[O-0845] めまい患者に対する前庭リハビリテーションの効果と関連因子
精神疾患の有無による比較
キーワード:前庭リハビリテーション, Dizziness Handicap Inventory, 精神疾患
【はじめに,目的】めまい患者は,男女比が1:2と女性に多く,加齢とともに増加する。めまい患者に対する前庭リハビリテーション(VR)は,欧米では理学療法士により行われているが,我が国では内山らの報告(1995)が散見される程度である。今後,めまい患者の増加が予想される中,我々理学療法士によるVRは,めまい患者の社会復帰および医療経済的な観点から重要な意義があると考えられる。一方で,高度な抑うつを呈する症例では,VRによるQOLの改善が得られにくいとの報告がある(新井ら,2009)。本研究では,精神疾患の有無におけるめまい患者に対するVRの効果とめまいの総合評価であるDizziness Handicap Inventory(DHI)の関連因子について検討した。
【方法】対象は,当院でVRを施行されためまい患者25名(年齢64.6±17.1歳,男性4名,女性21名)であった。精神疾患をあり群(PD群)9名,なし群(V群)16名であった。評価項目について,めまい重症度は,めまいの評価8点と自律神経評価2点の10点満点で構成され,点数が高いほど症状が重い。Berg Balance Scale(BBS)は,バランスに関する課題14項目56点満点で点数が高いほどバランス能力が高い。DHIは,めまいの総合評価で身体症状physical(DHI-P)7項目28点,情緒的症状Emotional(DHI-E)9項目36点,生活機能の障害Functional(DHI-F)9項目36点の100点満点で構成され,点数が高いほど障害が重い。統計学的分析は,SPSS Statistics 22.0(IBM)を使用した。VR前後の各評価の比較は対応のあるt検定を行った後,effect size(ES)を算出した。各評価のVR前後の差において,DHI-Fを従属変数,DHI-P,DHI-E,めまい重症度およびBBSの下位項目を独立変数とし,stepwise重回帰分析を行った。有意水準5%とした。
【結果】VR前後の各評価の比較について,PD群ではめまい重症度(ES=2.41),めまい評価(ES=2.46)が有意に低下したが(それぞれp<0.01),自律神経評価(ES=0.80)に有意差はなかった。VR後のBBS(ES=1.12),DHI(ES=0.83),DHI-F(ES=0.45),DHI-P(ES=1.49)は,有意に改善したが,DHI-E(ES=0.51)は変化がなかった。V群では,めまい重症度(ES=3.31),めまい評価(ES=3.24),自律神経評価(ES=2.21)が有意に低下した(それぞれp<0.01)。VR後のBBS(ES=1.79),DHI(ES=2.76),DHI-F(ES=2.02),DHI-P(ES=3.77)およびDHI-E(ES=1.64)は,有意に改善した(それぞれp<0.01)。重回帰モデルは,PD群ではDHI-F=0.93×DHI-E-1.01(R2=0.85),DHI-P=0.70×自律神経評価-6.00(R2=0.41),DHI-E=0.95×自律神経評価-0.67(R2=0.68),V群ではDHI-F=1.01×DHI-P+0.43×BBS移乗+7.35(R2=0.72),DHI-P=-0.76×BBS立位+3.13×自律神経評価-9.20(R2=0.70),DHI-E=2.53×めまい重症度+1.64(R2=0.52)であった。
【考察】めまい患者に対するVRのESは,V群では高い効果を有するが,PD群ではDHI-FおよびDHI-Eにおいては中等度の効果であった。また,PD群における重回帰モデルでは,DHI-FはDHI-E,DHI-Eは自律神経評価が選択された。慢性めまい患者の症状は,頭痛,吐き気,易疲労性などうつ病患者の身体症状と同様である(五島,2012)。また。うつによるめまいは,前庭機能障害が全くないにも関わらずめまいを感じる(萩野ら,2001)。そのため,精神疾患患者ではめまいの症状に対して,うつの影響が強いことが推察される。そのため,臨床心理士や家族からの心理的サポートを加える必要がある。V群では,DHI-FがDHI-PとBBS移乗,DHI-PがBBS立位および自律神経評価,DHI-Eではめまい重症度が選択された。V群における生活機能再獲得には,VRの前庭代償によるめまいの改善に加え,早期の立位,移乗の獲得による離床が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】めまい患者に対するVRは,前庭代償の促通によるめまい改善と早期離床の重要性と,PD群ではVRに加え心理的サポートが必要である。本研究は,様々な要因によるめまい患者に対するVRを施行する際の治療選択として意義があると考える。
【方法】対象は,当院でVRを施行されためまい患者25名(年齢64.6±17.1歳,男性4名,女性21名)であった。精神疾患をあり群(PD群)9名,なし群(V群)16名であった。評価項目について,めまい重症度は,めまいの評価8点と自律神経評価2点の10点満点で構成され,点数が高いほど症状が重い。Berg Balance Scale(BBS)は,バランスに関する課題14項目56点満点で点数が高いほどバランス能力が高い。DHIは,めまいの総合評価で身体症状physical(DHI-P)7項目28点,情緒的症状Emotional(DHI-E)9項目36点,生活機能の障害Functional(DHI-F)9項目36点の100点満点で構成され,点数が高いほど障害が重い。統計学的分析は,SPSS Statistics 22.0(IBM)を使用した。VR前後の各評価の比較は対応のあるt検定を行った後,effect size(ES)を算出した。各評価のVR前後の差において,DHI-Fを従属変数,DHI-P,DHI-E,めまい重症度およびBBSの下位項目を独立変数とし,stepwise重回帰分析を行った。有意水準5%とした。
【結果】VR前後の各評価の比較について,PD群ではめまい重症度(ES=2.41),めまい評価(ES=2.46)が有意に低下したが(それぞれp<0.01),自律神経評価(ES=0.80)に有意差はなかった。VR後のBBS(ES=1.12),DHI(ES=0.83),DHI-F(ES=0.45),DHI-P(ES=1.49)は,有意に改善したが,DHI-E(ES=0.51)は変化がなかった。V群では,めまい重症度(ES=3.31),めまい評価(ES=3.24),自律神経評価(ES=2.21)が有意に低下した(それぞれp<0.01)。VR後のBBS(ES=1.79),DHI(ES=2.76),DHI-F(ES=2.02),DHI-P(ES=3.77)およびDHI-E(ES=1.64)は,有意に改善した(それぞれp<0.01)。重回帰モデルは,PD群ではDHI-F=0.93×DHI-E-1.01(R2=0.85),DHI-P=0.70×自律神経評価-6.00(R2=0.41),DHI-E=0.95×自律神経評価-0.67(R2=0.68),V群ではDHI-F=1.01×DHI-P+0.43×BBS移乗+7.35(R2=0.72),DHI-P=-0.76×BBS立位+3.13×自律神経評価-9.20(R2=0.70),DHI-E=2.53×めまい重症度+1.64(R2=0.52)であった。
【考察】めまい患者に対するVRのESは,V群では高い効果を有するが,PD群ではDHI-FおよびDHI-Eにおいては中等度の効果であった。また,PD群における重回帰モデルでは,DHI-FはDHI-E,DHI-Eは自律神経評価が選択された。慢性めまい患者の症状は,頭痛,吐き気,易疲労性などうつ病患者の身体症状と同様である(五島,2012)。また。うつによるめまいは,前庭機能障害が全くないにも関わらずめまいを感じる(萩野ら,2001)。そのため,精神疾患患者ではめまいの症状に対して,うつの影響が強いことが推察される。そのため,臨床心理士や家族からの心理的サポートを加える必要がある。V群では,DHI-FがDHI-PとBBS移乗,DHI-PがBBS立位および自律神経評価,DHI-Eではめまい重症度が選択された。V群における生活機能再獲得には,VRの前庭代償によるめまいの改善に加え,早期の立位,移乗の獲得による離床が重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】めまい患者に対するVRは,前庭代償の促通によるめまい改善と早期離床の重要性と,PD群ではVRに加え心理的サポートが必要である。本研究は,様々な要因によるめまい患者に対するVRを施行する際の治療選択として意義があると考える。