第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター5

神経/脊髄損傷・その他

2015年6月5日(金) 11:20 〜 12:20 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0061] 頚髄損傷後の両肩関節痛の緩和により心理的要因に変化がみられた一症例

佐藤剛介1,2, 田中陽一1,2, 大住倫弘3, 森岡周3 (1.畿央大学大学院健康科学研究科, 2.奈良県総合リハビリテーションセンターリハビリテーション科, 3.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

キーワード:頚髄損傷, 疼痛, 心理的評価

【目的】脊髄損傷後の疼痛は,車椅子使用者で肩関節に多く(Ullrich 2008),抑うつ状態や慢性疲労,健康関連QOLの低下を引き起こすことが報告されている(Craig 2013)。本研究では両肩関節痛を有する頚髄損傷者に対して疼痛緩和を図り,疼痛と心理的評価の変化を調べたので考察を加え報告する。
【症例提示】症例は,外傷により頚髄を損傷した50歳代の男性である。残存機能はC5レベル,ASIA impairment scaleはBであった。症例は6ヵ月間の入院治療を経て在宅生活を行っていたが,退院から6か月後に集中的な訓練を目的として8週間の再入院となった。疼痛は受傷時から両肩関節に認められ在宅生活中も続いていた。さらに疼痛と運動麻痺による長期間の不動によって両上肢の可動域制限が著しい状態であった。疼痛の原因は,肩関節屈曲・外転時に肩峰下でインピンジメントが生じていることが考えられた。疼痛緩和に向けた介入は,上肢可動域訓練や筋力強化,積極的な車椅子駆動訓練を行った。評価は,疼痛強度と心理的評価として気分・自己効力感・疲労・破局化・QOLを調べた。加えて,身体機能評価には上肢の関節可動域・筋力・ADL・車椅子駆動速度を測定した。評価の測定は,入院時と退院時で行った。
【経過と考察】疼痛強度の減少と共に,自己効力感・疲労・破局化・QOLの改善が得られた。気分の評価では,「緊張-不安」・「疲労」の項目でスコアの減少が認められた一方で「怒り-敵意」・「混乱」の項目で増加した。身体機能評価では,上肢可動域・筋力・ADL・車椅子駆動速度ともに改善が得られた。本症例は,疼痛強度の減少により上肢関節可動域や筋力,ADL,車椅子駆動能力が改善したことに加えて,気分や自己効力感・疲労・破局化・QOLなどの心理的評価で変化が認められた。筋骨格系疼痛を有する頚髄損傷者に対しては,疼痛緩和と運動量の増加を図ることで身体機能のみならず心理面への効果を期待できることが考えられた。