[P1-A-0151] 負荷条件の違いが筋活動に与える影響について
主動筋,拮抗筋,遠位筋の筋活動分析
Keywords:負荷方法, 上肢筋, 筋電図
【目的】日常生活における動作は複雑であり,高度な運動制御能力に基づいた正確性が求められる。理学療法領域でも,部分荷重やバランス練習時に筋出力調整能力が求められ,上肢課題における先行研究も散見される。調整能力とは,主観的基準を客観的基準に合わせていく過程であり,その基準を他者が決定する場合に比べ,自己でフィードバックの量やタイミングを決定する方が高い運動学習効果が得られるなど,設定条件が遂行能力に影響を与える。そこで今回,上肢4筋を被験筋とし,最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction;MVC)の10%~70%の4種類の負荷量,および筋出力調節を自己で行う場合と他者が行う場合の2つの負荷方法を設定し,これら負荷条件が筋活動に与える影響を検討した。
【方法】健常女性16名(年齢20.4±0.6歳,身長159.6±3.8cm,体重52.3±5.0kg)の利き手側上肢を対象とし,肘関節90度屈曲位におけるMVCの10%,30%,50%,70%の負荷量,および被験者自身が徒手筋力計の表示画面を見ながら負荷量を調節する「自己調節」と検者が負荷量を調節する「他者調節」の2種類の負荷方法を設定した。被験筋を上腕二頭筋,上腕三頭筋,尺側手根屈筋,橈側手根伸筋として筋電図学的分析を行った。表面筋電図計はNoraxon社製TeleMyoG2を用い,サンプリング周波数を1,000Hzに設定した。筋電信号の導出には,Noraxson社製解析ソフトを用い,帯域通過フィルターを20-500Hzに設定した。導出された筋電信号は,全波整流処理を行った後,最大随意収縮力発揮時の3秒間において,前後1秒の2秒間を除いた中間1秒間の積分筋電値を求め,MVC時の値で正規化(%IEMG)した。統計処理は,負荷方法と負荷量を2要因とし,%IEMGを従属変数とした二元配置分散分析を行った。なお,負荷量で主効果が有意であった際に多重比較検定を行った。統計学的有意水準を5%とした。
【結果】負荷量と負荷方法を2要因,%IEMGを従属変数とした二元配置分散分析の結果,上腕二頭筋〔負荷量F(3,120)=120.6,p<0.01,負荷方法F(1,120)=15.1,p<0.01〕,尺側手根屈筋〔負荷量F(3,120)=56.5,p<0.01,負荷方法F(1,120)=4.3,p<0.05〕,橈側手根伸筋〔負荷量F(3,120)=69.5,p<0.01,負荷方法F(1,120)=4.7,p<0.05〕において有意な主効果を認めた。上腕三頭筋は負荷量に有意な主効果〔負荷量F(3,120)=38.6,p<0.01〕を認めたものの,負荷方法では認められなかった。多重比較検定の結果,全ての被験筋において,4種類の負荷量間で有意差(p<0.01)を認め,負荷量が多いほど%IEMGも高かった。負荷方法では上腕二頭筋(p<0.01),尺側手根屈筋および橈側手根伸筋(p<0.05)に有意差を認め,「自己調節」よりも「他者調節」の%IEMGの方が高い値を示した。
【考察】上腕二頭筋において「自己調節」よりも「他者調節」の筋活動が有意に高かった要因として,「自己調節」は視覚的フィードバック制御の要素が強いため,この視覚的フィードバック制御による時間の遅れが運動制御速度を低下させて筋出力調整の正確性が高まると考えられる。その他,上腕二頭筋の筋粘性・弾性といった拮抗する力,一定の肢位を保つ際に誘発される長潜時反射による運動単位数の動員などの影響が考えられる。上腕三頭筋は負荷量で有意な主効果を認めたが,負荷方法では認められなかった。これは,上腕二頭筋の筋活動の増加に伴うGIa線維の興奮による上腕三頭筋への相反抑制の影響,低い負荷量では主動筋による制御であるが50%MVC以上では拮抗筋の活動が高まるという負荷量と拮抗筋の特性の影響が推察される。
【理学療法学研究としての意義】主動筋と遠位筋の被験筋において「自己調節」よりも「他者調節」の%IEMGが有意に高く,筋活動の効率性を考えた場合は「自己調節」,筋力増強を目的とした場合には「他者調節」の方が主動筋と遠位筋の筋活動が効果的であることが示唆され,臨床的に意義がある。
【方法】健常女性16名(年齢20.4±0.6歳,身長159.6±3.8cm,体重52.3±5.0kg)の利き手側上肢を対象とし,肘関節90度屈曲位におけるMVCの10%,30%,50%,70%の負荷量,および被験者自身が徒手筋力計の表示画面を見ながら負荷量を調節する「自己調節」と検者が負荷量を調節する「他者調節」の2種類の負荷方法を設定した。被験筋を上腕二頭筋,上腕三頭筋,尺側手根屈筋,橈側手根伸筋として筋電図学的分析を行った。表面筋電図計はNoraxon社製TeleMyoG2を用い,サンプリング周波数を1,000Hzに設定した。筋電信号の導出には,Noraxson社製解析ソフトを用い,帯域通過フィルターを20-500Hzに設定した。導出された筋電信号は,全波整流処理を行った後,最大随意収縮力発揮時の3秒間において,前後1秒の2秒間を除いた中間1秒間の積分筋電値を求め,MVC時の値で正規化(%IEMG)した。統計処理は,負荷方法と負荷量を2要因とし,%IEMGを従属変数とした二元配置分散分析を行った。なお,負荷量で主効果が有意であった際に多重比較検定を行った。統計学的有意水準を5%とした。
【結果】負荷量と負荷方法を2要因,%IEMGを従属変数とした二元配置分散分析の結果,上腕二頭筋〔負荷量F(3,120)=120.6,p<0.01,負荷方法F(1,120)=15.1,p<0.01〕,尺側手根屈筋〔負荷量F(3,120)=56.5,p<0.01,負荷方法F(1,120)=4.3,p<0.05〕,橈側手根伸筋〔負荷量F(3,120)=69.5,p<0.01,負荷方法F(1,120)=4.7,p<0.05〕において有意な主効果を認めた。上腕三頭筋は負荷量に有意な主効果〔負荷量F(3,120)=38.6,p<0.01〕を認めたものの,負荷方法では認められなかった。多重比較検定の結果,全ての被験筋において,4種類の負荷量間で有意差(p<0.01)を認め,負荷量が多いほど%IEMGも高かった。負荷方法では上腕二頭筋(p<0.01),尺側手根屈筋および橈側手根伸筋(p<0.05)に有意差を認め,「自己調節」よりも「他者調節」の%IEMGの方が高い値を示した。
【考察】上腕二頭筋において「自己調節」よりも「他者調節」の筋活動が有意に高かった要因として,「自己調節」は視覚的フィードバック制御の要素が強いため,この視覚的フィードバック制御による時間の遅れが運動制御速度を低下させて筋出力調整の正確性が高まると考えられる。その他,上腕二頭筋の筋粘性・弾性といった拮抗する力,一定の肢位を保つ際に誘発される長潜時反射による運動単位数の動員などの影響が考えられる。上腕三頭筋は負荷量で有意な主効果を認めたが,負荷方法では認められなかった。これは,上腕二頭筋の筋活動の増加に伴うGIa線維の興奮による上腕三頭筋への相反抑制の影響,低い負荷量では主動筋による制御であるが50%MVC以上では拮抗筋の活動が高まるという負荷量と拮抗筋の特性の影響が推察される。
【理学療法学研究としての意義】主動筋と遠位筋の被験筋において「自己調節」よりも「他者調節」の%IEMGが有意に高く,筋活動の効率性を考えた場合は「自己調節」,筋力増強を目的とした場合には「他者調節」の方が主動筋と遠位筋の筋活動が効果的であることが示唆され,臨床的に意義がある。