動量積算値の関連を検定するためにPearsonの積率相関係数を用いた。統計学的処理は全てSPSSを用い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
対象者の各項目における測定結果を平均値±標準偏差で示した。年齢24.8±1.8歳,身長169.5±5.4cm,体重64.7±8.1kg,乳酸値課題前1.2±0.7,課題後2.4±2.3,最大トルク平均課題前158.2±27.1N・m,課題後136.2±30.8N・m,MVC低下率14.4±12.1%,低強度身体活動量積算値4786±535.9分であった。統計学的処理の結果,課題前後の乳酸値及び最大トルク平均に有意差を認めた(p<0.05)。低強度身体活動積算値についてはMVC低下率による群間の比較では有意差を認めず,MVC低下率との関連性についても有意差を認めなかった。
【考察】
血流制限により筋内代謝産物が蓄積(Suga et al 2009)し,筋線維数の動員増加を経て疲労誘発物質を蓄積させ(Fitts et al 2008)筋疲労が惹起される。本研究では乳酸値の有意な上昇,最大トルク平均の有意な低下を認め,筋疲労を惹起する条件として妥当であったと考えられるが,低強度身体活動量との関連性を認めなかった。身体活動量は身体的要因だけでなく,心理・社会・環境要因の影響も受けることが報告されており(岡ら2011),強度別による各要因の影響度合いにも差が生じている。本研究の結果より,健常成人男性における血流制限による筋疲労は低強度身体活動量積算値との関連性は低く,他要因による影響を受けている可能性を示唆した。
【理学療法学研究としての意義】
低強度身体活動量へ影響を与える身体的要因として,筋疲労との関連性を検討することで,理学療法場面における運動処方を通じた日常生活活動への影響に関する一助となる可能性があり,意義があると考えられる。
日常生活は3METs以下の低強度活動で占められており(綾部ら,2008),低強度活動増加による身体への有益な効果についても報告されている。低強度運動は強度特性から血流制限の影響が顕著に現れることが報告されており(Yasuda et al,2009),導管機能及び拍動緩衝機能を担う動脈の機能は重要であると考えられる。本研究では,血流制限下での低強度運動時の筋疲労と低強度身体活動量との関連性を明らかにすることを目的とし,健常成人を対象に,血流制限下での筋疲労が低い者ほど低強度身体活動量の積算時間が長いと仮説を立案し検証した。
【方法】
心血管系に既往がなく足関節に運動障害のない健常成人男性27名を対象とした。筋疲労課題としてベッド上背臥位にて右足関節底屈運動を実施。負荷強度は最大随意筋力(以下MVC)の30%とし,0.5秒収縮,0.5秒弛緩の速度で5分間実施した。血流制限条件として運動中は大腿部を圧迫用カフにて安静時上腕収縮期血圧の1.6倍に加圧した。運動前後に乳酸値及びBIODEXを用いてMVCを測定し,MVC低下率を筋疲労として定義した。身体活動量の測定にはActive style pro HJA-350IT(オムロン社製)を使用し,入浴,就寝時以外1週間の連続測定を実施した。低強度を「3METs以下」と定義し,積算時間は最短を10秒とし算出した。統計学的解析は,課題前後の各項目の比較に対応のあるt検定,MVC低下率により2群に分け低強度身体活動量積値の比較に対応のないt検定を用いた。また,MVC低下率と低強度身体活動量積算値の関連を検定するためにPearsonの積率相関係数を用いた。統計学的処理は全てSPSSを用い,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
対象者の各項目における測定結果を平均値±標準偏差で示した。年齢24.8±1.8歳,身長169.5±5.4cm,体重64.7±8.1kg,乳酸値課題前1.2±0.7,課題後2.4±2.3,最大トルク平均課題前158.2±27.1N・m,課題後136.2±30.8N・m,MVC低下率14.4±12.1%,低強度身体活動量積算値4786±535.9分であった。統計学的処理の結果,課題前後の乳酸値及び最大トルク平均に有意差を認めた(p<0.05)。低強度身体活動積算値についてはMVC低下率による群間の比較では有意差を認めず,MVC低下率との関連性についても有意差を認めなかった。
【考察】
血流制限により筋内代謝産物が蓄積(Suga et al 2009)し,筋線維数の動員増加を経て疲労誘発物質を蓄積させ(Fitts et al 2008)筋疲労が惹起される。本研究では乳酸値の有意な上昇,最大トルク平均の有意な低下を認め,筋疲労を惹起する条件として妥当であったと考えられるが,低強度身体活動量との関連性を認めなかった。身体活動量は身体的要因だけでなく,心理・社会・環境要因の影響も受けることが報告されており(岡ら2011),強度別による各要因の影響度合いにも差が生じている。本研究の結果より,健常成人男性における血流制限による筋疲労は低強度身体活動量積算値との関連性は低く,他要因による影響を受けている可能性を示唆した。
【理学療法学研究としての意義】
低強度身体活動量へ影響を与える身体的要因として,筋疲労との関連性を検討することで,理学療法場面における運動処方を通じた日常生活活動への影響に関する一助となる可能性があり,意義があると考えられる。