第50回日本理学療法学術大会

Presentation information

ポスター

症例研究 ポスター4

神経/脳損傷4

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0054] 狭い場所で生じるすくみ足の病態解釈と症状改善のためのアプローチ

奥埜博之1,2, 西島勇2, 河島則天3 (1.摂南総合病院リハビリテーション科, 2.沼津リハビリテーション病院, 3.国立障害者リハビリテーション研究所)

Keywords:パーキンソン病, すくみ足, 歩行

【目的】パーキンソン病(以下PD)における,「すくみ足(Freezing of Gait;以下FOG)」の発現機序については未だ不明な点が多く,L-dopa系薬剤が効果を示さないケースも多い。アプローチに関しては,一般的には視聴覚キューなどを用いたものがよく行われているが,その効果は一時的であることが報告されている。今回,特に狭い場所を通過する際にFOGが著明に生じていた症例に対し,歩行調節のオンライン/オフライン性という観点から病態解釈し,症状改善のためのアプローチを行った結果,FOGが著明に改善したため報告する。
【症例提示】本発表に同意を得た70歳代男性。Hoehn&Yahrの重症度分類はstageII。狭い間口を通過する際のみFOGが著明に出現しており,その傾向は肩幅の約1.5倍以下の間口幅で顕著であった。この時,間口幅に応じた体幹・骨盤の回旋運動はほとんど生じなかった。すくみ足の評価としては,開始線より前方3m先に40~100cmに設定可能な間口を通過し,4m先の到達点まで本人の快適歩行速度にて通りぬける歩行課題を実施した
【経過と考察】狭い間口を通過する際,健常者は肩幅の1.3倍以下の間口で肩を回旋する戦略を採ることが知られているが,本症例ではこのような障害物回避戦略の消失を認めた。つまり,歩行中にオンライン制御での障害物回避行動が困難になっていることが一因ではないかと病態解釈し,歩行開始前にオフライン状態で身体運動のシミュレーションを行うことが重要ではないかと考えた。そこで,歩行開始前に“間口幅に対して通過可能かどうか”を十分にシミュレーションしてから歩行を開始するとFOGが軽減することから,日常生活場面で繰り返し行うように指導した。その結果,FOGは減少し,間口を歩行する際の所要時間と歩数が著明に改善した。本症例のようなFOGに関しては,歩行調整のオンライン/オフライン性の問題という視点でのアプローチと日常生活指導の重要性が示唆された。