[P1-A-0141] 人工股関節置換術後早期における高速度トレーニングは動作能力の向上に有用である
無作為化比較対照試験による検討
キーワード:高速度トレーニング, 人工股関節置換術, 運動機能
【目的】人工股関節置換術(以下,THA)術後の理学療法では,術後の合併症を予防しながら,効率的に運動機能の向上に図ることが重要である。このため術後早期から運動機能の向上を目的としたトレーニングに取り組むことが不可欠であるが,どのようなトレーニングが最も有効であるかは未だ明らかとなっていない。近年,トレーニング時の関節運動の速度変化が下肢筋力や動作能力の改善に影響を及ぼすことが報告されている。特に,高齢者や変形性関節症を対象とした先行研究ではトレーニング時により速く関節運動を行う高速度トレーニングを実施することで動作能力の改善が得られたことが明らかとされている。しかし,THA術後患者を対象に高速度トレーニングの有用性を検討した報告は見当たらない。そこで,本研究の目的は,THA術後早期における高速度トレーニングが運動機能の向上に有用であるかどうかを検討することである。
【方法】変形性股関節症で初回THAを施行した42名を対象とし,無作為に高速度トレーニング群(13名:以下,HS群),低速度トレーニング群(14名:以下,LS群),Control群(15名)の3群に分けた。HS群とLS群のトレーニング方法は,仰臥位での股関節屈曲と外転運動,座位での膝関節伸展運動,側臥位での股関節外旋運動とし,全ての運動はセラバンドを用いた抵抗運動とした。HS群では可能な限り速い速度でバンドを伸張し,1秒保持,2秒で元のポジションに戻る設定とし,LS群では2秒でバンドを伸張した後はHS群と同様の設定とした。また,HS群とLS群のトレーニングは術後4週から開始し4週間継続して実施したが,Control群はトレーニングを行わなかった。評価時期は術後4週と術後8週とし,アウトカムの項目は術側の股関節屈曲と外転の関節可動域,術側の股関節外転筋力と膝関節伸展筋力,Timed up and go(以下,TUG)test,5回立ち座りテスト,階段昇降テストとし,全ての項目で変化率([介入後-介入前]/介入前×100%)を算出した。統計は,介入前の各測定項目および介入前後での変化率の群間比較には一元配置分散分析,フリードマン検定,多重比較法,介入前後の各測定項目の比較には対応のあるt検定を用い,統計学的有意基準は5%未満とした。
【結果】基本属性(年齢,BMI,介入前の運動機能)は,群間内で有意差を認めなかった。股関節外転筋については,HS群(介入前0.67±0.25Nm/kg,介入後0.94±0.21Nm/kg)とLS群(介入前0.66±0.25Nm/kg,介入後0.80±0.19Nm/kg)は介入後に有意に向上したが,Control群(介入前0.58±0.19Nm/kg,介入後0.65±0.26 Nm/kg)では介入前後で有意差を認めなかった。股関節屈曲と外転の関節可動域,膝関節伸展筋力,TUG-test,5回立ち座りテストに関しては,全ての群で介入後に有意に改善を示した。また,TUG-testの変化率は,HS群21.8%,LS群15.9%,Control群13.5%であり,HS群が他の2群よりも有意に高い値を示した。立ち上がりテストの変化率は,HS群19.8%,LS群16.7%,Control群8.4%であり,Control群が他の2群よりも有意に低い変化率を示した。階段昇降テストについては,HS群(介入前9.87±3.92秒,介入後6.39±1.96秒)は介入後に有意な改善を認めたが,LS群(介入前9.30±3.81秒,介入後8.19±5.47秒)とControl群(介入前8.68±2.94秒,介入後8.01±3.43秒)は,介入前後で有意差を認めなかった。
【考察】本研究の結果,高速度トレーニングにより術後早期における股関節外転筋力の向上とともに歩行や階段昇降能力といった動作速度が改善することが示された。これらの結果は高齢者や変形性関節症を対象とした先行研究と一致している。高速度トレーニングでは単位時間当たりに発揮できる筋肉の仕事量が増加することで速い動作が可能となり,その結果として術後早期における歩行や階段昇降能力の向上が得られたと考えられた。今後の課題として,THA術後早期の筋力および動作能力の向上が術後長期的な回復過程にどのように影響を及ぼすのかを検討していく必要があると思われる。
【理学療法研究としての意義】本研究の結果は,THA術後早期における動作能力の向上のための有用なトレーニング方法となることを示唆しており,理学療法研究として意義があると考えられる。
【方法】変形性股関節症で初回THAを施行した42名を対象とし,無作為に高速度トレーニング群(13名:以下,HS群),低速度トレーニング群(14名:以下,LS群),Control群(15名)の3群に分けた。HS群とLS群のトレーニング方法は,仰臥位での股関節屈曲と外転運動,座位での膝関節伸展運動,側臥位での股関節外旋運動とし,全ての運動はセラバンドを用いた抵抗運動とした。HS群では可能な限り速い速度でバンドを伸張し,1秒保持,2秒で元のポジションに戻る設定とし,LS群では2秒でバンドを伸張した後はHS群と同様の設定とした。また,HS群とLS群のトレーニングは術後4週から開始し4週間継続して実施したが,Control群はトレーニングを行わなかった。評価時期は術後4週と術後8週とし,アウトカムの項目は術側の股関節屈曲と外転の関節可動域,術側の股関節外転筋力と膝関節伸展筋力,Timed up and go(以下,TUG)test,5回立ち座りテスト,階段昇降テストとし,全ての項目で変化率([介入後-介入前]/介入前×100%)を算出した。統計は,介入前の各測定項目および介入前後での変化率の群間比較には一元配置分散分析,フリードマン検定,多重比較法,介入前後の各測定項目の比較には対応のあるt検定を用い,統計学的有意基準は5%未満とした。
【結果】基本属性(年齢,BMI,介入前の運動機能)は,群間内で有意差を認めなかった。股関節外転筋については,HS群(介入前0.67±0.25Nm/kg,介入後0.94±0.21Nm/kg)とLS群(介入前0.66±0.25Nm/kg,介入後0.80±0.19Nm/kg)は介入後に有意に向上したが,Control群(介入前0.58±0.19Nm/kg,介入後0.65±0.26 Nm/kg)では介入前後で有意差を認めなかった。股関節屈曲と外転の関節可動域,膝関節伸展筋力,TUG-test,5回立ち座りテストに関しては,全ての群で介入後に有意に改善を示した。また,TUG-testの変化率は,HS群21.8%,LS群15.9%,Control群13.5%であり,HS群が他の2群よりも有意に高い値を示した。立ち上がりテストの変化率は,HS群19.8%,LS群16.7%,Control群8.4%であり,Control群が他の2群よりも有意に低い変化率を示した。階段昇降テストについては,HS群(介入前9.87±3.92秒,介入後6.39±1.96秒)は介入後に有意な改善を認めたが,LS群(介入前9.30±3.81秒,介入後8.19±5.47秒)とControl群(介入前8.68±2.94秒,介入後8.01±3.43秒)は,介入前後で有意差を認めなかった。
【考察】本研究の結果,高速度トレーニングにより術後早期における股関節外転筋力の向上とともに歩行や階段昇降能力といった動作速度が改善することが示された。これらの結果は高齢者や変形性関節症を対象とした先行研究と一致している。高速度トレーニングでは単位時間当たりに発揮できる筋肉の仕事量が増加することで速い動作が可能となり,その結果として術後早期における歩行や階段昇降能力の向上が得られたと考えられた。今後の課題として,THA術後早期の筋力および動作能力の向上が術後長期的な回復過程にどのように影響を及ぼすのかを検討していく必要があると思われる。
【理学療法研究としての意義】本研究の結果は,THA術後早期における動作能力の向上のための有用なトレーニング方法となることを示唆しており,理学療法研究として意義があると考えられる。