[P1-A-0064] 脊髄腫瘍切除術後髄液漏による硬膜下水腫を生じた1例
Keywords:脊髄腫瘍, 髄液漏, 頭痛
【目的】脊髄腫瘍切除術後髄液漏による頭蓋内硬膜下水腫を生じた症例の理学療法を経験した。画像も交えて報告する。
【症例提示】70代女性。歩行障害および膀胱直腸障害のため当院整形外科を受診。画像検査にて2カ所(Th3/4とTh10レベル)に硬膜内髄外腫瘍がみられたため,手術も2回にわけて行う方針となった。まずTh10レベルの腫瘍切除術施行。迅速病理結果は髄膜腫。歩行障害および膀胱直腸障害が改善し退院。独歩可。長距離ではT杖使用。約半年後,Th3/4レベルの腫瘍切除術施行。迅速病理結果は前回と同様で髄膜腫。術翌日,頭痛・嘔吐あり。補液と臥床(下肢運動は可)で経過観察。術11日後より頭痛増悪。頭部画像検査にて硬膜下水腫とmidline shiftあり。脳神経外科コンサルトし,髄液漏再手術(硬膜閉鎖)も検討されたが創部閉鎖していることと開放による低髄圧の助長を懸念し,安静・補液を継続。術25日後,頭部画像検査にて硬膜下水腫はほぼ消失。術27日後,頭痛軽減傾向,ベッドアップ(10~20°)開始。以降,低髄圧症状増悪に注意しながら徐々に離床。術36日後,端坐位。術46日後,立位。術54日後,歩行。術63日後,自立歩行にて自宅退院。
【経過と考察】脊椎手術後,髄液漏による頭蓋内出血を生じた症例の報告が散見され,低髄圧状態の遷延は頭蓋内出血の危険因子と考えられている。本症例は脊髄腫瘍切除術後髄液漏による頭蓋内硬膜下水腫を生じたが,慎重な保存的治療と動作介助により頭蓋内出血を生じることなく回復し自宅退院できた。頭痛には重篤な疾患が潜んでいることも少なくない。医師・看護師らと綿密に連携したうえで頭痛に対する的確なアセスメントが必要となる。そこでは,理学療法士にも髄液漏に併発する合併症など硬膜切開を要する手術治療に関する基礎知識が必要である。脊髄腫瘍切除術後の理学療法は,髄液漏に伴う低髄圧症状を頻回に確認しながら慎重に進める必要があると考える。
【症例提示】70代女性。歩行障害および膀胱直腸障害のため当院整形外科を受診。画像検査にて2カ所(Th3/4とTh10レベル)に硬膜内髄外腫瘍がみられたため,手術も2回にわけて行う方針となった。まずTh10レベルの腫瘍切除術施行。迅速病理結果は髄膜腫。歩行障害および膀胱直腸障害が改善し退院。独歩可。長距離ではT杖使用。約半年後,Th3/4レベルの腫瘍切除術施行。迅速病理結果は前回と同様で髄膜腫。術翌日,頭痛・嘔吐あり。補液と臥床(下肢運動は可)で経過観察。術11日後より頭痛増悪。頭部画像検査にて硬膜下水腫とmidline shiftあり。脳神経外科コンサルトし,髄液漏再手術(硬膜閉鎖)も検討されたが創部閉鎖していることと開放による低髄圧の助長を懸念し,安静・補液を継続。術25日後,頭部画像検査にて硬膜下水腫はほぼ消失。術27日後,頭痛軽減傾向,ベッドアップ(10~20°)開始。以降,低髄圧症状増悪に注意しながら徐々に離床。術36日後,端坐位。術46日後,立位。術54日後,歩行。術63日後,自立歩行にて自宅退院。
【経過と考察】脊椎手術後,髄液漏による頭蓋内出血を生じた症例の報告が散見され,低髄圧状態の遷延は頭蓋内出血の危険因子と考えられている。本症例は脊髄腫瘍切除術後髄液漏による頭蓋内硬膜下水腫を生じたが,慎重な保存的治療と動作介助により頭蓋内出血を生じることなく回復し自宅退院できた。頭痛には重篤な疾患が潜んでいることも少なくない。医師・看護師らと綿密に連携したうえで頭痛に対する的確なアセスメントが必要となる。そこでは,理学療法士にも髄液漏に併発する合併症など硬膜切開を要する手術治療に関する基礎知識が必要である。脊髄腫瘍切除術後の理学療法は,髄液漏に伴う低髄圧症状を頻回に確認しながら慎重に進める必要があると考える。