第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター1

身体運動学3

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0120] とびおり動作における衝撃緩衝能と身体関節角度の関係

―三次元動作解析装置と床反力計による検討―

岩本博行1, 江口淳子1, 藤原賢吾1, 永松隆1, 中山彰一2 (1.福岡リハビリテーション専門学校理学療法学科, 2.福岡リハビリテーション専門学校)

Keywords:衝撃緩衝能, 脊柱角度, 三次元動作解析

【はじめに,目的】
Newtonによる作用反作用の法則にあるように,ヒトの身体から出力した力は必ず身体に戻り吸収される。この地球上の重力下のなかで歩行という移動動作を可能とするためには,床反力という反作用力を身体でしっかり吸収しなければならない。ヒトは脳により瞬時に運動予測をプログラムし,着地時におそってくる衝撃を計算し,各関節によって床反力を緩衝している。永田らによると身体の緩衝能が最もよく現れている運動場面はとびおり着地動作であり,着地動作時の関節角度が大きくなるほど衝撃緩衝能が高いと述べている。今まで緩衝能と下肢関節の関係についての研究はあるが,脊柱との関係性についてはなされていない。そこで今回,三次元動作解析装置と床反力計を用い,とびおり動作時の脊柱を含めた身体関節角度と床反力を計測し,その関係性について検討することを目的とした。
【方法】
対象は身体機能に問題のない健常成人男性24名,年齢は平均20.3±0.9歳,身長は平均169.1±5.3cm,体重は平均63.9±8.3kgであった。支持脚は幅跳びの際に踏切る足とし,全対象者が左であった。とびおり動作方法は,40 cm台の上に両足で立ち,両足間の幅を第1中足骨頭間10cmとし,台の端に両足足尖部がくるようにした。とびおりる際は,開眼にて上方に飛び上がらずに25cm前方にある床反力計の上に両足で着地するように指示した。測定には三次元動作解析装置(VICON社製),床反力計(AMTI社製)1枚,サンプリング周波数100Hzの赤外線カメラ6台を用いた。マーカーは直径14mmの赤外線反射マーカーをPlug-In-Gait full Body modelに準じて貼付した。得られたマーカー位置座標から演算処理ソフトVICON Body Builderを用いて各関節角度を算出した。着地動作時の脊柱,左側の股関節,膝関節,足関節の矢状面角度を算出した。床反力データは垂直成分のみを採用し,床反力を記録したコマ数をつま先接地時(以下,接地時),床反力が最大となるコマ数を最大荷重時(以下,荷重時)と定義し,接地時から荷重時までの出現時間(以下,出現時間)を計測した。荷重時の床反力データは体重で正規化(以下,体重比)した。体重比,出現時間と接地時,荷重時の各関節角度の相関と体重比と出現時間の相関をみた。統計処理にはSPSS version 17.0を用いた。統計学的解析はPearsonの相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
各項目の平均は,体重比は4.6±1.1N/kg,出現時間は0.055±0.012秒,接地時は脊柱屈曲2.5±6.4°,股関節屈曲15.7±8.2°,膝関節屈曲6.3±9.7°,足関節底屈21.8±9.0°,荷重時は脊柱屈曲4.4±6.6°,股関節屈曲19.7±9.9°,膝関節屈曲19.5±14.0°,足関節底屈9.1±15.8°であった。体重比と接地時の脊柱角度(r=0.60,p<0.01),体重比と荷重時の脊柱角度(r=0.56,p<0.01)に中等度の正の相関を認めた。また,出現時間と接地時の脊柱角度(r=-0.41,p<0.05),体重比と出現時間(r=-0.54,p<0.01)に中等度の負の相関を認めた。体重比,出現時間と接地時,荷重時の下肢関節角度との相関は認めなかった。
【考察】
今回,体重比と接地時,荷重時の脊柱角度に正の相関を認めたことより,とびおり動作時の衝撃緩衝の働きに脊柱角度が関与していることが示唆された。体重比が大きいほど接地時から予め脊柱を屈曲させ,衝撃緩衝能を高めていると考える。それは衝撃が最大となる荷重時にも脊柱をより屈曲させて衝撃を緩衝していると思われる。山本らは接地時から最大衝撃に至る時間が長いほど緩衝能に優れているとしている。本研究でも体重比と出現時間,出現時間と接地時の脊柱角度に負の相関を認めた。これは,衝撃緩衝能が優れているほど接地時に脊柱を屈曲させて緩衝する必要性がなく,脊柱弯曲のアライメントにて衝撃を緩衝したのではないかと推察する。体重比,出現時間と接地時,荷重時の下肢関節角度との相関は認めなかった事は,衝撃緩衝能は下肢関節屈曲角度ではなく,脊柱屈曲角度が関係しているのではないかと考える。今回,脊柱関節角度は三次元動作解析装置におけるSpine angleを用いており,脊柱全体の矢状面の動きとしてしか計測していない。今後は,脊柱の可動性を細かく計測し,脊柱アライメントとしての衝撃緩衝能との関係性を検討していく必要性が感じられる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究で,衝撃緩衝能における脊柱関節角度の重要性が考えられ,足底から伝播される反力吸収に脊柱が関与していると思われる。脊柱の姿勢アライメントの崩れと衝撃緩衝能の関係性が考えられる。