[O-0821] 二次性サルコペニアに対するホームエクササイズの効果の検討
~6ヶ月間反復起立を実施した通所リハビリテーション利用者の筋量の変化~
Keywords:サルコペニア, 筋量, ホームエクササイズ
【はじめに,目的】
近年,加齢に伴い筋量の低下を起こすサルコペニアが注目されている。サルコペニアには加齢のみが原因となる原発性サルコペニアに加え,広義のサルコペニアとして不活動や栄養,疾患に関連した二次性サルコペニアが存在する。二次性サルコペニアは特に入院中の不活動やADL能力が低い要介護高齢者では容易に発症し,悪化しやすい。しかしながら,在宅生活においてその治療介入は難渋することが多い。
本研究の目的は二次性サルコペニアを呈した在宅要介護高齢者のホームエクササイズ実施の効果を検討することとした。
【対象および方法】
対象は要介護認定を有する当院通所リハビリテーション利用者51名の中で平成25年12月時点でサルコペニア診断基準(年齢>65歳・歩行速度<0.8m/sかつSMI:Skeletal Muscle mass Index,男性<7.0kg/m2,<女性5.8kg/m2)に該当し,立ち上がりが可能な方26名とした。
方法は26名を無作為に2群に分け,ホームエクササイズ実施群(13名),非実施群(13名)とし,両群の通所リハビリテーション利用時のプログラムは共通の内容を実施した。両群の研究開始前後のSMIを3か月おきに2回測定した(Inbody s10,Biospace製)。ホームエクササイズ実施群には,自宅で反復起立を行うように指導し,自宅での立ち上がり回数を自主トレーニング用紙に記録させた。自主トレーニング用紙は1ヶ月毎に通所リハビリテーション利用時で配布,回収した。なお,回数や頻度については,各時に設定させた。
立ち上がり実施に伴うSMIの変化を,反復測定の二元配置分散分析を用い分析した。また,有意な交互作用が認められた場合には,各群を反復測定の一元配置分散分析で分析した。多重比較にはジェイファーの方法を用いた。統計学的有意水準は5%以下とした。
【結果】
ホームエクササイズ実施群は,研究途中でドロップアウトしたものが2名いたため,総数11名とした。なおドロップアウトの原因内訳としては入院1名,途中解約1名であった。
二元配置分散分析の結果,有意な交互作用が認められた(F=5.36,p=0.017)。ホームエクササイズ実施群ではSMIが有意に向上した(F=10.73,p=0.001)。多重比較において,開始時5.56kg/m2と3ヶ月後5.76kg/m2では有意な差を認めなかったが(p=0.078),開始時5.56kg/m2と6カ月後6.03kg/m2(p=0.003),3ヶ月後と6カ月後(p=0.004)との間には有意な向上がみられた。非実施群では有意な向上は認めなかった(F=0.27,p=0.667)。
またホームエクササイズ実施群においては11名中5名(45.4%)がサルコペニアの基準を上回り,非実施群では14名中2名(14.2%)がそれを上回った。
【考察】
サルコペニアに対する治療介入には栄養と運動が必要であるといわれている。本研究では在宅の要介護高齢者に対し,運動に対する介入のみで筋量の向上が認められた。その要因として低栄養状態のものが少なかったことが考えられる。しかしながら二次性のサルコペニア有病者の筋量減少の原因に不活動は大きな割合を占めており,日常的に立ち上がりを行う習慣を付けることでも筋量上昇が認められた。歩行が自立できていない方でも立ち上がりが物的介助を利用しで自立,もしくは介助での実施ができれば,筋量の維持・向上は可能であった。対象には歩行不可能の症例や記録が自己にて難しい症例も含まれており,本人以外の自主トレーニングに対する援助や介助も必要であった。ただし治療期間として3カ月以上の期間を要しており,継続的な他者からのモニタリングと運動の習慣化への働きがけが重要であると考えられる。
今後の課題として,本研究では立ち上がり実施回数を対象者本人に自己決定させているため,実施頻度や実施回数にばらつきがみられる。そのため筋量向上に必要な立ち上がり回数は不明瞭である。今後さらなる研究が必要であると考える。
また対象が在宅生活であるため,食事の状況や摂取している栄養素の偏りなどは不明である。サルコペニアの治療介入を効果的に行う上で栄養状態やたんぱく質摂取量も考慮すべきである。栄養面に対する地域要介護者に対する援助も同時に行なう事が出来れば,より効率的かつ効果的に筋量上昇が出来るものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
地域要介護者のfrailtyやサルコペニアを予防・改善させることは今後の理学療法や医療の課題である。低負荷で継続的な運動により筋量の向上が認められたことは,二次性サルコペニアに対する介入方法の基礎となり,大変意義深い。
近年,加齢に伴い筋量の低下を起こすサルコペニアが注目されている。サルコペニアには加齢のみが原因となる原発性サルコペニアに加え,広義のサルコペニアとして不活動や栄養,疾患に関連した二次性サルコペニアが存在する。二次性サルコペニアは特に入院中の不活動やADL能力が低い要介護高齢者では容易に発症し,悪化しやすい。しかしながら,在宅生活においてその治療介入は難渋することが多い。
本研究の目的は二次性サルコペニアを呈した在宅要介護高齢者のホームエクササイズ実施の効果を検討することとした。
【対象および方法】
対象は要介護認定を有する当院通所リハビリテーション利用者51名の中で平成25年12月時点でサルコペニア診断基準(年齢>65歳・歩行速度<0.8m/sかつSMI:Skeletal Muscle mass Index,男性<7.0kg/m2,<女性5.8kg/m2)に該当し,立ち上がりが可能な方26名とした。
方法は26名を無作為に2群に分け,ホームエクササイズ実施群(13名),非実施群(13名)とし,両群の通所リハビリテーション利用時のプログラムは共通の内容を実施した。両群の研究開始前後のSMIを3か月おきに2回測定した(Inbody s10,Biospace製)。ホームエクササイズ実施群には,自宅で反復起立を行うように指導し,自宅での立ち上がり回数を自主トレーニング用紙に記録させた。自主トレーニング用紙は1ヶ月毎に通所リハビリテーション利用時で配布,回収した。なお,回数や頻度については,各時に設定させた。
立ち上がり実施に伴うSMIの変化を,反復測定の二元配置分散分析を用い分析した。また,有意な交互作用が認められた場合には,各群を反復測定の一元配置分散分析で分析した。多重比較にはジェイファーの方法を用いた。統計学的有意水準は5%以下とした。
【結果】
ホームエクササイズ実施群は,研究途中でドロップアウトしたものが2名いたため,総数11名とした。なおドロップアウトの原因内訳としては入院1名,途中解約1名であった。
二元配置分散分析の結果,有意な交互作用が認められた(F=5.36,p=0.017)。ホームエクササイズ実施群ではSMIが有意に向上した(F=10.73,p=0.001)。多重比較において,開始時5.56kg/m2と3ヶ月後5.76kg/m2では有意な差を認めなかったが(p=0.078),開始時5.56kg/m2と6カ月後6.03kg/m2(p=0.003),3ヶ月後と6カ月後(p=0.004)との間には有意な向上がみられた。非実施群では有意な向上は認めなかった(F=0.27,p=0.667)。
またホームエクササイズ実施群においては11名中5名(45.4%)がサルコペニアの基準を上回り,非実施群では14名中2名(14.2%)がそれを上回った。
【考察】
サルコペニアに対する治療介入には栄養と運動が必要であるといわれている。本研究では在宅の要介護高齢者に対し,運動に対する介入のみで筋量の向上が認められた。その要因として低栄養状態のものが少なかったことが考えられる。しかしながら二次性のサルコペニア有病者の筋量減少の原因に不活動は大きな割合を占めており,日常的に立ち上がりを行う習慣を付けることでも筋量上昇が認められた。歩行が自立できていない方でも立ち上がりが物的介助を利用しで自立,もしくは介助での実施ができれば,筋量の維持・向上は可能であった。対象には歩行不可能の症例や記録が自己にて難しい症例も含まれており,本人以外の自主トレーニングに対する援助や介助も必要であった。ただし治療期間として3カ月以上の期間を要しており,継続的な他者からのモニタリングと運動の習慣化への働きがけが重要であると考えられる。
今後の課題として,本研究では立ち上がり実施回数を対象者本人に自己決定させているため,実施頻度や実施回数にばらつきがみられる。そのため筋量向上に必要な立ち上がり回数は不明瞭である。今後さらなる研究が必要であると考える。
また対象が在宅生活であるため,食事の状況や摂取している栄養素の偏りなどは不明である。サルコペニアの治療介入を効果的に行う上で栄養状態やたんぱく質摂取量も考慮すべきである。栄養面に対する地域要介護者に対する援助も同時に行なう事が出来れば,より効率的かつ効果的に筋量上昇が出来るものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
地域要介護者のfrailtyやサルコペニアを予防・改善させることは今後の理学療法や医療の課題である。低負荷で継続的な運動により筋量の向上が認められたことは,二次性サルコペニアに対する介入方法の基礎となり,大変意義深い。