[O-0796] 走行速度に対する下肢運動速度の重要性について
Keywords:運動速度, 移動能力, 筋力
【はじめに,目的】
高齢者において,筋パワーは筋力以上に歩行速度と関連があること示されており,非常に重要な指標である。筋パワーは,筋力と運動速度との積で算出される。そのため,近年,運動速度の重要性が指摘されおり,上肢,体幹,下肢それぞれの運動速度と歩行速度において関連があること,また,下肢や体幹に対して,運動速度トレーニングを行うことによって,従来の筋力トレーニングと同等またはそれ以上の歩行速度の改善が期待できることが先行研究によって明らかにされている。
高齢者を対象とした研究では,運動速度と移動能力の関連や,運動速度トレーニングの効果まで明らかになっているのに対して,若年者においては,走行速度と筋パワーとの関連のみで,動作速度に着目した研究は実施されていない。そこで,本研究では,走行速度と下肢運動速度の関連性を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は,下肢に整形外科的疾患のない,健常若年女性27名とした。対象者の基本属性は,年齢20.5±1.0歳,身長158.5±5.4cm,体重55.7±8.0kgであった。測定項目は,走行速度,下肢運動速度,等尺性筋力(膝関節伸展,屈曲,足関節底屈)とした。
20m走行時の,前3mを加速区間,後ろ7mを減速区間とし,中10mに赤外線センサー付ストップウォッチ(DEGITIMER II,竹井機器工業株式会社)のセンサーを設置し,10mの走行時間を測定した。その後,測定時間から,走行速度を算出した。下肢運動速度は,Van Roieらの方法に従い,等速性筋力測定装置(Biodex System3,Biodex社製)を使用し,アームレバーの重量以外は無負荷で測定を行った。膝関節屈曲90°から屈曲20°の範囲を可能な限り速く伸展するように口頭指示し,角速度を測定した。膝関節伸展,屈曲筋力は,Ringsbergらの方法に従い,等速性筋力測定装置を使用し,伸展は膝関節90°,屈曲は45°で等尺性筋力を測定した。足関節底屈筋力は,真田らの方法に従い,股関節を90°屈曲させた長座位姿勢で,Hand-Held Dynamometer(μTas F-100,アニマ社製)(以下HHD)を使用し,足関節底背屈0度で,等尺性筋力を測定した。
統計処理は,まず,走行速度,下肢運動速度,膝関節伸展,屈曲,足関節底屈筋力間の関係についてPearsonの相関係数を求めた。次に,多重共線性を考慮した上で,走行速度を従属変数,下肢運動速度,膝関節伸展筋力,膝関節屈曲筋力,足関節底屈筋力を独立変数とした重回帰分析を行った。全ての統計解析にはSPSS Ver. 21.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
走行速度の平均は5.0±0.5m/sec,下肢運動速度は407.2±32.1deg/sec,膝関節伸展筋力は139.2±30.3Nm,膝関節屈曲筋力は58.9±13.3Nm,足関節底屈筋力は56.5±15.3kgであった。走行速度とそれぞれの項目において,下肢運動速度(r=0.62),膝関節伸展筋力(r=0.42),膝関節屈曲筋力(r=0.37),足関節底屈筋力(r=0.47)で,すべて走行速度と有意な相関関係が認められた。走行速度を従属変数とした,重回帰分析の結果,下肢運動速度(adjustedβ=0.56)のみが有意な項目として選択され,自由度調整済み決定係数(R2)は0.37であった。
【考察】
下肢運動速度を含めたすべての項目において,走行速度と中等度の相関が認められ,また,重回帰分析によって,運動速度のみが選択されたことから,下肢の筋力以上に,運動速度が走行速度への寄与率が高いことが明らかとなった。
高齢者を対象とする先行研究では,運動速度の重要性が示されており,さらに運動速度トレーニングの有効性も認められている。今回の結果から,筋力低下などの機能低下のない若年者においても,筋力以上に運動速度が移動能力に重要である可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】
若年者においても,筋力だけでなく,運動速度にも着目すべきであることを示唆した点。
高齢者において,筋パワーは筋力以上に歩行速度と関連があること示されており,非常に重要な指標である。筋パワーは,筋力と運動速度との積で算出される。そのため,近年,運動速度の重要性が指摘されおり,上肢,体幹,下肢それぞれの運動速度と歩行速度において関連があること,また,下肢や体幹に対して,運動速度トレーニングを行うことによって,従来の筋力トレーニングと同等またはそれ以上の歩行速度の改善が期待できることが先行研究によって明らかにされている。
高齢者を対象とした研究では,運動速度と移動能力の関連や,運動速度トレーニングの効果まで明らかになっているのに対して,若年者においては,走行速度と筋パワーとの関連のみで,動作速度に着目した研究は実施されていない。そこで,本研究では,走行速度と下肢運動速度の関連性を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は,下肢に整形外科的疾患のない,健常若年女性27名とした。対象者の基本属性は,年齢20.5±1.0歳,身長158.5±5.4cm,体重55.7±8.0kgであった。測定項目は,走行速度,下肢運動速度,等尺性筋力(膝関節伸展,屈曲,足関節底屈)とした。
20m走行時の,前3mを加速区間,後ろ7mを減速区間とし,中10mに赤外線センサー付ストップウォッチ(DEGITIMER II,竹井機器工業株式会社)のセンサーを設置し,10mの走行時間を測定した。その後,測定時間から,走行速度を算出した。下肢運動速度は,Van Roieらの方法に従い,等速性筋力測定装置(Biodex System3,Biodex社製)を使用し,アームレバーの重量以外は無負荷で測定を行った。膝関節屈曲90°から屈曲20°の範囲を可能な限り速く伸展するように口頭指示し,角速度を測定した。膝関節伸展,屈曲筋力は,Ringsbergらの方法に従い,等速性筋力測定装置を使用し,伸展は膝関節90°,屈曲は45°で等尺性筋力を測定した。足関節底屈筋力は,真田らの方法に従い,股関節を90°屈曲させた長座位姿勢で,Hand-Held Dynamometer(μTas F-100,アニマ社製)(以下HHD)を使用し,足関節底背屈0度で,等尺性筋力を測定した。
統計処理は,まず,走行速度,下肢運動速度,膝関節伸展,屈曲,足関節底屈筋力間の関係についてPearsonの相関係数を求めた。次に,多重共線性を考慮した上で,走行速度を従属変数,下肢運動速度,膝関節伸展筋力,膝関節屈曲筋力,足関節底屈筋力を独立変数とした重回帰分析を行った。全ての統計解析にはSPSS Ver. 21.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【結果】
走行速度の平均は5.0±0.5m/sec,下肢運動速度は407.2±32.1deg/sec,膝関節伸展筋力は139.2±30.3Nm,膝関節屈曲筋力は58.9±13.3Nm,足関節底屈筋力は56.5±15.3kgであった。走行速度とそれぞれの項目において,下肢運動速度(r=0.62),膝関節伸展筋力(r=0.42),膝関節屈曲筋力(r=0.37),足関節底屈筋力(r=0.47)で,すべて走行速度と有意な相関関係が認められた。走行速度を従属変数とした,重回帰分析の結果,下肢運動速度(adjustedβ=0.56)のみが有意な項目として選択され,自由度調整済み決定係数(R2)は0.37であった。
【考察】
下肢運動速度を含めたすべての項目において,走行速度と中等度の相関が認められ,また,重回帰分析によって,運動速度のみが選択されたことから,下肢の筋力以上に,運動速度が走行速度への寄与率が高いことが明らかとなった。
高齢者を対象とする先行研究では,運動速度の重要性が示されており,さらに運動速度トレーニングの有効性も認められている。今回の結果から,筋力低下などの機能低下のない若年者においても,筋力以上に運動速度が移動能力に重要である可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】
若年者においても,筋力だけでなく,運動速度にも着目すべきであることを示唆した点。