[O-0785] 直線偏光近赤外線の高強度パルス照射とストレッチの単独および併用施行が筋緊張に与える効果
Keywords:筋緊張, 直線偏光近赤外線, ストレッチ
【はじめに】筋緊張の治療法としてストレッチは広く行われているが,他にも様々なものがある。我々は高強度パルス照射型直線偏光近赤外線(High intensity pulse irradiation with linear polarized near-infrared rays;HI-LPNR)の筋緊張抑制効果を報告した(2014)が,HI-LPNRとストレッチの併用効果は未検討であった。本研究目的はHI-LPNR照射とストレッチの単独および併用施行が筋緊張に与える効果を明らかにすることとした。
【方法】対象は脳血管障害患者40人で,取り込み基準は麻痺側足関節底屈筋の筋緊張をAnkle Plantar Flexors Tone Scaleで測定し最低1項目が1以上とした。HI-LPNRを照射するHI-LPNR群,ストレッチを行うストレッチ群,HI-LPNR照射後にストレッチを行う併用群,対照群に無作為に割り付けた(各10人)。HI-LPNR群は下腿後面にHI-LPNRを照射した(出力8W,照射時間5分,照射3m秒-休止7m秒のパルス照射,照射口径20mm,筋腱移行部起始側に照射)。ストレッチ群は足関節底屈筋の他動的断続的ストレッチを行った(伸張20秒,休止1秒を5分間繰り返した)。併用群はHI-LPNR照射直後にストレッチを行った。対照群は5分間安静を保った。介入前後に膝伸展位の他動的足関節背屈角度(背屈角度)と他動的足関節背屈抵抗トルク(抵抗トルク)を測定した。介入前の抵抗トルクはハンドヘルドダイナモメーターのパッド中心部を足底の第2中足骨骨頭部に当てパッドを介して他動的に背屈し,最大背屈角度保持に必要な最小の力を測定した。介入後は介入前最大背屈角度保持に必要な最小の力を測定した。この値[N]に内果下端から第2中足骨骨頭までの距離[m]を乗じてトルク[Nm]を算出した。両指標は介入前に対する介入後の変化量を求め処理した。変化量の群間比較には一元配置分散分析および多重比較検定を行った。加えて我々が過去に行った研究において同じ方法で測定したデータから背屈角度と抵抗トルクの最小可検変化量(minimal detectable changes at the 95% confidence level;MDC95)を求め,今回の値と比較した(MDC95=1.96×√2×[SEM;Standard error of measuremen,SEM=[Standard deviation of test-retes/√2)。有意水準は5%とした。
【結果】背屈角度変化量はHI-LPNR群が2.7(SD,2.5)[度],ストレッチ群が5.3(SD,2.2)[度],併用群が6.3(SD,5.1)[度],対照群が-0.5(SD,1.7)[度]であった。対照群に比してストレッチ群と併用群で有意な増加を認め,HI-LPNR群は有意な変化を認めなかった。また介入3群の間に有意差は認めなかった。抵抗トルク変化量はHI-LPNR群が-1.4(SD,0.6)[Nm],ストレッチ群が-2.0(SD,0.8)[Nm],併用群が-1.8(SD,0.9)[Nm],対照群が-0.3(SD,0.7)[Nm]であった。対照群に比して,他の3群で有意な減少を認めたが,この3群間には有意差を認めなかった。背屈角度のMDC95は3.7[度]でHI-LPNR群の4人,ストレッチ群の7人,併用群の6人でMDC95を超える増加を認めた。抵抗トルクのMDC95は1.0[Nm]でHI-LPNR群の7人,ストレッチ群の8人,併用群の8人でMDC95を超える減少を認めた。各群の平均値では,ストレッチ群と併用群の背屈角度,HI-LPNR群とストレッチ群および併用群の抵抗トルクでMDC95を超える変化を認めた。
【考察】背屈角度は筋最大伸張の程度,抵抗トルクは筋伸張に要する力(伸張に対する抵抗)を反映する。介入した3群は対照群に比して有意な抵抗トルク減少とMDC95を超える変化を認めたが,3群間に有意差は認めなかった。HI-LPNR照射とストレッチは筋伸張に対する抵抗を減少するが,両者を併用してもその効果は変わらないと示唆された。背屈角度はHI-LPNR群の有意な変化を認めず,その変化はMDC95に満たなかった。ストレッチ群と併用群は対照群に比して有意な背屈角度拡大を認め,MDC95を超える変化であった。このため最大筋伸張度の改善はHI-LPNR照射のみでは効果が期待できず,実際に筋を伸張するストレッチが重要であると示唆された。ただしストレッチは伸張痛や伸張反射を誘発することがある。HI-LPNR照射の単独施行により抵抗トルクの改善を認めたことから,HI-LPNR後にストレッチを行なうことで,これらのリスクを軽減できると考えられた。これは,両者を併用することの有用性を示唆するものであった。
【理学療法学研究としての意義】HI-LPNR照射とストレッチの併用により筋の伸張性を高めた状態でストレッチを行える可能性が示唆された。本研究結果は筋緊張の治療においてHI-LPNRとストレッチの併用施行を考えるうえで意義あるものと考えられた。
【方法】対象は脳血管障害患者40人で,取り込み基準は麻痺側足関節底屈筋の筋緊張をAnkle Plantar Flexors Tone Scaleで測定し最低1項目が1以上とした。HI-LPNRを照射するHI-LPNR群,ストレッチを行うストレッチ群,HI-LPNR照射後にストレッチを行う併用群,対照群に無作為に割り付けた(各10人)。HI-LPNR群は下腿後面にHI-LPNRを照射した(出力8W,照射時間5分,照射3m秒-休止7m秒のパルス照射,照射口径20mm,筋腱移行部起始側に照射)。ストレッチ群は足関節底屈筋の他動的断続的ストレッチを行った(伸張20秒,休止1秒を5分間繰り返した)。併用群はHI-LPNR照射直後にストレッチを行った。対照群は5分間安静を保った。介入前後に膝伸展位の他動的足関節背屈角度(背屈角度)と他動的足関節背屈抵抗トルク(抵抗トルク)を測定した。介入前の抵抗トルクはハンドヘルドダイナモメーターのパッド中心部を足底の第2中足骨骨頭部に当てパッドを介して他動的に背屈し,最大背屈角度保持に必要な最小の力を測定した。介入後は介入前最大背屈角度保持に必要な最小の力を測定した。この値[N]に内果下端から第2中足骨骨頭までの距離[m]を乗じてトルク[Nm]を算出した。両指標は介入前に対する介入後の変化量を求め処理した。変化量の群間比較には一元配置分散分析および多重比較検定を行った。加えて我々が過去に行った研究において同じ方法で測定したデータから背屈角度と抵抗トルクの最小可検変化量(minimal detectable changes at the 95% confidence level;MDC95)を求め,今回の値と比較した(MDC95=1.96×√2×[SEM;Standard error of measuremen,SEM=[Standard deviation of test-retes/√2)。有意水準は5%とした。
【結果】背屈角度変化量はHI-LPNR群が2.7(SD,2.5)[度],ストレッチ群が5.3(SD,2.2)[度],併用群が6.3(SD,5.1)[度],対照群が-0.5(SD,1.7)[度]であった。対照群に比してストレッチ群と併用群で有意な増加を認め,HI-LPNR群は有意な変化を認めなかった。また介入3群の間に有意差は認めなかった。抵抗トルク変化量はHI-LPNR群が-1.4(SD,0.6)[Nm],ストレッチ群が-2.0(SD,0.8)[Nm],併用群が-1.8(SD,0.9)[Nm],対照群が-0.3(SD,0.7)[Nm]であった。対照群に比して,他の3群で有意な減少を認めたが,この3群間には有意差を認めなかった。背屈角度のMDC95は3.7[度]でHI-LPNR群の4人,ストレッチ群の7人,併用群の6人でMDC95を超える増加を認めた。抵抗トルクのMDC95は1.0[Nm]でHI-LPNR群の7人,ストレッチ群の8人,併用群の8人でMDC95を超える減少を認めた。各群の平均値では,ストレッチ群と併用群の背屈角度,HI-LPNR群とストレッチ群および併用群の抵抗トルクでMDC95を超える変化を認めた。
【考察】背屈角度は筋最大伸張の程度,抵抗トルクは筋伸張に要する力(伸張に対する抵抗)を反映する。介入した3群は対照群に比して有意な抵抗トルク減少とMDC95を超える変化を認めたが,3群間に有意差は認めなかった。HI-LPNR照射とストレッチは筋伸張に対する抵抗を減少するが,両者を併用してもその効果は変わらないと示唆された。背屈角度はHI-LPNR群の有意な変化を認めず,その変化はMDC95に満たなかった。ストレッチ群と併用群は対照群に比して有意な背屈角度拡大を認め,MDC95を超える変化であった。このため最大筋伸張度の改善はHI-LPNR照射のみでは効果が期待できず,実際に筋を伸張するストレッチが重要であると示唆された。ただしストレッチは伸張痛や伸張反射を誘発することがある。HI-LPNR照射の単独施行により抵抗トルクの改善を認めたことから,HI-LPNR後にストレッチを行なうことで,これらのリスクを軽減できると考えられた。これは,両者を併用することの有用性を示唆するものであった。
【理学療法学研究としての意義】HI-LPNR照射とストレッチの併用により筋の伸張性を高めた状態でストレッチを行える可能性が示唆された。本研究結果は筋緊張の治療においてHI-LPNRとストレッチの併用施行を考えるうえで意義あるものと考えられた。