[O-0744] 高位脛骨骨切り術に骨軟骨柱移植術を併用した変形性膝関節症患者の術後1年の経過
理学療法継続期間による回復過程の違い
Keywords:高位脛骨骨切り術, 変形性膝関節症, 術後
【はじめに,目的】
当院では,変形性膝関節症(以下,膝OA)患者に骨軟骨柱移植術を施行しており,アライメント不良である大腿脛骨角180°以上では高位脛骨骨切り術(以下,HTO)を併用している。
我々の先行研究において,HTOに骨軟骨柱移植術を併用した症例において,術後12ヶ月を経過すると,日本整形外科学会膝疾患治療成績判定基準(以下,JOAスコア)に反映される術側の膝機能は非術側と同等なレベルまで改善する事を報告した。しかし,術後12ヶ月の時期においても膝伸展筋力は非術側と差を認め,膝関節伸展可動域は術前より低値を示す結果であった。当院では,入院中の術後プロトコルは決まっているが,外来リハビリの継続期間は決まっていない。そのため理学療法終了時期の判断基準を模索している。そこで今回,膝OAにHTOと骨軟骨柱移植術を併用した症例の,理学療法継続期間が膝機能の回復に与える影響を調査した。
【方法】
当院で膝OAと診断され,平成24年4月から平成25年10月末までに骨軟骨柱移植術にHTOを併用した16名16膝(男6名,女10名,年齢63±7歳,身長159.0±10.1cm,体重68.7±17.1kg,BMI 26.9±4.3,理学療法継続期間138.7±107.4日,経過観察期間628±154.1日)を対象とした。理学療法継続期間100日未満の8名をST群(理学療法継続期間62.3±25.8日),100日以上の8名をLT群(215.1±103.4日)に分類した。
膝機能の評価として,膝関節屈曲,伸展可動域(以下,ROM)とJOAスコア,膝伸展筋力の測定を非術側と術側で実施した。筋力評価にはCYBEX NORM(CYBEX社製)を用い,等速性筋力を角速度60deg/secで測定しピークトルクを採用した。得られたトルク値は体重で除し100を乗じて%BWを算出した。測定時期は,術前(以下,PRE),術後3カ月(以下,PO3M),術後6カ月(以下,PO6M),術後12カ月(以下,PO12M)とした。膝ROM,膝伸展筋力,JOAスコアを,PRE,PO3M,PO6M,PO12Mで比較した。また,それぞれの時期のST群とLT群を比較した。統計処理には2元配置分散分析を行い,多重比較にはBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
術側の膝屈曲ROMは,PREのST群が136.9±17.7°,LT群が128.8±15.1°,PO3MのST群が136.3±7.4°,LT群が141.9±5.9°,PO6MのST群が136.9±8.0°,LT群が140.6±6.8°,PO12MのST群が134.4±14.0°,LT群が136.6±6.6°であり,PREのST群に比べてLT群は有意に低値であった(p<0.01)。術側の膝伸展ROMは,PREのST群が-3.3±5.8°,LT群が-4.4±3.2°,PO3MのST群が-6.9±6.5°,LT群が-3.8±5.2°,PO6MのST群が-7.1±6.4°,LT群が-4.6±5.4°,PO12MのST群が-6.0±3.4°,LT群が-6.3±5.2°であったが全ての項目において有意差は認められなかった。
術側の膝伸展筋力(%BW)は,PREのST群が74.6±22.1,LT群が63.8±27.2,PO3MのST群が73.4±22.8,LT群が59.1±13.4,PO6MのST群が88.0±24.3,LT群が75.4±33.5,PO12MのST群が93.1±27.1,LT群が88.4±46.2でありPREに比べてPO12M(p<0.01),PO3Mに比べてPO6M(p<0.05),PO3Mに比べてPO12M(p<0.01)で有意な増加が認められたがST群とLT群には有意な差は認められなかった。
術側のJOAスコアの合計点は,PREのST群71.3±12.7点,LT群が65.4±12.4点,PO3MのST群76.9±9.2点,LT群が80.6±9.4点,PO6MのST群83.1±8.4点,LT群が86.3±7.4点,PO12MのST群84.4±7.3点,LT群が85.0±12.5点であり,PREのST群はLT群より有意に高値であった(p<0.01)。
【考察】
術後3カ月以降,今回測定した全ての項目においてLT群とST群の間に有意差は認められなかったことから,理学療法継続期間によって膝機能の回復過程には大きな影響を与えないことが考えられた。しかし,術前の術側において,LT群のJOAスコア合計点はST群より低値を示し,膝屈曲ROMもLT群は低値を示したことから,理学療法の継続期間は術前の膝機能が影響を与えている可能性が示唆された。さらに下肢筋力はLT群において術後12カ月まで向上が認められるため,さらに対象者数を増やし理学療法継続期間の再考が必要であると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
HTOに骨軟骨柱移植術を併用した膝OA患者の理学療法継続期間について,様々な見解があるため明らかにされていない。今回の調査結果から,術前の膝機能は理学療法の継続期間の一指標に成り得ると考える。
当院では,変形性膝関節症(以下,膝OA)患者に骨軟骨柱移植術を施行しており,アライメント不良である大腿脛骨角180°以上では高位脛骨骨切り術(以下,HTO)を併用している。
我々の先行研究において,HTOに骨軟骨柱移植術を併用した症例において,術後12ヶ月を経過すると,日本整形外科学会膝疾患治療成績判定基準(以下,JOAスコア)に反映される術側の膝機能は非術側と同等なレベルまで改善する事を報告した。しかし,術後12ヶ月の時期においても膝伸展筋力は非術側と差を認め,膝関節伸展可動域は術前より低値を示す結果であった。当院では,入院中の術後プロトコルは決まっているが,外来リハビリの継続期間は決まっていない。そのため理学療法終了時期の判断基準を模索している。そこで今回,膝OAにHTOと骨軟骨柱移植術を併用した症例の,理学療法継続期間が膝機能の回復に与える影響を調査した。
【方法】
当院で膝OAと診断され,平成24年4月から平成25年10月末までに骨軟骨柱移植術にHTOを併用した16名16膝(男6名,女10名,年齢63±7歳,身長159.0±10.1cm,体重68.7±17.1kg,BMI 26.9±4.3,理学療法継続期間138.7±107.4日,経過観察期間628±154.1日)を対象とした。理学療法継続期間100日未満の8名をST群(理学療法継続期間62.3±25.8日),100日以上の8名をLT群(215.1±103.4日)に分類した。
膝機能の評価として,膝関節屈曲,伸展可動域(以下,ROM)とJOAスコア,膝伸展筋力の測定を非術側と術側で実施した。筋力評価にはCYBEX NORM(CYBEX社製)を用い,等速性筋力を角速度60deg/secで測定しピークトルクを採用した。得られたトルク値は体重で除し100を乗じて%BWを算出した。測定時期は,術前(以下,PRE),術後3カ月(以下,PO3M),術後6カ月(以下,PO6M),術後12カ月(以下,PO12M)とした。膝ROM,膝伸展筋力,JOAスコアを,PRE,PO3M,PO6M,PO12Mで比較した。また,それぞれの時期のST群とLT群を比較した。統計処理には2元配置分散分析を行い,多重比較にはBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
術側の膝屈曲ROMは,PREのST群が136.9±17.7°,LT群が128.8±15.1°,PO3MのST群が136.3±7.4°,LT群が141.9±5.9°,PO6MのST群が136.9±8.0°,LT群が140.6±6.8°,PO12MのST群が134.4±14.0°,LT群が136.6±6.6°であり,PREのST群に比べてLT群は有意に低値であった(p<0.01)。術側の膝伸展ROMは,PREのST群が-3.3±5.8°,LT群が-4.4±3.2°,PO3MのST群が-6.9±6.5°,LT群が-3.8±5.2°,PO6MのST群が-7.1±6.4°,LT群が-4.6±5.4°,PO12MのST群が-6.0±3.4°,LT群が-6.3±5.2°であったが全ての項目において有意差は認められなかった。
術側の膝伸展筋力(%BW)は,PREのST群が74.6±22.1,LT群が63.8±27.2,PO3MのST群が73.4±22.8,LT群が59.1±13.4,PO6MのST群が88.0±24.3,LT群が75.4±33.5,PO12MのST群が93.1±27.1,LT群が88.4±46.2でありPREに比べてPO12M(p<0.01),PO3Mに比べてPO6M(p<0.05),PO3Mに比べてPO12M(p<0.01)で有意な増加が認められたがST群とLT群には有意な差は認められなかった。
術側のJOAスコアの合計点は,PREのST群71.3±12.7点,LT群が65.4±12.4点,PO3MのST群76.9±9.2点,LT群が80.6±9.4点,PO6MのST群83.1±8.4点,LT群が86.3±7.4点,PO12MのST群84.4±7.3点,LT群が85.0±12.5点であり,PREのST群はLT群より有意に高値であった(p<0.01)。
【考察】
術後3カ月以降,今回測定した全ての項目においてLT群とST群の間に有意差は認められなかったことから,理学療法継続期間によって膝機能の回復過程には大きな影響を与えないことが考えられた。しかし,術前の術側において,LT群のJOAスコア合計点はST群より低値を示し,膝屈曲ROMもLT群は低値を示したことから,理学療法の継続期間は術前の膝機能が影響を与えている可能性が示唆された。さらに下肢筋力はLT群において術後12カ月まで向上が認められるため,さらに対象者数を増やし理学療法継続期間の再考が必要であると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
HTOに骨軟骨柱移植術を併用した膝OA患者の理学療法継続期間について,様々な見解があるため明らかにされていない。今回の調査結果から,術前の膝機能は理学療法の継続期間の一指標に成り得ると考える。