第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述12

小児理学療法2

Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM 第6会場 (ホールD7)

座長:中野尚子(杏林大学), 木原秀樹(長野県立こども病院 リハビリテーション科)

[O-0807] 脳性麻痺患者の上肢筋に対するボツリヌス療法により携帯電話操作の安楽性が向上した症例

大谷知浩1, 篠原智行1, 和田直樹2,3 (1.日高病院リハビリテーションセンター急性期リハビリ室, 2.群馬大学医学部附属病院リハビリテーション部, 3.日高病院リハビリテーションセンター)

Keywords:脳性麻痺, ボツリヌス治療, 携帯電話操作

【目的】
「左肩が痛い,携帯電話のメールを楽に操作したい」という脳性麻痺患者の訴えに対し,ボツリヌス治療を併用し鎮痛効果と携帯電話(携帯)操作の安楽性向上を目指した。
【症例提示】
50歳代,女性。30歳代より週1回の外来リハ(理学療法,言語聴覚療法)を開始した。アテトーゼ型脳性麻痺があり生活全般に介助が必要であった。また,言語障害があり,聞き手の推測や五十音表などが必要であった。社会資源は,居宅介護などを利用し,その連絡は本人が携帯メールで行っていた。しかし,携帯操作に伴い左上腕二頭筋近位部にNumerical Rating Scale(NRS)5の疼痛を認めた。筋緊張はModified Ashworth Scale(MAS)で上腕二頭筋が左右3,関節可動域測定(ROM;右/左)は,肩屈曲40°/70°,肘伸展-120°/-90°であった。携帯操作は,携帯をテーブルに置き体幹を屈曲させ左中指で操作していた。
【経過と考察】
ボツリヌス毒素は左上腕二頭筋と左僧帽筋上部に総量100単位を分注された。投与後3週後はMAS1,ROMは左肩屈曲90°,左肘伸展-20°であった。NRSは5で著変なかった。理学療法では,携帯操作に伴う頸部の伸展・左回旋・左側屈,左肩甲帯挙上,左肘屈曲に対し座位での体幹練習や,ボツリヌス毒素の効果に合わせた左肩・肘の屈伸運動を実施した。携帯操作感の経過は,3週後に脱力感を抱き「メールが打ち難い」と聞かれたが,4週後からは少しずつ慣れ,6週後になると「楽になった」と携帯操作感の安楽性が向上し,操作場面では体幹と左肘の過度な屈曲が軽減した。
アテトーゼ型脳性麻痺では全身の筋緊張が亢進と現弱を繰り返すため,治療効果が乏しいとされているが,対象のように上肢の不随意運動が特定部位に定型的に起こる場合にはボツリヌス療法が適応となり携帯操作の安楽性向上に寄与したと考えられた。一方,鎮痛効果は得られず,今回投与した部位以外の原因が考えられ継続的な実施を対象は望まなかった。