[O-0698] 変形性膝関節症患者と健常高齢者の骨盤・下肢アライメントと関節可動域の比較
Keywords:変形性膝関節症, アライメント, 関節可動域
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)は,潜在的なものも含めると罹患人数は2400万人にのぼると推定されている。膝OAに対しては様々な視点から研究されているが,膝OA罹患者と健常者の骨盤・下肢アライメントと関節可動域(以下,ROM)を包括的に調べ比較した報告はない。しかし,これが明らかとなることによって膝OAに対する理学療法の発展および膝OAの予防につながると考える。そこで本研究は,膝OAと健常者の骨盤・下肢アライメントおよびROMを比較し,膝OAの特徴を明らかにすることを目的として実施した。
【方法】
対象者は全例女性で,内側型膝OA群10名18肢(Kellgren and Lawrence gradeにてII:10肢,III:8肢),平均年齢70.4歳,平均身長148.6cm,平均体重55.9kgと,健常群10名20肢,平均年齢68.8歳,平均身長151.5cm,平均体重52.0kgとした。立位アライメントは,一眼レフカメラ(Canon EOS Kiss X4)を用い正面像,側面像を撮影した。画像解析にはシルエット計測(Medic Engineering社)を用い,矢状面における骨盤前傾角度・膝伸展角度,前額面における大腿脛骨角度(以下,FTA)の解析を行った。さらに,navicular drop test(以下,NDT)は自作した計測器を用いて測定し,立位でのLeg-Heel Alignment(以下,LHA),腹臥位での大腿骨前捻角(以下,前捻角)はゴニオメーターで測定した。ROM測定は股関節屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋・腹臥位での外旋・腹臥位での内旋,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈・底屈・外がえし・内がえしに対して行った。統計学的解析は対応のないt検定で処理し,有意水準は5%とした。
【結果】
年齢,身長には両群間で有意差を認めず,体重に有意差を認め,膝OA群のほうが大きい値を示した。以下に,アライメントおよびROM測定の結果,有意差を認めた項目の平均値を示す(膝OA群:健常群)。アライメントにおいて有意差を認めたのは,骨盤前傾角度(13.5°:16.4°),膝伸展角度(172.6°:178.6°),FTA(179.5°:174.4°),NDT(9.8mm:7.4mm),LHA(11.2°:6.8°)であった。ROMにおいて有意差を認めたのは,股関節伸展(22.3°:26.1°)・内転(8.6°:10.7°),膝関節屈曲(142.4°:153.5°)・伸展(-4.3°:2.2°),足関節外がえし(14.4°:10.3°)であった。
【考察】
膝OA群の特徴として,健常群よりも体重が重く,健常群と比較して,アライメントは骨盤後傾,膝関節屈曲・内反,足部外反位であり,ROMは股関節伸展・内転,膝関節屈曲・伸展が小さく,足関節外がえしが大きいことが明らかとなった。Samら(2007)は足部を外反させると脛骨・大腿骨の外旋,膝内反,骨盤後傾を認めると報告している。しかし,本研究では足部外反に膝内反が伴う結果となった。これは内反膝によって足部外側に集中していた荷重が,加齢により内側縦アーチが低下することによって徐々に内側へと移動し,最終的に足部外反位になり,足関節外がえしROMも拡大したと推測される。また,膝OA群のアライメントは膝関節屈曲・内反位となっていることから,股関節は屈曲・外転位となっていることが推測され,このようなアライメントが継続されることによって,股関節屈筋群,外転筋群の柔軟性が低下し,ROM低下へとつながったと考える。さらに,骨盤後傾,膝関節屈曲位であることから,2関節筋である大腿直筋が健常群よりも伸張位となり,これも股関節伸展ROM低下の要因となっていると考える。膝関節屈曲・伸展ROMに関しては,これらを制限する筋や腱の柔軟性低下はもちろんのこと,骨や軟骨の退行性変化および増殖性変化や,関節包の伸張性低下による影響が大きいと考える。以上から,膝OA患者に対する理学療法として,アライメントは膝関節のみではなく,骨盤前傾,足部内反方向への改善の必要性があり,ROMは股関節伸展・内転,膝関節屈曲・伸展の拡大,足関節外がえしROM拡大の抑制の必要性があると考える。また,若年時から,今回認めた膝OA群のアライメント,ROMの特徴を考慮し,それらの方向へのアライメント偏位やROM低下の予防を図ることで,膝OAの発症予防につながると考える。
【理学療法学研究としての意義】
膝OAの骨盤・下肢アライメントおよびROMの特徴を明らかにしたことは,膝OAに対する理学療法の発展,および膝OA発症の予防につながると考える。
変形性膝関節症(以下,膝OA)は,潜在的なものも含めると罹患人数は2400万人にのぼると推定されている。膝OAに対しては様々な視点から研究されているが,膝OA罹患者と健常者の骨盤・下肢アライメントと関節可動域(以下,ROM)を包括的に調べ比較した報告はない。しかし,これが明らかとなることによって膝OAに対する理学療法の発展および膝OAの予防につながると考える。そこで本研究は,膝OAと健常者の骨盤・下肢アライメントおよびROMを比較し,膝OAの特徴を明らかにすることを目的として実施した。
【方法】
対象者は全例女性で,内側型膝OA群10名18肢(Kellgren and Lawrence gradeにてII:10肢,III:8肢),平均年齢70.4歳,平均身長148.6cm,平均体重55.9kgと,健常群10名20肢,平均年齢68.8歳,平均身長151.5cm,平均体重52.0kgとした。立位アライメントは,一眼レフカメラ(Canon EOS Kiss X4)を用い正面像,側面像を撮影した。画像解析にはシルエット計測(Medic Engineering社)を用い,矢状面における骨盤前傾角度・膝伸展角度,前額面における大腿脛骨角度(以下,FTA)の解析を行った。さらに,navicular drop test(以下,NDT)は自作した計測器を用いて測定し,立位でのLeg-Heel Alignment(以下,LHA),腹臥位での大腿骨前捻角(以下,前捻角)はゴニオメーターで測定した。ROM測定は股関節屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋・腹臥位での外旋・腹臥位での内旋,膝関節屈曲・伸展,足関節背屈・底屈・外がえし・内がえしに対して行った。統計学的解析は対応のないt検定で処理し,有意水準は5%とした。
【結果】
年齢,身長には両群間で有意差を認めず,体重に有意差を認め,膝OA群のほうが大きい値を示した。以下に,アライメントおよびROM測定の結果,有意差を認めた項目の平均値を示す(膝OA群:健常群)。アライメントにおいて有意差を認めたのは,骨盤前傾角度(13.5°:16.4°),膝伸展角度(172.6°:178.6°),FTA(179.5°:174.4°),NDT(9.8mm:7.4mm),LHA(11.2°:6.8°)であった。ROMにおいて有意差を認めたのは,股関節伸展(22.3°:26.1°)・内転(8.6°:10.7°),膝関節屈曲(142.4°:153.5°)・伸展(-4.3°:2.2°),足関節外がえし(14.4°:10.3°)であった。
【考察】
膝OA群の特徴として,健常群よりも体重が重く,健常群と比較して,アライメントは骨盤後傾,膝関節屈曲・内反,足部外反位であり,ROMは股関節伸展・内転,膝関節屈曲・伸展が小さく,足関節外がえしが大きいことが明らかとなった。Samら(2007)は足部を外反させると脛骨・大腿骨の外旋,膝内反,骨盤後傾を認めると報告している。しかし,本研究では足部外反に膝内反が伴う結果となった。これは内反膝によって足部外側に集中していた荷重が,加齢により内側縦アーチが低下することによって徐々に内側へと移動し,最終的に足部外反位になり,足関節外がえしROMも拡大したと推測される。また,膝OA群のアライメントは膝関節屈曲・内反位となっていることから,股関節は屈曲・外転位となっていることが推測され,このようなアライメントが継続されることによって,股関節屈筋群,外転筋群の柔軟性が低下し,ROM低下へとつながったと考える。さらに,骨盤後傾,膝関節屈曲位であることから,2関節筋である大腿直筋が健常群よりも伸張位となり,これも股関節伸展ROM低下の要因となっていると考える。膝関節屈曲・伸展ROMに関しては,これらを制限する筋や腱の柔軟性低下はもちろんのこと,骨や軟骨の退行性変化および増殖性変化や,関節包の伸張性低下による影響が大きいと考える。以上から,膝OA患者に対する理学療法として,アライメントは膝関節のみではなく,骨盤前傾,足部内反方向への改善の必要性があり,ROMは股関節伸展・内転,膝関節屈曲・伸展の拡大,足関節外がえしROM拡大の抑制の必要性があると考える。また,若年時から,今回認めた膝OA群のアライメント,ROMの特徴を考慮し,それらの方向へのアライメント偏位やROM低下の予防を図ることで,膝OAの発症予防につながると考える。
【理学療法学研究としての意義】
膝OAの骨盤・下肢アライメントおよびROMの特徴を明らかにしたことは,膝OAに対する理学療法の発展,および膝OA発症の予防につながると考える。