第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター2

神経/脳損傷2

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0044] 痙性筋に対する筋力強化は有効か?

脳挫傷後の若年患者に対する走行動作獲得までのアプローチ

本多輝行1, 青山敏之2 (1.IMSグループイムス板橋リハビリテーション病院リハビリテーション科, 2.茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:筋力強化, 痙性, 走行動作

【目的】
従来,痙性筋に対し痙性増悪の懸念から筋力強化が避けられてきたケースは多い。しかし近年,痙性筋に対し筋力強化は有効であるとの報告が増えている。また段階的な筋力強化と反復練習が有効との報告も散見する。しかし走行など,より動的な課題を対象とした報告は少なく,その効果は不明である。本症例は下腿三頭筋に痙性と筋力低下を伴っていたものの,適切な難易度設定により筋力強化を反復して行った結果,走行動作の獲得に至ったため,理学療法所見を含め,考察を加え報告する。
【症例提示】
症例は20歳前半の男性である。交通事故を起因に右前頭葉脳挫傷,左急性硬膜下血腫と診断される。減圧開頭血腫除去術後,頭蓋形成術を実施した。受傷後75病日目に当院回復期病院へ入院となる。
【経過と考察】
左下腿三頭筋はMMT2,下腿最大周径は1cmの左右差があり,筋緊張はMAS2,足クローヌを認めたため,下腿三頭筋に著明な筋力低下と筋緊張亢進が観察された。走行動作は踵接地から足底接地時,筋緊張異常により,膝関節伸展位で接地し衝撃吸収作用が低下していた。また筋力低下により推進力は低下し,ストライド長短縮と飛翔期の消失を認め走行は困難であった。これらから筋緊張増悪を避け,下腿三頭筋の筋力強化が必要と考え,走行動作を想定した課題を易難度から開始した。その結果,3週間の介入によりMASに変化はなく,下腿三頭筋はMMT3,下腿最大周径の左右差は0.5cmまで筋力強化を認めた。走行動作において踵接地から足底接地時,足関節背屈角度の増大を認め,膝関節屈曲位での接地が可能となった。さらに筋力強化により推進力が向上し,スライド長拡大と飛翔期を認め走行動作が可能となった。よって,筋緊張亢進と筋力低下が混在する症例であっても,段階的な難易度設定での積極的な筋力強化を行うことにより,筋緊張亢進の増悪なく走行のようなより動的な動作の獲得が図れる可能性があると考える。