第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述13

治療機器・生活支援

Sun. Jun 7, 2015 2:20 PM - 3:20 PM 第3会場 (ホールB7(1))

座長:斉藤秀之(筑波記念病院 リハビリテーション部), 廣瀬秀行(元 国立障害者リハビリテーションセンター研究所)

[O-0841] 車いす坐位の体圧分散

体圧に偏側性が生じた一症例

鈴木裕之, 大前圭裕 (医療法人社団誠馨会千葉中央メディカルセンター)

Keywords:褥瘡, 車いす, 体圧

【目的】急速に高齢化が進むわが国において,褥瘡は深刻な問題であり,その新規発生率は高齢者施設でもっとも高い。また高齢者施設での褥瘡有病者の4割は日常生活度B2であり,ベッド上ばかりでなく車いす上における予防も考慮しなければならない。高齢者施設では車いす上で過ごす時間が8時間以上になるとの報告があり,車いす上では1時間ごとに体位交換をすべきとするガイドラインと比較すると,自身で体位交換が出来ない場合の褥瘡発生リスクは高いことがわかる。その為,自身で体位交換が出来ない患者の車いす選定は重要な課題となる。今回,圧分布測定装置を用いて車いす選定を行った患者の知見を以下に報告する。
【症例提示】性別:女性,年齢:82歳,主病名:脊髄硬膜外血腫(髄損傷高位:Th7,改良Frankelの分類:A),既往:左大腿骨頚部骨折,動作能力:車いす上での体位交換は不十分。
【経過と考察】施設で使用する車いすの選定に際し,圧分布測定を行った。まず,モジュール型車いすの坐面に体圧分散マットを既成状態で使用したが,左坐骨部の圧が高値を示した。その為,体圧分散マットの左側が高くなる様に厚さを調整した。結果,左坐骨への偏りは解消され,体圧は分散された。体圧に偏側性が生じたのは,既往の大腿骨頚部骨折により生じた,筋萎縮が原因と考えられる。筋萎縮は本来あるべき軟部組織のクッション性を低下させ体圧を上昇させる。さらに,それが一側に生じた場合は厚差による骨盤の傾斜が起こり,同側の圧迫を助長する。よって,左坐骨に集中した体圧は,体圧分散シートを敷くだけでは解消されず,坐面に高低差をつける必要があった。一側下肢の筋萎縮を起こす高齢者に多い疾患としては,大腿骨頚部骨折や脳血管障害等が挙げられ,この場合も同様の対応が必要と考えられる。しかし,本邦の報告では,車いす上での体圧の偏側性について言及したものは少なく,今後さらなる調査が必要である。