[O-0826] 急性心筋梗塞後の再灌流療法成功例における非責任冠動脈の狭窄率に与えるBody mass index(BMI)の影響
キーワード:急性心筋梗塞, 再発予防, BMI
【はじめに,目的】
心筋梗塞二次予防に関するガイドライン2011年改訂版(以下ガイドライン)では,再発予防のために血圧管理,脂質管理,体重の管理,糖尿病管理,運動療法,禁煙指導などを挙げている。しかし,実臨床ではこれだけでの予防が難しい場合を経験する。
急性冠症候群症例を3年間追跡したProviding Regional Observations to Study Predictors of Events in the Coronary(PROSPECT)試験では,フォローアップ期間中に非責任血管のイベントを11.6%に認め,それに関連する因子としてPercutaneous coronary interventionの既往歴,インスリン治療中の糖尿病が指摘されている。その中で,運動療法に感応する可変因子は糖尿病が考えられる。糖尿病の基盤にはインスリン抵抗性を有することが多く,Ohnishi H, et al(2005)の報告では,7年間追跡した対象者においてインスリン抵抗性と肥満は密接に関係していると述べている。また,Chei CL, et al(2008)の報告では,20歳時から中年までに10kg以上の体重増加で有意に冠動脈疾患リスクが増加すると述べている。しかし,短期的な体格の変化と心血管イベントの関係を検討した先行研究は見当たらない。
そこで今回,急性心筋梗塞症例の短期的な冠動脈狭窄の進行にBMIが影響を及ぼすか否かを検討した。
【方法】
対象は,2012年10月から2014年1月に急性心筋梗塞として当院で再灌流療法を施された60症例のうち術後平均8ヶ月目にfollow-up coronary angiography(CAG;冠動脈造影検査)が実施され,患者属性に必要な各種データが得られた18例(男性14例,女性4例,平均年齢66.6±12.0歳)。
Follow-up CAGの結果から新規高度狭窄を認めた症例を進行群(P群),認めなかった症例を良好群(G群)とした。高度狭窄とは,CAG結果からAHA分類で90%以上の狭窄とした。検討項目は,患者基礎情報(年齢,性別,既往歴,BMI),心臓カテーテル検査および治療結果,心血管機能(EF,CAVI,血圧),血液データ(peakCK,Hb,Alb,eGFR,BNP,L/H比,EPA/AA比,HbA1C),入院経過(在院日数,治療経過,合併症),運動機能(膝関節伸展筋力,6分間歩行試験)とした。2群間の比較には,follow-up CAG時の数値から退院時の数値を引いた変化値を用いた。名義変数については相対度数で処理した。統計学的検定にはMann-Whitney U検定,χ2検定を用い,有意水準を1%とした。
【結果】
P群:5例,G群:13例であった。BMIにおいてP群は平均1.8±1.1kg/m2の増加,一方,G群は平均0.36±0.9 kg/m2の増加(どちらも18.5~24.9kg/m2の範囲内)であり,2群間で統計学的有意差(P=0.006)を認めた。その他の項目では統計学的有意差を認めなかった。
【考察】
ガイドラインでは,再発予防には体重の管理が推奨されている。その目標はBMIを18.5~24.9kg/m2の範囲に保つことであり増加量に関する記述はない。本研究結果は,正常範囲内での増加に有意差を認めたことから体重増加が新規高度狭窄の関連因子である可能性が考えられる。メタボリックドミノの概念では,生活習慣を起因とした肥満が動脈硬化性疾患のスタートと位置付けられている。通常,肥満に至る前には体重増加を認めるはずである。本研究における調査期間が短期間であったために肥満になる前段階として体重が増加した可能性が考えられる。ただ,今回は急性心筋梗塞の一部の患者が対象であること,アウトカムを狭窄率の進行としたことから多くの先行研究と条件が異なる点が本研究の限界である。
【理学療法学研究としての意義】
心臓リハビリテーションの目的は,生命予後の改善である。理学療法士は運動療法をツールとしてその目的達成に寄与している。本研究結果で得られた関連因子としての体重増加をコントロールするための運動療法による介入は,冠動脈狭窄の進行予防の1つの選択肢となりうる。ただし,本研究では介入による関係性は不明であるため,介入研究を含めた継続的な調査・研究の必要性が示唆された。
心筋梗塞二次予防に関するガイドライン2011年改訂版(以下ガイドライン)では,再発予防のために血圧管理,脂質管理,体重の管理,糖尿病管理,運動療法,禁煙指導などを挙げている。しかし,実臨床ではこれだけでの予防が難しい場合を経験する。
急性冠症候群症例を3年間追跡したProviding Regional Observations to Study Predictors of Events in the Coronary(PROSPECT)試験では,フォローアップ期間中に非責任血管のイベントを11.6%に認め,それに関連する因子としてPercutaneous coronary interventionの既往歴,インスリン治療中の糖尿病が指摘されている。その中で,運動療法に感応する可変因子は糖尿病が考えられる。糖尿病の基盤にはインスリン抵抗性を有することが多く,Ohnishi H, et al(2005)の報告では,7年間追跡した対象者においてインスリン抵抗性と肥満は密接に関係していると述べている。また,Chei CL, et al(2008)の報告では,20歳時から中年までに10kg以上の体重増加で有意に冠動脈疾患リスクが増加すると述べている。しかし,短期的な体格の変化と心血管イベントの関係を検討した先行研究は見当たらない。
そこで今回,急性心筋梗塞症例の短期的な冠動脈狭窄の進行にBMIが影響を及ぼすか否かを検討した。
【方法】
対象は,2012年10月から2014年1月に急性心筋梗塞として当院で再灌流療法を施された60症例のうち術後平均8ヶ月目にfollow-up coronary angiography(CAG;冠動脈造影検査)が実施され,患者属性に必要な各種データが得られた18例(男性14例,女性4例,平均年齢66.6±12.0歳)。
Follow-up CAGの結果から新規高度狭窄を認めた症例を進行群(P群),認めなかった症例を良好群(G群)とした。高度狭窄とは,CAG結果からAHA分類で90%以上の狭窄とした。検討項目は,患者基礎情報(年齢,性別,既往歴,BMI),心臓カテーテル検査および治療結果,心血管機能(EF,CAVI,血圧),血液データ(peakCK,Hb,Alb,eGFR,BNP,L/H比,EPA/AA比,HbA1C),入院経過(在院日数,治療経過,合併症),運動機能(膝関節伸展筋力,6分間歩行試験)とした。2群間の比較には,follow-up CAG時の数値から退院時の数値を引いた変化値を用いた。名義変数については相対度数で処理した。統計学的検定にはMann-Whitney U検定,χ2検定を用い,有意水準を1%とした。
【結果】
P群:5例,G群:13例であった。BMIにおいてP群は平均1.8±1.1kg/m2の増加,一方,G群は平均0.36±0.9 kg/m2の増加(どちらも18.5~24.9kg/m2の範囲内)であり,2群間で統計学的有意差(P=0.006)を認めた。その他の項目では統計学的有意差を認めなかった。
【考察】
ガイドラインでは,再発予防には体重の管理が推奨されている。その目標はBMIを18.5~24.9kg/m2の範囲に保つことであり増加量に関する記述はない。本研究結果は,正常範囲内での増加に有意差を認めたことから体重増加が新規高度狭窄の関連因子である可能性が考えられる。メタボリックドミノの概念では,生活習慣を起因とした肥満が動脈硬化性疾患のスタートと位置付けられている。通常,肥満に至る前には体重増加を認めるはずである。本研究における調査期間が短期間であったために肥満になる前段階として体重が増加した可能性が考えられる。ただ,今回は急性心筋梗塞の一部の患者が対象であること,アウトカムを狭窄率の進行としたことから多くの先行研究と条件が異なる点が本研究の限界である。
【理学療法学研究としての意義】
心臓リハビリテーションの目的は,生命予後の改善である。理学療法士は運動療法をツールとしてその目的達成に寄与している。本研究結果で得られた関連因子としての体重増加をコントロールするための運動療法による介入は,冠動脈狭窄の進行予防の1つの選択肢となりうる。ただし,本研究では介入による関係性は不明であるため,介入研究を含めた継続的な調査・研究の必要性が示唆された。