[O-0774] 地域在住高齢者における活動量の季節性変化について
Keywords:活動量, 地域在住高齢者, 季節性変化
【はじめに,目的】障害を伴った高齢者の在宅生活で生じる身体能力低下や生活活動量の低下を把握することは地域在住高齢者に関わるリハビリテーション専門職にとって重要なことである。
近年Bakerらが提唱したLife Space Assessment(以下LSA)によって高齢者の活動量が報告されており,身体機能,ADLやバランス能力,転倒恐怖心との関連があると報告されている。一方で,居住地域による影響を受けないとされているが日本では季節によって地域の気候が異なるため,それぞれの屋外環境が高齢者の活動量に影響している可能性がある。
これらより,今回の調査では2つの異なった気候地域に在住する介護保険サービス利用者を対象とし,LSAを用いた季節性の活動量の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は日本海側気候地域及び瀬戸内海型気候地域に在住している介護保険サービス利用者であり,65歳以上の高齢者48名(平均年齢78.9歳±8.1歳,男性20名,女性28名)であった。介護保険事業施設(訪問看護ステーション,デイサービス)の施設長に対し研究の説明を行い,同意を得た5施設の利用者とした。除外基準は,65歳未満の者,要支援・介護認定を受けていない者,屋内移動動作が自立していない者,進行性疾患に羅患している者,認知症と診断されている者とした。調査期間は秋季(平成25年11月1~30日)及び冬季の期間(平成26年2月1~28日)においてそれぞれ調査を実施した。調査は面接による質問紙調査と運動機能検査(開眼片脚立位時間)を実施した。質問紙では基本情報(年齢,性別,主疾患,過去1カ月間の転倒経験の有無,通所サービスの利用の有無など),LSA及びLSA下位項目(3項目):Independent Life-Space(以下LS-I),Life Space using Equipment(以下LS-E),Maximal Life-Space(以下LS-M),そしてFIM運動項目(以下FIM),Modified Falls Efficacy Scale(以下MFES)について聴取した。基本情報の調査及び開眼片脚立位時間の測定は秋季のみ実施し,その他の調査項目は季節に応じて調査を実施した。対象者を在住地域によって日本海群,瀬戸内群に分類し,群間及び季節間において比較した。また,日本海群の対象を通所サービスの有無によって2群に分け,季節間において比較した。すべての統計処理はR2.8.1を使用して行ない,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】秋季において日本海群と瀬戸内群を比較すると,基本情報の各項目及び片脚立位時間については有意差を認めなかった。FIM,LSA合計点,LS-I,LS-E,LS-MおよびMFESについても有意差を認めなかった。季節間における差は,日本海群ではLSA合計点(p<0.01)及び下位項目のLS-E(p<0.01),LS-M(p<0.05)において秋季と比較し冬季で有意に低値を示した。一方LS-Iでは有意差を認めなかった。これに対して,瀬戸内群では季節間で有意差を認めなかった。
通所サービス利用あり群では秋季と比較し冬季ではLSA合計点(p<0.05),LS-E(p<0.01),LS-M(p<0.05)が有意に低値を示した。通所サービス利用なし群ではLS-E(p<0.05)のみ冬季において有意に低値を示した。
【考察】瀬戸内群では季節間に有意な変化を認めなかったが,日本海群ではLSA合計点が冬季では有意に低値であった。この結果から,生活空間の広がりは対象の居住地域によっては季節の影響を受けることが示された。Portegijsらの報告によるとLSAの冬季期間内の再現性は低く,気温の影響を除いた冬季の降雪や凍結状態などによって得点の変化に大きく影響していると報告している。また,滑りやすい路面などの気象環境が高齢者の屋外での活動性に影響を与えているといった報告もある。実際,冬季における1カ月当たりの最深積雪0cm以上の日数が瀬戸内群では0~4日/月であったのに対し日本海群では12~14日/月であった。これらから日常生活自立度や転倒恐怖心に変化がなくても屋外環境の変化によって外出などの機会が減少することが考えられた。
また日本海群における通所サービス利用あり群ではLSA及びLS-Mが冬季にかけて有意に低下したことから,通所サービスの利用者においてはより屋外環境の変化により活動量が制限される可能性が示唆された。
LSAは介護保険サービスの利用者の生活空間の季節的変化を示す指標となる事が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】今回の結果は,介護保険サービス利用者を対象とした地域リハビリテーションの発展に寄与するものと考えられた。
近年Bakerらが提唱したLife Space Assessment(以下LSA)によって高齢者の活動量が報告されており,身体機能,ADLやバランス能力,転倒恐怖心との関連があると報告されている。一方で,居住地域による影響を受けないとされているが日本では季節によって地域の気候が異なるため,それぞれの屋外環境が高齢者の活動量に影響している可能性がある。
これらより,今回の調査では2つの異なった気候地域に在住する介護保険サービス利用者を対象とし,LSAを用いた季節性の活動量の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は日本海側気候地域及び瀬戸内海型気候地域に在住している介護保険サービス利用者であり,65歳以上の高齢者48名(平均年齢78.9歳±8.1歳,男性20名,女性28名)であった。介護保険事業施設(訪問看護ステーション,デイサービス)の施設長に対し研究の説明を行い,同意を得た5施設の利用者とした。除外基準は,65歳未満の者,要支援・介護認定を受けていない者,屋内移動動作が自立していない者,進行性疾患に羅患している者,認知症と診断されている者とした。調査期間は秋季(平成25年11月1~30日)及び冬季の期間(平成26年2月1~28日)においてそれぞれ調査を実施した。調査は面接による質問紙調査と運動機能検査(開眼片脚立位時間)を実施した。質問紙では基本情報(年齢,性別,主疾患,過去1カ月間の転倒経験の有無,通所サービスの利用の有無など),LSA及びLSA下位項目(3項目):Independent Life-Space(以下LS-I),Life Space using Equipment(以下LS-E),Maximal Life-Space(以下LS-M),そしてFIM運動項目(以下FIM),Modified Falls Efficacy Scale(以下MFES)について聴取した。基本情報の調査及び開眼片脚立位時間の測定は秋季のみ実施し,その他の調査項目は季節に応じて調査を実施した。対象者を在住地域によって日本海群,瀬戸内群に分類し,群間及び季節間において比較した。また,日本海群の対象を通所サービスの有無によって2群に分け,季節間において比較した。すべての統計処理はR2.8.1を使用して行ない,有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】秋季において日本海群と瀬戸内群を比較すると,基本情報の各項目及び片脚立位時間については有意差を認めなかった。FIM,LSA合計点,LS-I,LS-E,LS-MおよびMFESについても有意差を認めなかった。季節間における差は,日本海群ではLSA合計点(p<0.01)及び下位項目のLS-E(p<0.01),LS-M(p<0.05)において秋季と比較し冬季で有意に低値を示した。一方LS-Iでは有意差を認めなかった。これに対して,瀬戸内群では季節間で有意差を認めなかった。
通所サービス利用あり群では秋季と比較し冬季ではLSA合計点(p<0.05),LS-E(p<0.01),LS-M(p<0.05)が有意に低値を示した。通所サービス利用なし群ではLS-E(p<0.05)のみ冬季において有意に低値を示した。
【考察】瀬戸内群では季節間に有意な変化を認めなかったが,日本海群ではLSA合計点が冬季では有意に低値であった。この結果から,生活空間の広がりは対象の居住地域によっては季節の影響を受けることが示された。Portegijsらの報告によるとLSAの冬季期間内の再現性は低く,気温の影響を除いた冬季の降雪や凍結状態などによって得点の変化に大きく影響していると報告している。また,滑りやすい路面などの気象環境が高齢者の屋外での活動性に影響を与えているといった報告もある。実際,冬季における1カ月当たりの最深積雪0cm以上の日数が瀬戸内群では0~4日/月であったのに対し日本海群では12~14日/月であった。これらから日常生活自立度や転倒恐怖心に変化がなくても屋外環境の変化によって外出などの機会が減少することが考えられた。
また日本海群における通所サービス利用あり群ではLSA及びLS-Mが冬季にかけて有意に低下したことから,通所サービスの利用者においてはより屋外環境の変化により活動量が制限される可能性が示唆された。
LSAは介護保険サービスの利用者の生活空間の季節的変化を示す指標となる事が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】今回の結果は,介護保険サービス利用者を対象とした地域リハビリテーションの発展に寄与するものと考えられた。