第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

口述

口述99

循環2

Sun. Jun 7, 2015 10:50 AM - 11:50 AM 第9会場 (ガラス棟 G409)

座長:内山覚(新東京病院 リハビリテーション室), 森沢知之(兵庫医療大学 リハビリテーション学部)

[O-0740] 心臓外科術後リハビリテーションを行い退院に至った患者の歩行能力低下の要因

ADL上の移動能力としての歩行に着目して

堀悠樹 (千葉中央メディカルセンター)

Keywords:心臓リハビリテーション, ADL, 移動能力

【はじめに,目的】
心臓リハビリテーションにおける歩行能力の先行研究は多いが,ここで論じられている歩行能力は運動耐容能や歩行スピードなどの運動機能であることが殆どである。しかし,近年みられる患者の高齢化に際して,高齢者や動作能力が低下している患者を退院させるために,運動機能だけでなくADL上の移動能力の獲得が重要となってきた。そこで本研究では,当院において心臓外科術を施行し心臓リハビリテーションを行い退院に至った患者のうち,ADL上の移動能力が低下した患者の要因分析を行い,傾向を調査,対策を検討することを目的とする。
【方法】
当院リハビリテーション課内で集計してきた患者データを用い,2004年7月~2013年7月までに入院し,当院で心臓外科術を施行し心臓リハビリテーションを行った患者690名を対象に,後方視的な観察研究を行った。
<ADL上の移動能力の定義>本研究におけるADL上の移動能力は,歩行形態で示す。歩行形態は独歩・補助具使用歩行・実用歩行困難の3つに分類し,歩行能力が高い順に,独歩>補助具使用歩行>実用歩行困難とする。
<統計学的事項>患者背景因子を退院時の歩行形態低下の有無で2群に分け,単回帰分析(対応のないt検定ならびにχ2)により項目を検討し,ロジスティック回帰分析を施行した。解析はSPSS ver16.0を使用,有意水準は5%未満とした。
【結果】
ADL上の移動能力(歩行形態)が低下した群は13%(77/690名)に認めた。単回帰分析において有意な値を示したのは年齢,在院日数,パス進行,術式において冠動脈バイパス術(CABG),心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB),人工血管置換術,危険因子において人工透析(HD)であった。その7項目を独立変数としたロジスティック回帰分析の結果,年齢,在院日数,パス進行,人工血管置換術,HDの5項目がADL上の移動能力低下の規定因子として抽出された。
【考察】
心臓外科術後にADL上の移動能力が低下する要因として,年齢,在院日数,パス進行,人工血管置換術,HDの5項目の関与が示された。特にHD群,人工血管置換術群は大きなリスクがある群であった。HDは最大リスク群であり,移動能力の低下はHD群では20%,非HD群では9%であった。HD群は運動療法の時間が短くなりやすいため,透析中の運動を検討したり,予定手術に対しては術前リハビリの充実の必要がある。開心術で人工血管置換を施行された疾患比率は,大動脈解離50%/胸部大動脈瘤50%だった。前者は緊急手術となることが多く,後者は術前に運動制限があることが多いと考えられるため,術後のリハビリ対応をより考慮する必要がある。今後は,リスク群の背景,経過をさらに詳しく検討することで,有効な対策を検討したい。今後は,リスク群の背景,経過をさらに詳しく検討することで,有効な対策を検討したい。
【理学療法学研究としての意義】
ADL上の移動能力は,介助量や活動量に関与するため,退院先や予後にも大きく関係すると言われている。したがって,本研究により移動能力の低下しやすいリスク群があきらかになったことは,臨床的に意義があった。とくにHD,人工血管置換術群は大きなリスクがある。