第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター3

神経/脳損傷3

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0052] 表面電極型FES装置による足部の運動感覚を契機に歩行を顕在学習した脳卒中片麻痺患者

沖田学1,2, 西村聡二1, 溝渕光3 (1.愛宕病院リハビリテーション部, 2.高知大学大学院医学系研究科, 3.愛宕病院脳神経センター)

Keywords:機能的電気刺激, 運動学習, 片麻痺

【目的】
脳卒中片麻痺者の歩行障害には,表面電極型FES装置が有効であるが短下肢装具と効果が同じだと報告されている(Bethoux,2014)。今回,このFES装置であるNESS L300®により歩行学習を進めた症例から装置特異性の学習効果が示された。症状分析と共に歩行分析計(MG-M1100)および半構造化面接によりその効果を検討したので報告する。
【症例提示】
対象は2週間入院した発症後10年経過した高次脳機能障害のない右片麻痺の60歳台女性である。下肢Br. stageIVで立位での背屈が軽度可能であった。深部感覚は正常だが表在は軽度鈍麻であった。歩行はOrtopを使用しT杖自立歩行であった。特徴は右重心移動ができずワイドベースとなり立脚期後半でスナッピング様の膝過伸展が出現しWisconsin Gait Scale(WGS)は29点であった。歩行時の右下肢を尋ねると「右脚の動きはわからない歩くだけ」と発言した。
運動療法は右下肢の感覚を基に運動する認知運動課題と共にNESSによる歩行練習を行った。このNESSとは歩行時に踵センサーが遊脚期を検知し深腓骨神経を刺激して無意識に背屈させる装置である。2週後に評価と共にNESSの運動学習要素を概念抽出した。
【経過と考察】
NESSにより歩行時の前脛骨筋の働き(収縮弛緩)が自己分析できた。さらに,認知運動課題時に意識下で足部を動かし易くなり裸足歩行ができた。10m装具努力性歩行の比較では,歩行速度27→28m/分,左右・上下とも重心の揺れ幅が減った。歩様はワイドベースが軽減しスナッピングが消失した(WGS26点)。また,面接より「FESによる運動感覚の分析」など3つの概念に集約された。なお,NESSを外すと以前より歩き難さを訴えた。
症例はNESSの歩行運動の変化に伴う電気刺激による筋収縮と筋弛緩の意識経験から,足関節の運動感覚(キネステジア)を獲得できた。この時のFES装置特異性の学習効果とは,動きを伴う筋活動への自己分析による顕在学習の学習初期段階への効果であった。