第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

参加型症例研究ディスカッション 口述12

小児理学療法2

2015年6月7日(日) 13:10 〜 14:10 第6会場 (ホールD7)

座長:中野尚子(杏林大学), 木原秀樹(長野県立こども病院 リハビリテーション科)

[O-0809] 既往に脳性麻痺を有した頸髄症症例に対する独居復帰への支援

柄澤方子, 石井達也 (IMSグループイムス板橋リハビリテーション病院)

キーワード:頸髄症, 課題指向型アプローチ, 在宅支援

【目的】
頸髄症は脳性麻痺の二次障害のひとつに挙げられる。松尾らは運動機能の著しい低下により,受傷前の生活活動範囲や生活様式が限局されることが多く,独歩自立し健常者と同等の職業に従事していた人が寝たきりとなることもあると報告している。今回,既往に脳性麻痺を有しC6-7狭窄の頸髄症を受傷した後,C6-7-Th1椎体固定術を施行した症例を担当し,歩行での独居復帰に至ったため報告する。
【症例提示】
症例は71歳,男性。歩行障害が生じ,当院でのリハビリ開始に至るまで6ヶ月が経過していた。当院入院時,日本整形外科学会頸髄症治療成績判定基準(以下:JOA)は8.5点,Functional Independence Measure(以下:FIM)は50点,歩行能力は左下肢に二―ブレースと短下肢装具を使用し後方より重度介助であった。
【経過と考察】
約3ヶ月の理学療法介入により,JOAは10.5点,FIMは96点となり,両側4点杖と左下肢に短下肢装具を使用した歩行が20m可能となった。しかし,それ以上の身体機能の著しい改善は認められなかった。独居復帰にあたり,自宅の環境整備と獲得した能力の適応を目的に自宅への外出練習を繰り返し,生活場面での問題解決と修正を中心に介入した。これらによって自宅内の移動,トイレ動作や玄関動作が自立となり独居復帰が可能となった。
潮見らは,日常生活の困難な機能的運動課題に固有の問題解決を試み,多様な環境に適応し,運動課題を達成するための様々な方法を習得することが課題指向型アプローチの特色であるとしている。またこれは,病期に関わらず日常生活活動の改善に対しても有効であることが示されている。既往に脳性麻痺を有した頸髄症症例の予後が不良である一方で,本症例が独居復帰に至った要因のひとつとして課題指向型アプローチの観点からの介入が挙げられ,身体機能の改善が見込まれない症例において課題指向型アプローチによる日常生活の自立が達成される可能性が考えられる。