第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

症例研究 ポスター6

内部障害/循環1

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0070] 左室補助人工心臓から離脱できた周産期心筋症の理学療法経過について

江渕貴裕, 小山照幸, 金丸晶子, 太田隆, 山口真依, 牧田彩加 (東京都健康長寿医療センター)

Keywords:周産期心筋症, 左室補助人工心臓, 運動耐容能

【目的】
周産期心筋症とは,心疾患の既往がない女性が妊娠・産褥期に心不全を発症し,拡張型心筋症に類似した病態を示す心筋症である。治療は心不全に対する対症療法が主であり,急性期重症例では,IABP,PCPSが使用される。それでも心機能の回復を認めない場合には心臓補助装置を使用して心臓移植待機となる場合がある。
今回,周産期心筋症よる重症心不全に対し,体外設置型左室補助人工心臓(LVAD)が装着され,理学療法(PT)を行い社会復帰できた症例を経験したので以下に報告する。
【症例提示】
27歳女性。先天性心室中隔欠損(VSD)と左眼失明状態で誕生。生後2か月目にVSD根治術を受け,検査所見を含め問題なく経過。
出産10日前より下腿浮腫と尿蛋白を認め,鉗子分娩により出産。産後2日目より起坐呼吸,胸水貯留,全身浮腫が出現し,A病院入院。心エコー上,左室駆出率(EF)33%と低下。内服治療に反応せず,産後14日目に人工呼吸器管理となり,LVAD装着目的で当院転院。転院時EF14.4%。産後18日目に周産期心筋症による重症心不全に対しLVAD(NIPRO VAD)装着術,三尖弁閉鎖不全に対し三尖弁輪形成術が施行された。
【経過と考察】
術後4日目抜管。5日目車椅子移乗。7日目立位開始。9日目に一般病棟へ転棟し歩行開始。17日目に500m歩行,自転車エルゴメーター開始。37日目にCPX実施し,ATレベルでのVO2(ml/kg/min)は9.4。85日目にはEF45.2%,VO212.2まで回復。108日目にLVAD離脱し,翌日離床。111日目に歩行再開。121日目と136日目のVO2は順に10.7,11.7。139日目に自宅退院。
重症心不全を呈した症例に対しLVAD装着,内服治療下にてPTを実施した。有酸素運動,レジスタンストレーニングを過負荷とならず,かつ効果的に実施するため,自覚症状の他,CPXの結果を基に目標心拍数を定めて実施した。LVAD装着下でもVO2の向上を認め,LVAD離脱後は一旦低下したが再度向上し,屋外歩行1000m,ADL自立となり自宅退院となった。