[O-0814] 低温サウナによるプレコンディショニングは腎臓虚血再灌流傷害における腎機能障害を抑制する
キーワード:腎虚血再灌流障害, 低温サウナ, プレコンディショニング
【はじめに,目的】
循環血流減少や脱水等を原因とする虚血性急性腎不全(ARF)は,主要な臨床問題である。現在,ARFモデルのひとつに,腎虚血再灌流障害(IRI)動物モデルが用いられている。我々はこれまでの実験で,深部体温を約2℃上昇させるマイルドな低温サウナ(LTS)が腎不全マウスモデルの腎機能を保護することを報告してきた。近年,低温サウナによるプレコンディショニングが腎障害を抑制したという報告があった。本研究の目的は,我々の用いているLTSをプレコンディショニング刺激として使用したとき,IRIマウスモデルにおける腎障害を抑制するか確認することである。
【方法】
雄性マウス(C3H系統,11週齢,21~26g)17匹を実験動物として使用した。無作為に,IRI手術前にLTSを行ったマウス(IRIS,n=6),IRI手術のみのマウス(ISIC,n=6),室温(25℃)介入後に偽手術を施したマウス(SC,n=5)の3群に分けた。SC群をコントロールとした。IRISマウスには,LTSによる水分損失の影響を抑えるためLTS直前に生理食塩水(3%体重,37℃)を腹腔内投与した。IRISマウスは39℃で15分間加温した後,上昇した深部体温を維持するために35℃で20分間保温した。IRICマウスは同じ時間,25℃のインキュベータに入れた。LTSから12時間後に,両側腎静脈をブルドック鉗子で40分間虚血した。血液サンプルおよび両側の腎臓は,IRI手術から24時間後に採取した。我々は,腎障害の指標として,血漿クレアチニン(Cr)および血中尿素窒素(BUN)を評価した。また,ヘマトキシリン-エオジン,過ヨウ素酸シッフ,およびアザンで染色した腎組織は,病理専門医が盲検下に評価した。統計分析は,2群間比較にWelchのt検定を用い,SC群との差異を決定するためにDunnett検定を使用した。P値<0.05を統計的有意差ありとみなした。
【結果】
実験終了時点において,IRIマウスは,SCマウスに比して有意な体重減少を認めた(SC:24.4±0.7g,IRIC:22.9±1.0g,IRIS:23.0±1.4g,P<0.01)。IRICとIRISマウスの体重に有意差は認められなかった。IRIマウスのCrおよびBUN値はSCマウスに比して有意に上昇した(P<0.01)。IRISマウスのCr値はIRICマウスと比して有意に低下した(IRIS:1.1±0.3 mg/ml,IRIC:1.9±0.8 mg/ml,P<0.05)。また,BUNにおいてもIRISマウスはIRICマウスに比して有意に低下していた(IRIS:119±27 mg/ml,IRIC:152±30 mg/ml,P<0.05)。尿細管損傷スコアはIRICマウスに比べ,IRISマウスで有意に低値を示した(P<0.05)。
【考察】
今回の研究結果は先行研究同様に,IRIに対し,LTSが腎障害マーカーであるCrやBUNを有意に抑制した。尿細管はエネルギー代謝が高く,虚血の影響が強く現れる組織である。尿細管損傷スコアはLTSによって有意に低値を示した。LTSは血液再分配を起こすとともに熱ショックタンパクなど細胞恒常性に関わるタンパク発現を誘導することから,これらの現象が腎組織や尿細管に保護的に作用した可能性が示唆される。LTSによる腎障害の軽減機序の解明は今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法の知識を生活に活かすことは障害予防の観点から重要なことである。今回の結果はLTSが腎組織において虚血耐性を高めることができることを示した。生活習慣の中にLTSを組み込むことで,急性腎障害や腎移植手術のような状況において,腎組織を保護し,障害の軽減や術後合併症の軽減に寄与できる可能性が期待できる。
循環血流減少や脱水等を原因とする虚血性急性腎不全(ARF)は,主要な臨床問題である。現在,ARFモデルのひとつに,腎虚血再灌流障害(IRI)動物モデルが用いられている。我々はこれまでの実験で,深部体温を約2℃上昇させるマイルドな低温サウナ(LTS)が腎不全マウスモデルの腎機能を保護することを報告してきた。近年,低温サウナによるプレコンディショニングが腎障害を抑制したという報告があった。本研究の目的は,我々の用いているLTSをプレコンディショニング刺激として使用したとき,IRIマウスモデルにおける腎障害を抑制するか確認することである。
【方法】
雄性マウス(C3H系統,11週齢,21~26g)17匹を実験動物として使用した。無作為に,IRI手術前にLTSを行ったマウス(IRIS,n=6),IRI手術のみのマウス(ISIC,n=6),室温(25℃)介入後に偽手術を施したマウス(SC,n=5)の3群に分けた。SC群をコントロールとした。IRISマウスには,LTSによる水分損失の影響を抑えるためLTS直前に生理食塩水(3%体重,37℃)を腹腔内投与した。IRISマウスは39℃で15分間加温した後,上昇した深部体温を維持するために35℃で20分間保温した。IRICマウスは同じ時間,25℃のインキュベータに入れた。LTSから12時間後に,両側腎静脈をブルドック鉗子で40分間虚血した。血液サンプルおよび両側の腎臓は,IRI手術から24時間後に採取した。我々は,腎障害の指標として,血漿クレアチニン(Cr)および血中尿素窒素(BUN)を評価した。また,ヘマトキシリン-エオジン,過ヨウ素酸シッフ,およびアザンで染色した腎組織は,病理専門医が盲検下に評価した。統計分析は,2群間比較にWelchのt検定を用い,SC群との差異を決定するためにDunnett検定を使用した。P値<0.05を統計的有意差ありとみなした。
【結果】
実験終了時点において,IRIマウスは,SCマウスに比して有意な体重減少を認めた(SC:24.4±0.7g,IRIC:22.9±1.0g,IRIS:23.0±1.4g,P<0.01)。IRICとIRISマウスの体重に有意差は認められなかった。IRIマウスのCrおよびBUN値はSCマウスに比して有意に上昇した(P<0.01)。IRISマウスのCr値はIRICマウスと比して有意に低下した(IRIS:1.1±0.3 mg/ml,IRIC:1.9±0.8 mg/ml,P<0.05)。また,BUNにおいてもIRISマウスはIRICマウスに比して有意に低下していた(IRIS:119±27 mg/ml,IRIC:152±30 mg/ml,P<0.05)。尿細管損傷スコアはIRICマウスに比べ,IRISマウスで有意に低値を示した(P<0.05)。
【考察】
今回の研究結果は先行研究同様に,IRIに対し,LTSが腎障害マーカーであるCrやBUNを有意に抑制した。尿細管はエネルギー代謝が高く,虚血の影響が強く現れる組織である。尿細管損傷スコアはLTSによって有意に低値を示した。LTSは血液再分配を起こすとともに熱ショックタンパクなど細胞恒常性に関わるタンパク発現を誘導することから,これらの現象が腎組織や尿細管に保護的に作用した可能性が示唆される。LTSによる腎障害の軽減機序の解明は今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法の知識を生活に活かすことは障害予防の観点から重要なことである。今回の結果はLTSが腎組織において虚血耐性を高めることができることを示した。生活習慣の中にLTSを組み込むことで,急性腎障害や腎移植手術のような状況において,腎組織を保護し,障害の軽減や術後合併症の軽減に寄与できる可能性が期待できる。