[O-0715] 成人脳性麻痺アテトーゼ型患者における疼痛の質とTENSの効果の関係
キーワード:脳性麻痺, 疼痛, TENS
【はじめに,目的】
脳性麻痺アテトーゼ型患者(以下:アテトーゼ型患者)は腰背部に疼痛を訴えることが多く,経皮的電気神経刺激法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)を用いて一時的な疼痛の軽減を図り,運動療法に併用することがある。しかし,対象によりTENSの効果に差が出現することを多く経験する。佐藤らは,アテトーゼ型患者は加齢に伴い骨関節障害・内科的疾患に起因する障害,精神心理障害が問題となると報告しており,アテトーゼ型患者の腰痛には様々な質が混在していることが予想される。しかし,アテトーゼ型患者の腰痛に対するTENSの効果を,質的な疼痛評価法を用いて検討した報告はされていない。疼痛の質的評価法として,Revised version of the SF-MPQ(以下:SF-MPQ-2)が有用であると言われている。
本研究は,疼痛の質によりTENSの効果に差が出現するという仮説の元,アテトーゼ型患者の腰痛にTENS刺激とSham刺激を行い,TENSの効果と疼痛の質との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,平成25年4月から平成26年10月に当院に来院した,3カ月以上続く腰痛を有する成人アテトーゼ型患者8名とした。除外基準はGMFCSレベルVの者,薬剤の服薬量が変化した者,1年以内に疼痛部位に対し手術・ボトックス注射を行った者,精神発達が12歳未満の者とした。評価項目は,GMFCS,SF-MPQ-2,薬剤の使用状況,疼痛を誘発する動作とした。
本研究はクロスオーバーデザインとし,8名をランダムに2群に分け,期間を空けTENS(低周波数(4Hz)・低刺激強度)とSham刺激の両方の介入を行った。両群とも,電極は疼痛部位と同デルマトーム上に添付し30分間行い,介入前後でSF-MPQ-2による疼痛の評価を行った。
統計学的処理は,SF-MPQ-2の各スコア(持続的な痛み,間欠的な痛み,神経障害性の痛み,感情表現,すべての痛み)を従属変数とし,介入方法と介入前後を対応のある因子とした二元配置分散分析を行った。
【結果】
対象は男性4名,女性4名であり,平均年齢は53.9±6.7,GMFCSはレベルIIが4名,IIIが2名,IVが2名であった。
「すべての痛み」,「神経障害性の痛み」では介入前後での主効果が確認され,介入方法での主効果および交互作用は確認されなかった。「持続的な痛み」,「感情表現」では介入前後・介入方法での主効果はなく交互作用も確認されなかった。「間欠的な痛み」では,介入前後での主効果,交互作用が確認された。
【考察】
「すべての痛み」では,TENSとSham刺激の間に交互作用はなく,主効果のみが出現した。しかし,各項目それぞれに注目すると,交互作用が出現しているもの,効果がみられなかったものがあり,アテトーゼ型患者の腰痛には,質的な疼痛評価が必要であることが示唆された。
「持続的な痛み」において主効果・交互作用ともに認めらなかった。Richard Mらは,慢性腰痛に対しTENSは無効であると報告し,日本理学療法診療ガイドライン第1版では,腰痛に対するTENSは長期間に及ぶ疼痛改善効果は無いとしており,「持続的な痛み」のスコアはTENSに反応しにくいことが示唆された。また,中村らによると,アテトーゼ型患者の腰痛は42歳程度で出現するとされており,今回は平均年齢が53.9歳と高年齢であり,発症から長期間が経過していることも,TENSの効果減弱に影響していたと考えた。
「間欠的な痛み」スコアは主効果と交互作用が認められた。有澤らは,外傷後の痛みは「間欠的な痛み」が高値を示すとしており,Cheingらは外傷後の痛みにTENSはSham刺激よりも有効であるとしている。このことから,「間欠的な痛み」のスコアは,TENSにより改善しやすく,アテトーゼ型患者の腰部における間欠的な痛みに対しTENSは有効であることが示唆された。
「神経障害性の痛み」は介入前後での主効果のみが認められた。TENSはSham刺激より神経因性疼痛に対し有効であるとされており,先行研究と結果が異なる。G. Cruccuらは神経因性疼痛には高周波数のTENSが有効であると報告しており,今回は低周波数でのTENS刺激であったことがスコア改善が少なかったことに影響していると考えた。
「感情表現」には主効果と交互作用が認められなかった。兵頭らは心因性疼痛に対しTENSは無効であるとしており,今回の結果からもTENSは「感情表現」スコアに反応にくいことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
アテトーゼ型患者の腰痛には様々な質の疼痛が混在していた。疼痛の質によってTENSの効果に違いがあり,事前に疼痛の質的評価を行うことで,より適切な介入ができる可能性が示唆された。
脳性麻痺アテトーゼ型患者(以下:アテトーゼ型患者)は腰背部に疼痛を訴えることが多く,経皮的電気神経刺激法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:TENS)を用いて一時的な疼痛の軽減を図り,運動療法に併用することがある。しかし,対象によりTENSの効果に差が出現することを多く経験する。佐藤らは,アテトーゼ型患者は加齢に伴い骨関節障害・内科的疾患に起因する障害,精神心理障害が問題となると報告しており,アテトーゼ型患者の腰痛には様々な質が混在していることが予想される。しかし,アテトーゼ型患者の腰痛に対するTENSの効果を,質的な疼痛評価法を用いて検討した報告はされていない。疼痛の質的評価法として,Revised version of the SF-MPQ(以下:SF-MPQ-2)が有用であると言われている。
本研究は,疼痛の質によりTENSの効果に差が出現するという仮説の元,アテトーゼ型患者の腰痛にTENS刺激とSham刺激を行い,TENSの効果と疼痛の質との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,平成25年4月から平成26年10月に当院に来院した,3カ月以上続く腰痛を有する成人アテトーゼ型患者8名とした。除外基準はGMFCSレベルVの者,薬剤の服薬量が変化した者,1年以内に疼痛部位に対し手術・ボトックス注射を行った者,精神発達が12歳未満の者とした。評価項目は,GMFCS,SF-MPQ-2,薬剤の使用状況,疼痛を誘発する動作とした。
本研究はクロスオーバーデザインとし,8名をランダムに2群に分け,期間を空けTENS(低周波数(4Hz)・低刺激強度)とSham刺激の両方の介入を行った。両群とも,電極は疼痛部位と同デルマトーム上に添付し30分間行い,介入前後でSF-MPQ-2による疼痛の評価を行った。
統計学的処理は,SF-MPQ-2の各スコア(持続的な痛み,間欠的な痛み,神経障害性の痛み,感情表現,すべての痛み)を従属変数とし,介入方法と介入前後を対応のある因子とした二元配置分散分析を行った。
【結果】
対象は男性4名,女性4名であり,平均年齢は53.9±6.7,GMFCSはレベルIIが4名,IIIが2名,IVが2名であった。
「すべての痛み」,「神経障害性の痛み」では介入前後での主効果が確認され,介入方法での主効果および交互作用は確認されなかった。「持続的な痛み」,「感情表現」では介入前後・介入方法での主効果はなく交互作用も確認されなかった。「間欠的な痛み」では,介入前後での主効果,交互作用が確認された。
【考察】
「すべての痛み」では,TENSとSham刺激の間に交互作用はなく,主効果のみが出現した。しかし,各項目それぞれに注目すると,交互作用が出現しているもの,効果がみられなかったものがあり,アテトーゼ型患者の腰痛には,質的な疼痛評価が必要であることが示唆された。
「持続的な痛み」において主効果・交互作用ともに認めらなかった。Richard Mらは,慢性腰痛に対しTENSは無効であると報告し,日本理学療法診療ガイドライン第1版では,腰痛に対するTENSは長期間に及ぶ疼痛改善効果は無いとしており,「持続的な痛み」のスコアはTENSに反応しにくいことが示唆された。また,中村らによると,アテトーゼ型患者の腰痛は42歳程度で出現するとされており,今回は平均年齢が53.9歳と高年齢であり,発症から長期間が経過していることも,TENSの効果減弱に影響していたと考えた。
「間欠的な痛み」スコアは主効果と交互作用が認められた。有澤らは,外傷後の痛みは「間欠的な痛み」が高値を示すとしており,Cheingらは外傷後の痛みにTENSはSham刺激よりも有効であるとしている。このことから,「間欠的な痛み」のスコアは,TENSにより改善しやすく,アテトーゼ型患者の腰部における間欠的な痛みに対しTENSは有効であることが示唆された。
「神経障害性の痛み」は介入前後での主効果のみが認められた。TENSはSham刺激より神経因性疼痛に対し有効であるとされており,先行研究と結果が異なる。G. Cruccuらは神経因性疼痛には高周波数のTENSが有効であると報告しており,今回は低周波数でのTENS刺激であったことがスコア改善が少なかったことに影響していると考えた。
「感情表現」には主効果と交互作用が認められなかった。兵頭らは心因性疼痛に対しTENSは無効であるとしており,今回の結果からもTENSは「感情表現」スコアに反応にくいことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
アテトーゼ型患者の腰痛には様々な質の疼痛が混在していた。疼痛の質によってTENSの効果に違いがあり,事前に疼痛の質的評価を行うことで,より適切な介入ができる可能性が示唆された。