[O-0780] 入院期心不全患者における入院時Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)評価の有用性
キーワード:栄養状態, GNRI, 心不全
【はじめに,目的】心不全患者における低栄養は心臓悪液質の一症状として重要視されている。また,最近では栄養リハビリテーションの普及やNST活動等,様々な場面において栄養評価が治療や予後の指標として用いられており,栄養状態を評価する事は治療上重要であるとされている。栄養評価の一つであるGNRIは,GNRI=(14.89×血清アルブミン(g/dL))+41.7×(現体重(kg)/標準体重(kg))にて算出され,透析患者や心疾患患者,健常高齢者において有用性が報告されており,独立した予後予測因子であるとされている。入院期心不全患者においては体液バランスの変化や血液希釈等も加わり,十分な栄養評価を行う事が困難とされており,入院期心不全患者に対する栄養評価に関する報告は少ない。そこで,本研究では入院期心不全患者の栄養状態をGNRIを用いて評価し,入院時栄養状態評価の有用性を検討した。
【方法】2013年10月1日から2014年9月30日までに入院し,理学療法士が介入した心不全患者連続362例のうち,入院前居所が自宅以外であったもの及び入院前より歩行困難であったもの及びデータが欠損したものを除く227例を対象に,後方視的に入院時GNRIを用いて分類した。なお,今回GNRIを算出するにあたり使用した標準体重はBMI=22を元に算出した。GNRIにより重度リスク群(GNRI<82),中等度リスク群(82≦GNRI<92),軽度リスク群(92≦GNRI<98),リスクなし群(98≦GNRI)の4群に分類し比較検討を行った。検討項目は背景因子(年齢,性別,身長,体重,BMI,同居人数,介護保険),ICU入室の有無,ICU在室日数,NYHA重症度分類,植え込み型Deviceの有無,入院前歩行様式,退院時歩行様式,入院時血液生化学データ(血性アルブミン(Alb),血中尿素窒素(BUN),血清クレアチニン(Cr),推算糸球体濾過率(eGFR),C反応性蛋白(CRP),白血球数(WBC),ヘモグロビン(Hb)),入院時心臓超音波検査(左室駆出率(LVEF),左室内径短縮率(LVFS),左室拡張末期径(LVDd),左室収縮末期径(LVDs)),リハビリ進行(リハビリ開始までの日数,歩行可能距離,自転車エルゴメーターの実施),ADL(入院前Barthel Index(以下BI),介入時BI),在院日数,転帰(自宅退院,転院)である。統計処理は多重比較検定(Scheffe’s F test)用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】重度リスク群は19例(男:8例,年齢:78.8±12.7歳),中等度リスク群は76例(男:46例,年齢:77.8±10.2歳),軽度リスク群は65例(男:38例,年齢:75.8±11.9歳),リスク無し群は67例(男:38例,年齢:73.3±13.6歳)であった。重度リスク群はリスク無し群と比較し,体重(45.6±13.2kg vs 61.8±12.4kg),BMI(19.4±5 vs 24.6±3.2),Alb(2.8±0.4g/dL vs 4.1±0.3g/dL),Hb(10.3±1.9g/dL vs 13±2.2g/dL)が低値であった。また,重度リスク群はリスク無し群と比較し,入院前ADLが低下(90.3±10.3点vs 96.7±5.7点)しており,歩行距離が短く(195.8±163.7m vs 338.8±185m),在宅復帰率が低かった(53% vs 88%)。
【考察】当院では病棟(ICU含む)に理学療法士が常駐しており,病棟カンファレンス等に参加し,他職種との情報交換を行う事で,離床が進んでいない患者や理学療法士による介入が必要と思われる患者の把握に努めている。今回の検討により重度の栄養リスクを有する群は,リスク無し群と比較すると,入院前身体機能・ADLが低く,転帰に影響を及ぼす事が示された。GNRIはAlb及び身長,体重のみで算出可能な簡便な指標である。GNRIを入院時スクリーニング項目の一つとして評価を行う事で,早期に転帰不良となる患者を予測できる可能性がある。また,栄養リスク有りと判断された患者に対し,早期に理学療法的介入や栄養介入を行っていく事で,身体機能及びADLの維持・改善により自宅退院の援助に寄与する可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】入院時GNRIを用いて栄養状態を評価することは転帰の予測に有効であり,入院期における理学療法士介入基準の一指標になり得る。
【方法】2013年10月1日から2014年9月30日までに入院し,理学療法士が介入した心不全患者連続362例のうち,入院前居所が自宅以外であったもの及び入院前より歩行困難であったもの及びデータが欠損したものを除く227例を対象に,後方視的に入院時GNRIを用いて分類した。なお,今回GNRIを算出するにあたり使用した標準体重はBMI=22を元に算出した。GNRIにより重度リスク群(GNRI<82),中等度リスク群(82≦GNRI<92),軽度リスク群(92≦GNRI<98),リスクなし群(98≦GNRI)の4群に分類し比較検討を行った。検討項目は背景因子(年齢,性別,身長,体重,BMI,同居人数,介護保険),ICU入室の有無,ICU在室日数,NYHA重症度分類,植え込み型Deviceの有無,入院前歩行様式,退院時歩行様式,入院時血液生化学データ(血性アルブミン(Alb),血中尿素窒素(BUN),血清クレアチニン(Cr),推算糸球体濾過率(eGFR),C反応性蛋白(CRP),白血球数(WBC),ヘモグロビン(Hb)),入院時心臓超音波検査(左室駆出率(LVEF),左室内径短縮率(LVFS),左室拡張末期径(LVDd),左室収縮末期径(LVDs)),リハビリ進行(リハビリ開始までの日数,歩行可能距離,自転車エルゴメーターの実施),ADL(入院前Barthel Index(以下BI),介入時BI),在院日数,転帰(自宅退院,転院)である。統計処理は多重比較検定(Scheffe’s F test)用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】重度リスク群は19例(男:8例,年齢:78.8±12.7歳),中等度リスク群は76例(男:46例,年齢:77.8±10.2歳),軽度リスク群は65例(男:38例,年齢:75.8±11.9歳),リスク無し群は67例(男:38例,年齢:73.3±13.6歳)であった。重度リスク群はリスク無し群と比較し,体重(45.6±13.2kg vs 61.8±12.4kg),BMI(19.4±5 vs 24.6±3.2),Alb(2.8±0.4g/dL vs 4.1±0.3g/dL),Hb(10.3±1.9g/dL vs 13±2.2g/dL)が低値であった。また,重度リスク群はリスク無し群と比較し,入院前ADLが低下(90.3±10.3点vs 96.7±5.7点)しており,歩行距離が短く(195.8±163.7m vs 338.8±185m),在宅復帰率が低かった(53% vs 88%)。
【考察】当院では病棟(ICU含む)に理学療法士が常駐しており,病棟カンファレンス等に参加し,他職種との情報交換を行う事で,離床が進んでいない患者や理学療法士による介入が必要と思われる患者の把握に努めている。今回の検討により重度の栄養リスクを有する群は,リスク無し群と比較すると,入院前身体機能・ADLが低く,転帰に影響を及ぼす事が示された。GNRIはAlb及び身長,体重のみで算出可能な簡便な指標である。GNRIを入院時スクリーニング項目の一つとして評価を行う事で,早期に転帰不良となる患者を予測できる可能性がある。また,栄養リスク有りと判断された患者に対し,早期に理学療法的介入や栄養介入を行っていく事で,身体機能及びADLの維持・改善により自宅退院の援助に寄与する可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】入院時GNRIを用いて栄養状態を評価することは転帰の予測に有効であり,入院期における理学療法士介入基準の一指標になり得る。