[O-0776] 地域在住自立高齢者の社会参加に関連する要因
キーワード:高齢者, 社会参加, 介護予防
【はじめに,目的】
介護予防において,転倒予防や筋力向上などの運動器の機能向上は,理学療法士の貢献が求められる領域であることは言うまでもない。当該領域に,運動の専門家である理学療法士が関わることで,効果的な介護予防の実践に繋がることが期待される。一方で,介護予防の目指す目的は,筋力の向上といった要素還元的なものではなく,生活機能の向上や社会参加などの生活そのものを変化させることである。特に,社会参加の視点に関しては,介護予防においても十分に検討されているとは言い難い状況にあると思われる。従って,社会参加に関連する要因について,幅広い側面から検討し理解を深めることは,効果的な介護予防の実践に資する情報になりうるものと考える。本研究の目的は,地域在住自立高齢者の社会参加に関連する要因について,身体・心理・社会経済的側面より検討することとした。
【方法】
2013年7月1日時点で住民基本台帳に記載されていた,神奈川県S市内の公営住宅在住の65歳以上高齢者677名全員に自記式の調査票を配布し,郵送にて回収した。従属変数となる社会参加の評価については,いきいき活動チェック表の下位尺度である「社会参加・奉仕活動」を用いた(大野・他,1998)。この「社会参加・奉仕活動」の尺度は,地域行事・町内会・老人クラブ・趣味の会・ボランティア活動・特技や経験を伝える活動の6種類の社会活動についての活動頻度を問うものである。活動頻度に応じて0~6点で採点し,点数が高いほど社会参加の状況が良好であることを示している。独立変数としては,身体・心理・社会経済的側面に関する調査項目を設定した。すなわち,身体的側面については運動習慣の有無・転倒歴・手段的日常生活活動能力(IADL),心理的側面としては抑うつの有無・主観的健康観,社会経済的側面として暮らし向きを調査した。なお,抑うつの有無は高齢者抑うつ尺度5項目短縮版(GDS5)(Holy, et al. 1999)を用いて評価し,5点満点中2点以上を抑うつ有と判定した。その他,基本属性として,年齢・性別・介護度認定・体格指数(BMI)・居住形態(独居または同居)を調査した。統計解析については,「社会参加・奉仕活動」の点数と,身体・心理・社会経済的側面および基本属性における各変数との関連をWilcoxon二票本検定またはspearmanの順位相関係数を用いて検討した。その後,「社会参加・奉仕活動」の点数と統計的有意な関連を示した項目を独立変数,「社会参加・奉仕活動」の点数を従属変数とする強制投入法による重回帰分析を行った。統計的有意水準は5%未満とした。
【結果】
調査票の回収数は327名(回収率48.3%)であった。うち,要支援・要介護認定を受けていない自立高齢者265名(平均年齢72.6±4.9歳,男性105名)のデータを分析した。なお,「社会参加・奉仕活動」の平均点は1.3±1.6点で,社会活動の頻度は全体的に低い対象者が多かった。「社会参加・奉仕活動」と統計的有意に関連を示した変数は,運動習慣の有無・抑うつの有無・IADL・主観的健康観であった。さらに,重回帰分析の結果,抑うつの有無と主観的健康観のみが統計的有意に「社会参加・奉仕活動」と関連を示した(R2=0.099,F=4.729,p<0.01)。すなわち,抑うつが無いこと,および主観的健康観が高いことが「社会参加・奉仕活動」の点数が高いことと関連していた。
【考察】
本研究の結果から,地域在住自立高齢者の社会参加には,身体的側面や社会経済的側面よりも心理的側面が大きな影響を与えていることが示唆された。従って,地域の自立高齢者を対象とした介護予防に関わる際には,対象者の心理的側面への配慮が重要であると考えられる。特に,社会参加の促進に繋がりうる効果的な介護予防のためには,抑うつなどの心理面の評価およびケアを考慮することが必要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
介護予防に運動の専門家である理学療法士が関わることで,科学的かつ効果的な介護予防を展開していくことが期待される。一方で,介護予防では対象者における社会参加の視点を持つことが肝要である。本研究結果は,介護予防における対象者の社会参加促進のために,配慮すべき点を提示することに寄与できるものと考える。
介護予防において,転倒予防や筋力向上などの運動器の機能向上は,理学療法士の貢献が求められる領域であることは言うまでもない。当該領域に,運動の専門家である理学療法士が関わることで,効果的な介護予防の実践に繋がることが期待される。一方で,介護予防の目指す目的は,筋力の向上といった要素還元的なものではなく,生活機能の向上や社会参加などの生活そのものを変化させることである。特に,社会参加の視点に関しては,介護予防においても十分に検討されているとは言い難い状況にあると思われる。従って,社会参加に関連する要因について,幅広い側面から検討し理解を深めることは,効果的な介護予防の実践に資する情報になりうるものと考える。本研究の目的は,地域在住自立高齢者の社会参加に関連する要因について,身体・心理・社会経済的側面より検討することとした。
【方法】
2013年7月1日時点で住民基本台帳に記載されていた,神奈川県S市内の公営住宅在住の65歳以上高齢者677名全員に自記式の調査票を配布し,郵送にて回収した。従属変数となる社会参加の評価については,いきいき活動チェック表の下位尺度である「社会参加・奉仕活動」を用いた(大野・他,1998)。この「社会参加・奉仕活動」の尺度は,地域行事・町内会・老人クラブ・趣味の会・ボランティア活動・特技や経験を伝える活動の6種類の社会活動についての活動頻度を問うものである。活動頻度に応じて0~6点で採点し,点数が高いほど社会参加の状況が良好であることを示している。独立変数としては,身体・心理・社会経済的側面に関する調査項目を設定した。すなわち,身体的側面については運動習慣の有無・転倒歴・手段的日常生活活動能力(IADL),心理的側面としては抑うつの有無・主観的健康観,社会経済的側面として暮らし向きを調査した。なお,抑うつの有無は高齢者抑うつ尺度5項目短縮版(GDS5)(Holy, et al. 1999)を用いて評価し,5点満点中2点以上を抑うつ有と判定した。その他,基本属性として,年齢・性別・介護度認定・体格指数(BMI)・居住形態(独居または同居)を調査した。統計解析については,「社会参加・奉仕活動」の点数と,身体・心理・社会経済的側面および基本属性における各変数との関連をWilcoxon二票本検定またはspearmanの順位相関係数を用いて検討した。その後,「社会参加・奉仕活動」の点数と統計的有意な関連を示した項目を独立変数,「社会参加・奉仕活動」の点数を従属変数とする強制投入法による重回帰分析を行った。統計的有意水準は5%未満とした。
【結果】
調査票の回収数は327名(回収率48.3%)であった。うち,要支援・要介護認定を受けていない自立高齢者265名(平均年齢72.6±4.9歳,男性105名)のデータを分析した。なお,「社会参加・奉仕活動」の平均点は1.3±1.6点で,社会活動の頻度は全体的に低い対象者が多かった。「社会参加・奉仕活動」と統計的有意に関連を示した変数は,運動習慣の有無・抑うつの有無・IADL・主観的健康観であった。さらに,重回帰分析の結果,抑うつの有無と主観的健康観のみが統計的有意に「社会参加・奉仕活動」と関連を示した(R2=0.099,F=4.729,p<0.01)。すなわち,抑うつが無いこと,および主観的健康観が高いことが「社会参加・奉仕活動」の点数が高いことと関連していた。
【考察】
本研究の結果から,地域在住自立高齢者の社会参加には,身体的側面や社会経済的側面よりも心理的側面が大きな影響を与えていることが示唆された。従って,地域の自立高齢者を対象とした介護予防に関わる際には,対象者の心理的側面への配慮が重要であると考えられる。特に,社会参加の促進に繋がりうる効果的な介護予防のためには,抑うつなどの心理面の評価およびケアを考慮することが必要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
介護予防に運動の専門家である理学療法士が関わることで,科学的かつ効果的な介護予防を展開していくことが期待される。一方で,介護予防では対象者における社会参加の視点を持つことが肝要である。本研究結果は,介護予防における対象者の社会参加促進のために,配慮すべき点を提示することに寄与できるものと考える。