第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

口述100

膝関節

2015年6月7日(日) 10:50 〜 11:50 第10会場 (ガラス棟 G602)

座長:松本正知(桑名西医療センター 整形外科 リハビリテーション室)

[O-0742] 超音波検査を用いた健常膝関節裂隙距離の荷重の有無と関節角度による変化

石川雄太 (公立藤岡総合病院附属外来センター)

キーワード:超音波検査, 膝関節裂隙, コンベックス型プローブ

【はじめに,目的】
日本の65歳以上の約23%が変形性膝関節症で,その数は推定2,530万人と報告されている。変形性膝関節症の病態の主体は関節軟骨の変性で,続いて関節裂隙の狭小化が起こるとされているが,その関節裂隙は荷重や関節運動でどのように変化するのか。評価にはX線検査やMRIなど様々な方法があるが,超音波検査もその1つで,侵襲がなく,簡便で,制限も少なく,理学療法士なども使用可能であるという利点がある。超音波検査を用いることで荷重や関節運動による膝関節裂隙距離の変化をリアルタイムに観察することができる。しかし,一般的に用いられるリニア型プローブでは至適観察深度が浅いため,コンベックス型を使用することとで膝関節裂隙の深部まで観察できるのではないかと考えた。膝関節裂隙のコンベックス型プローブを用いた超音波検査での信頼性については,第27回日本臨床整形外科学会で筆者らが報告したように4回の測定の平均値を用いることでばらつきが少なく高い信頼性が保証され,簡便に測定できることが示唆された。そこで本研究は,膝関節裂隙のコンベックス型プローブを用いた超音波検査における荷重の有無や膝関節角度の違いでの膝関節裂隙距離の変化の傾向を検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常男性11名右膝11膝(33±7.7歳)とした。測定は,超音波診断装置を用いてB-モード,コンベックス型プローブにて実施した。測定部位は膝関節前内側・内側・後内側・膝窩部とし,肢位は荷重位と非荷重位でそれぞれ膝関節屈曲角度0・30°とした。長軸方向にプローブを当て,大腿骨と脛骨が映るように測定した。計測は大腿骨-脛骨骨成分の外側縁を結んだ線分から下ろした垂線を深度とし,その深度での大腿骨-脛骨骨成分の外側縁を結んだ線分に平行な線分の距離とした。統計学的分析は,肢位別と部位別の比較は対応のあるt検定もしくは一元配置分散分析後に多重比較法を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
肢位別では,荷重位及び非荷重位と膝関節屈曲角度0・30°を組み合わせた4パターンのうち,荷重位での膝関節0°の後方を除く,内側・後内側・後方の各部位において,深部に行くに従い有意に関節裂隙距離は狭くなっていた。部位別の関節裂隙距離は,前内側で非荷重位・荷重位ともに膝関節0°<30°屈曲位であった。内側では,5mm・10mmともに荷重位<非荷重位であった。後内側と後方では,各深度で膝関節30°屈曲位<0°であり,前内側とは逆の傾向を示していた。
【考察】
コンベックス型プローブを用いた膝関節裂隙の超音波検査より,関節裂隙距離は脛骨関節面と大腿骨内側顆の形態学的特徴により深部に行くに従い狭くなると考えられ,荷重の有無や膝関節屈曲角度が異なっても各部位での傾向は類似していた。また,膝関節裂隙の距離は部位により荷重の影響と関節運動の影響のどちらがより大きく関連するのか違いがあることが示唆された。膝関節の内側では荷重の影響が大きく,変形性膝関節症の評価には有用であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
膝関節裂隙の距離は部位により荷重と関節運動の影響の大きさに違いがあり,膝関節の内側では荷重の影響が大きく,変形性膝関節症の評価に有用であると考える。今後は,女性や高齢者,変形性膝関節症罹患者など対象を拡大していくことで運動療法のエビデンスに基づいた実施に繋がり得ると考えている。