[O-0708] 端座位による体幹屈曲筋力評価および伸展筋力評価の妥当性,信頼性
Keywords:体幹筋力, 妥当性, 信頼性
【はじめに,目的】
臨床において体幹筋力評価は,徒手筋力検査にて行うことが多いが,筋力低下の程度,トレーニングによる変化を詳細に表すことができない。定量的評価としてHand-Held Dynamometer(以下HHD)があり,信頼性,妥当性の検討も行われ,徐々に普及している。しかし,ベルトを用いた体幹筋力評価に関する報告は少ない。本研究の目的は,ベルトを用いたHHDによる体幹屈曲筋力(以下,屈曲)および体幹伸展筋力(以下,伸展)の測定方法について,Isokinetic Strength Measurement Equipment(以下ISME)との比較によって妥当性を検討すること,相対信頼性を検討することである。
【方法】
検者は,臨床経験2年の理学療法士(以下,検者A)と,臨床経験10年の理学療法士(以下,検者B)とした。被験者は,若年健常成人34名とし,除外基準は,既往に脊柱疾患などの整形外科的疾患,心疾患を有する者とした。HHDはMobie(酒井医療),ISMEはBIODEX SYSTEM 3 Pro(Biodex Medical Systems)を使用した。HHD測定は,端坐位で行い,椅子の脚がずれることや浮き上がることを防ぐために,歩行訓練用階段(酒井医療)と椅子の間にステップ台を挟み固定した。体幹筋力が60kgf以上の場合に屈曲および伸展時に椅子の後脚が持ち上がらないように補助者が椅子を固定させ,被験者の臀部が前にずれることを防ぐために補助者が被験者を押さえた。また,HHDおよびISME共に足底面接地によって下肢の筋力を反映させることに繋がる為,下肢の筋力をなるべく除外させる為に,足底面を床から浮かした。HHD,ISMEの各項目で,最大等尺性筋収縮を3回行い,筋収縮時間は5秒間として,最大筋力を採用した。HHDとISMEの測定順および屈曲と伸展の測定順は,ランダムとした。測定は1週をあけて2 session行った。妥当性は,HHDの検者Aによるsession1とISMEの最大値についてピアソンの積率相関分析を用いて検討した。相対信頼性は級内相関係数(Interclass Correlation Coefficient:以下ICC)を用い,各検者A,Bのsession内および検者Aの2 sessionにおける検者内信頼性についてICC(1,1)を用いて検討した。各検者A,Bの検者間信頼性についてICC(2,1)を用いて検討した。統計解析には,フリーソフトR.2.8.1を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
妥当性について,HHDとISME間のピアソンの積率相関係数は,屈曲,伸展それぞれ0.82,0.80と有意な相関を認めた。HHD屈曲のICC(1,1)にて,各検者A,Bは0.98,0.99であり,伸展は,0.97,0.96,であった。HHD屈曲,伸展のICC(2,1)は,それぞれ0.96,0.79であった。
【考察】
結果より妥当性において,屈曲,伸展共にHHDとISMEによる測定値間に有意な相関を認めた。加藤ら(2009)による健常若年者を対象としてベルトを用いたHHDによる下肢の筋力測定の妥当性を検討した結果より,HHDとISMEを基準とした下肢筋力測定と同程度の妥当性があると考えられた。しかし,方法より体幹筋力が60kgf以上の場合に屈曲および伸展時に椅子の後脚が持ち上がらないように補助者が椅子を固定させ,被験者の臀部が前にずれることを防ぐ為に補助者が被験者を押さえたことから,健常若年成人の体幹測定において筋力値が高い場合には,固定性が低下すると考えられた。今後,臨床応用するにあたり,より高い筋力値を配慮した測定方法の検討が必要であると考えられた。
相対信頼性において,Landisら(1977)よりICCにおいて0.8以上は良好な信頼性とされていることから,検者AB内の検者内信頼性,検者AB間の検者間信頼性は,いずれも0.9以上と良好な結果であった。加藤ら(2009)においての健常若年者を対象としてベルトを用いたHHDによる下肢の筋力測定結果から,同日内のICC(1,1)が0.73-0.96,日を改めたICC(1,1)が0.54-0.89,検者2名による検者間信頼性ICC(2,1)が0.97-0.99であったことから,ベルトを用いたHHDの屈曲,伸展は下肢の測定と同様に高いと考えられた。
本研究の結果から,より高い筋力値に対するHHD測定評価の妥当性および信頼性を出す為には,ある程度の筋力値の条件および水準を予測,判断することが重要であると考えられる。また絶対信頼性として測定に含まれる誤差を検討することも重要と考えられた。今後,高い筋力を測定する為には,固定性,誤差および学習の影響性についてさらに検討し,考慮していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
手筋力検査機器としての体幹筋力評価法を確立し,臨床応用として患者への病態把握や効果判定の一助になると考える。
臨床において体幹筋力評価は,徒手筋力検査にて行うことが多いが,筋力低下の程度,トレーニングによる変化を詳細に表すことができない。定量的評価としてHand-Held Dynamometer(以下HHD)があり,信頼性,妥当性の検討も行われ,徐々に普及している。しかし,ベルトを用いた体幹筋力評価に関する報告は少ない。本研究の目的は,ベルトを用いたHHDによる体幹屈曲筋力(以下,屈曲)および体幹伸展筋力(以下,伸展)の測定方法について,Isokinetic Strength Measurement Equipment(以下ISME)との比較によって妥当性を検討すること,相対信頼性を検討することである。
【方法】
検者は,臨床経験2年の理学療法士(以下,検者A)と,臨床経験10年の理学療法士(以下,検者B)とした。被験者は,若年健常成人34名とし,除外基準は,既往に脊柱疾患などの整形外科的疾患,心疾患を有する者とした。HHDはMobie(酒井医療),ISMEはBIODEX SYSTEM 3 Pro(Biodex Medical Systems)を使用した。HHD測定は,端坐位で行い,椅子の脚がずれることや浮き上がることを防ぐために,歩行訓練用階段(酒井医療)と椅子の間にステップ台を挟み固定した。体幹筋力が60kgf以上の場合に屈曲および伸展時に椅子の後脚が持ち上がらないように補助者が椅子を固定させ,被験者の臀部が前にずれることを防ぐために補助者が被験者を押さえた。また,HHDおよびISME共に足底面接地によって下肢の筋力を反映させることに繋がる為,下肢の筋力をなるべく除外させる為に,足底面を床から浮かした。HHD,ISMEの各項目で,最大等尺性筋収縮を3回行い,筋収縮時間は5秒間として,最大筋力を採用した。HHDとISMEの測定順および屈曲と伸展の測定順は,ランダムとした。測定は1週をあけて2 session行った。妥当性は,HHDの検者Aによるsession1とISMEの最大値についてピアソンの積率相関分析を用いて検討した。相対信頼性は級内相関係数(Interclass Correlation Coefficient:以下ICC)を用い,各検者A,Bのsession内および検者Aの2 sessionにおける検者内信頼性についてICC(1,1)を用いて検討した。各検者A,Bの検者間信頼性についてICC(2,1)を用いて検討した。統計解析には,フリーソフトR.2.8.1を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
妥当性について,HHDとISME間のピアソンの積率相関係数は,屈曲,伸展それぞれ0.82,0.80と有意な相関を認めた。HHD屈曲のICC(1,1)にて,各検者A,Bは0.98,0.99であり,伸展は,0.97,0.96,であった。HHD屈曲,伸展のICC(2,1)は,それぞれ0.96,0.79であった。
【考察】
結果より妥当性において,屈曲,伸展共にHHDとISMEによる測定値間に有意な相関を認めた。加藤ら(2009)による健常若年者を対象としてベルトを用いたHHDによる下肢の筋力測定の妥当性を検討した結果より,HHDとISMEを基準とした下肢筋力測定と同程度の妥当性があると考えられた。しかし,方法より体幹筋力が60kgf以上の場合に屈曲および伸展時に椅子の後脚が持ち上がらないように補助者が椅子を固定させ,被験者の臀部が前にずれることを防ぐ為に補助者が被験者を押さえたことから,健常若年成人の体幹測定において筋力値が高い場合には,固定性が低下すると考えられた。今後,臨床応用するにあたり,より高い筋力値を配慮した測定方法の検討が必要であると考えられた。
相対信頼性において,Landisら(1977)よりICCにおいて0.8以上は良好な信頼性とされていることから,検者AB内の検者内信頼性,検者AB間の検者間信頼性は,いずれも0.9以上と良好な結果であった。加藤ら(2009)においての健常若年者を対象としてベルトを用いたHHDによる下肢の筋力測定結果から,同日内のICC(1,1)が0.73-0.96,日を改めたICC(1,1)が0.54-0.89,検者2名による検者間信頼性ICC(2,1)が0.97-0.99であったことから,ベルトを用いたHHDの屈曲,伸展は下肢の測定と同様に高いと考えられた。
本研究の結果から,より高い筋力値に対するHHD測定評価の妥当性および信頼性を出す為には,ある程度の筋力値の条件および水準を予測,判断することが重要であると考えられる。また絶対信頼性として測定に含まれる誤差を検討することも重要と考えられた。今後,高い筋力を測定する為には,固定性,誤差および学習の影響性についてさらに検討し,考慮していく必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
手筋力検査機器としての体幹筋力評価法を確立し,臨床応用として患者への病態把握や効果判定の一助になると考える。